11 / 14
11 本当にどうでもいいんだ
しおりを挟む
じっと見る私を元フィオリーナ嬢が嗤う。
「そう、アンタその目、なんかむかつくと思ったら佐藤花だわ」
佐藤花を知ってる? 私は全身の毛が怖気たった。
「あたしの前の前世はねえ、木下美紅羅。佐藤さんにネットに晒されたのよ。覚えてるわよねー?」
サーリセ様があちゃあと言う顔をしてる。向こうの神様雑すぎ、そんなつぶやきが聞こえてきたけど、私はそれどころでない。
木下美紅羅、と言う名前を聞いて、私は吐きそうになる。忘れもしない、私に謝りにも来た一人だ。中学校ニ年生で初めてクラスが一緒になって最初は普通だったのに、冬休みをすぎてから急にいじめてきた子だ。
「なんか佐藤鼻のくせに生意気ウザいとか流れてきたから、へーってたった一言送っただけなのにさ、それネットで流されて親呼び出し。イジメだとか言われてアホくさ」
「それだけじゃなかったでしょ! あの子たちと一緒に私を嗤ってた!」
そこだけは譲れない。ネットに流したのは、拡散したのはともかく、私が流したのはたしかにいじめてきた子だけ。
「は? あんなのイジリじゃん」
「あれのどこがイジリよ!」
「イジリでしょ? 空気読めよ。イジリじゃなきゃ嫌なら嫌って言えば良かっただけ」
「言えるわけないでしょ⁉︎ 小学校の時言っても言っても何にも変わらなかった!」
言ったらもっと酷くなる。ノリが悪い奴と言われもっと酷くいじめられる。ずっとそうだった。
そうして私が泣き叫んでいると先生がやってきて割って入ってきて「ごめんなさいしたからもういいでしょ?」と言われるのは本当に嫌だった。そんなので言えるわけない。
「は? 小学校の時の話なんか知らないし。
あの子達って小学校のってアレでしょ、第二小のバカ男子とブス女たちでしょ? 一緒にすんなよ。
あー、相手がそう思えばイジメとかいうやつ? 勘弁してよ、そんなのその時どうやってわかるワケ? 後から言われたってどうしようもないんですけどー? さっさと言えよって感じ」
木下美紅羅が、口を尖らせて嫌そうに言う。
気持ち悪い。
その言い方も考え方も開き直り方も。
いじめだと思ってなかった?
笑える。そんなのは嘘。
たしかに初めは軽い気持ちだったかもしれない。つい、だったかもしれない。
それでも、本当にずっとただ一人も気付かなかったなんて絶対に嘘。
いじめだと指摘されて、それでも気付かなかったなんて、今考えてもあれはいじめじゃないなんて、保身以外に何があるの?
私は胃液がせり上がってくるのを感じた。
どうしたって私の気持ちは誰にもわかってもらえない。私は成人もしたのに、心はどこか、あの中学生の頃のまま。
中学生だった私はどうすれば良かったの? あのまま大人しくいじめられてればよかったの? そうしたらお母さんもお父さんも死なずに済んだの?
──進学なんていい機会。いじめっ子のいない県外の高校でも行って自分のための勉強力一杯やって将来幸せになってそいつら見返してやればいい。
そんなメッセージも見たけれど、当時の私はそんなの無理としか思えなかった。
大人になった今ならそれも有りかもと思えるけど、当時の私は中学卒業と同時に家を出るなんて考えたこともなかったし、それほどいい成績でもなかった私にできるとは思えなかった。
それにネットで誰が誰と繋がってるかも、わからない。どこへ行っても佐藤花は、いじめられ続けるだろう。
だからいじめっ子たちを晒した。
「お陰であたしの推薦パア。でも一般でいける成績あったから余裕とか思ってたのに、私立、何でか全滅だし。ショックで公立失敗して、結局バカ高行きよ。
パパとママは離婚するし、パパが浮気してたのなんてずっと前からなのに、あたしがイジメしたせいにされるし。冤罪もいいとこ。
ま、もうどうでもいいけどね」
どうでもよくなんかない。私の気持ちは
「そうだわ、断罪即死刑でお願いするわ。そうすれば私は転生するのが早くなって助かりますし。存分に自分で自分の功績ぶち壊しなさいな。
でぇ、あとはフィオはハッピーエンド。あたしに感謝してよね」
もう私の心はぐちゃぐちゃだ。結局、いじめやるやつなんて、私のことなんかどうでもいいんだ。本当にどうでもいいんだ。
悔しくて悔しくて、私は木下美紅羅に掴みかかった。
「そう、アンタその目、なんかむかつくと思ったら佐藤花だわ」
佐藤花を知ってる? 私は全身の毛が怖気たった。
「あたしの前の前世はねえ、木下美紅羅。佐藤さんにネットに晒されたのよ。覚えてるわよねー?」
サーリセ様があちゃあと言う顔をしてる。向こうの神様雑すぎ、そんなつぶやきが聞こえてきたけど、私はそれどころでない。
木下美紅羅、と言う名前を聞いて、私は吐きそうになる。忘れもしない、私に謝りにも来た一人だ。中学校ニ年生で初めてクラスが一緒になって最初は普通だったのに、冬休みをすぎてから急にいじめてきた子だ。
「なんか佐藤鼻のくせに生意気ウザいとか流れてきたから、へーってたった一言送っただけなのにさ、それネットで流されて親呼び出し。イジメだとか言われてアホくさ」
「それだけじゃなかったでしょ! あの子たちと一緒に私を嗤ってた!」
そこだけは譲れない。ネットに流したのは、拡散したのはともかく、私が流したのはたしかにいじめてきた子だけ。
「は? あんなのイジリじゃん」
「あれのどこがイジリよ!」
「イジリでしょ? 空気読めよ。イジリじゃなきゃ嫌なら嫌って言えば良かっただけ」
「言えるわけないでしょ⁉︎ 小学校の時言っても言っても何にも変わらなかった!」
言ったらもっと酷くなる。ノリが悪い奴と言われもっと酷くいじめられる。ずっとそうだった。
そうして私が泣き叫んでいると先生がやってきて割って入ってきて「ごめんなさいしたからもういいでしょ?」と言われるのは本当に嫌だった。そんなので言えるわけない。
「は? 小学校の時の話なんか知らないし。
あの子達って小学校のってアレでしょ、第二小のバカ男子とブス女たちでしょ? 一緒にすんなよ。
あー、相手がそう思えばイジメとかいうやつ? 勘弁してよ、そんなのその時どうやってわかるワケ? 後から言われたってどうしようもないんですけどー? さっさと言えよって感じ」
木下美紅羅が、口を尖らせて嫌そうに言う。
気持ち悪い。
その言い方も考え方も開き直り方も。
いじめだと思ってなかった?
笑える。そんなのは嘘。
たしかに初めは軽い気持ちだったかもしれない。つい、だったかもしれない。
それでも、本当にずっとただ一人も気付かなかったなんて絶対に嘘。
いじめだと指摘されて、それでも気付かなかったなんて、今考えてもあれはいじめじゃないなんて、保身以外に何があるの?
私は胃液がせり上がってくるのを感じた。
どうしたって私の気持ちは誰にもわかってもらえない。私は成人もしたのに、心はどこか、あの中学生の頃のまま。
中学生だった私はどうすれば良かったの? あのまま大人しくいじめられてればよかったの? そうしたらお母さんもお父さんも死なずに済んだの?
──進学なんていい機会。いじめっ子のいない県外の高校でも行って自分のための勉強力一杯やって将来幸せになってそいつら見返してやればいい。
そんなメッセージも見たけれど、当時の私はそんなの無理としか思えなかった。
大人になった今ならそれも有りかもと思えるけど、当時の私は中学卒業と同時に家を出るなんて考えたこともなかったし、それほどいい成績でもなかった私にできるとは思えなかった。
それにネットで誰が誰と繋がってるかも、わからない。どこへ行っても佐藤花は、いじめられ続けるだろう。
だからいじめっ子たちを晒した。
「お陰であたしの推薦パア。でも一般でいける成績あったから余裕とか思ってたのに、私立、何でか全滅だし。ショックで公立失敗して、結局バカ高行きよ。
パパとママは離婚するし、パパが浮気してたのなんてずっと前からなのに、あたしがイジメしたせいにされるし。冤罪もいいとこ。
ま、もうどうでもいいけどね」
どうでもよくなんかない。私の気持ちは
「そうだわ、断罪即死刑でお願いするわ。そうすれば私は転生するのが早くなって助かりますし。存分に自分で自分の功績ぶち壊しなさいな。
でぇ、あとはフィオはハッピーエンド。あたしに感謝してよね」
もう私の心はぐちゃぐちゃだ。結局、いじめやるやつなんて、私のことなんかどうでもいいんだ。本当にどうでもいいんだ。
悔しくて悔しくて、私は木下美紅羅に掴みかかった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。
あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!?
ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど
ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。
※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
鬱展開乙女ゲームの悪役令嬢に転生したので推し全員幸せにする!
かのほ
恋愛
乙女ゲーム『アイノクサリ』
それは、悲しくも美しい物語だった。
嫉妬深く狂おしいほどの愛を注いでくる、悪役令嬢の婚約者ジャルー。
ジャルーの狂った愛に疲弊し、ヒロインの相手(攻略対象達)を奪おうとする悪役令嬢アイリス。
そのことに嫉妬したジャルーは、アイリスに関わる全ての者を陥れようとする。
そんな中、ヒロインは攻略対象との愛を深めながら、必死に奮闘。
そして、物語はハッピーエンドとバッドエンドに分岐する。
私はこの乙女ゲームが大好きだ。
世界観、キャラ、ストーリー、全てが最高で。
だけど、どのキャラのルートのエンドも悲惨な運命…。ハッピーエンドのルートですら、どこか悲しい。
じゃあもしアイリスが、諸悪の根源であるジャルーを、ジャルーの気持ちと同等かそれ以上に愛していたら…?
悪役令嬢アイリスとして転生し、乙ゲーヲタクでジャルー最推しだった記憶を取り戻した私は、覚悟を決める。
大好きな世界観、キャラ、ストーリー。
その全てを壊してでも、推し全員、幸せにする!!!
変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
変態王子&モブ令嬢 番外編
咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と
「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の
番外編集です。
本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。
「小説家になろう」でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる