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07 普通の犬だと言い張ると補佐が色々面倒な話

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 侍従トランは、侍従筆頭をて、長らく空席だった宰相補佐になった。

 宰相と行動を共にするようになったトランは、宰相の愛されっぷりに度々たびたび当てられ、人知れず一人机をバンバンたたきたくなる日々を送ることになる。

 例えば、視察先で四頭の耳がぴこぴこしているのが遠目に見えた時とか。

 逗留とうりゅう先の宿に突然シロたちが現れて、宿の主人を驚かせ失神させた時とか。

 普通の犬と伺っておりましたが? とにらむ宿の女将おかみに、「普通の犬ですし、毛は落ちませんし、泥も持ち込みませんから、ご迷惑はおかけしませんから」と普通の犬ではあり得ない特徴を説明をして、改めて番犬の同伴許可を得なけれはならなかった時とか。
 
 精霊だと説明する方が余程通りが良いのに、宰相が犬だと言い張るお陰で、面倒なことになる。

 ちなみにその面倒な説明を女将にしたのはトランで、その間、宰相はひたすら四頭をわしゃわしゃして現実逃避していた。
 大人しくて人に馴れているのを女将に見せていたのだ、と後で宰相には言われたが、信用できたものでない。


 さて、視察に出れば、宰相は健康管理と不測の事態に備えて隙あらば仮眠をとる。そんな時はシロたちがどこからともなくやって来て、四頭並んで座ってハタハタと尻尾を揺らす。

「君たち護衛に来てるんだよね?」

 一度トランが、シロたち四頭に聞いたことがある。するとビャクを除く三頭は、揃って首を傾げた。

「遊びに来たの?」

 トランが質問を変えると、シロが、わふっと小さくお返事をしてくれる。

 宰相を起こさないよう気遣える賢いシロだが、使役者が認めた相手には素直で正直な精霊である。

 そんなシロをビャクが尻尾ではたいている。余計なことを言うな、と言っているようにも見える。ハクとユキは宰相の方を見て宰相が起きるのを今か今かと待っている。

 トランの予想するところ、宰相が仮眠を取っている=宰相には今ちょっと暇がある=起きたら構ってもらえるかも! という期待が彼らにはあるようだ。

 これがシロたちのことだけなら微笑ましく見ていられるのだが、おそらく夫人の心情も影響しているのだと思うと……、もうトランは机に突っ伏してバンバン机を叩きたくて仕方がなくなるのである。

 夫人、ご夫君が視察に出て三日でシロたちが会いに来るって、ただ会いに来るって、どういうことでしょうかー⁉︎


 変わらず侍従として飛び回るザイは、異国から帰ってくるたびトランに捕まり、本当に君のご両親は……! と愚痴ぐちを聞かされる。

 それはまだ、帝国が明るかった頃のおはなし。
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