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09 この世界のこと

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「はあ⁉︎ だってここランドルフ王国でしょ⁉︎」

「はい。確かにランドルフ王国ですが、あなたのいう『ゲームの世界』じゃありません。現実です」

 元フィオリーナ嬢も私も、どゆこと?  ってなってる。

「じゃあ、あのゲーム、何なのよ! まさか偶然なんて言わないわよね⁉︎」

「ん、まあ、偶然と言えば偶然ですね。数あるゲームのなかで、新ラーニアさんの前世のあなたがそれをやり込んでいたというのは偶然と言って良いんじゃないでしょうか?」

 確かに。ゲームなんて星の数ほどある。でも、それにしては、この世界に似過ぎじゃないか?

「『ランドルフ物語』は、ここの世界から地球に転生した人が作ったゲームのようですね。この世界が『元ネタ』と言えるかと」

「『元ネタ』ぁ⁉︎ パクリってコトォ⁉︎」

「まあまあ待ってください。今、向こうの神様とお話中なんです、よ、……と。

 あ、わかりました。なるほどー。貴方は相変わらず。自動化とかシステム変更するならテスト十分にしてから……、適当ですねー」

 サーリセ様によると向こうの神様の話はこうだった。

 ゲームの作者はこの世界で亡くなったとある子爵令嬢。
 地球の神様によって日本に転生したんだけれど、その時、地球の神様は前世の記憶を封じた上で、新しい記憶を上書きする処理をしてしまったらしい(システム変更に伴う設定ミス。現在修正済み)。
 日本に転生したその人には時々前世の記憶が顔を出すようになってしまっていたが、その人はそれを前世の記憶と取らず、創作のインスピレーション、創作の神降臨! と認識していたようである、とのこと。

「そ、その子爵令嬢ってもしや……」

 まさか、と思いながら、私はサーリセ様に確認する。

「はい、ラーニアさんが学園入学後、最初にいじめたご令嬢ですね」
「いやあああ、ごめんなさいぃぃっ」

 時間軸とかはあってないようなものですから気にしないでくださいねーと言うアバウトな万能神の横で、私はまたまた土下座態勢だ。

「誰に向かってやってんのその土下座。てかアンタの土下座っす!」

という元フィオリーナ嬢には、私は何にも言えない。

「その子爵令嬢の死因は夏休み帰省中、崖崩れに巻き込まれての事故死ですから、ラーニアさんのイジメとは無関係ですけど。うーん、無意識にラーニア嬢を悪役にするあたり、余程恨んでたんでしょうか」

「うわぁぁぁ……。そ、それでその方今は?」

「え? さあ、あ、向こうの神様によりますと、平民ですがまあ普通に幸せにお暮らしだそうですよ。ただ上書き処理に設定してるんで、もう転生することはないようですけど」

で、でもせめて幸せなら良かった。私が涙する横で元フィオリーナが嫌な声で笑う。

「一回上書きになっただけでぇ? 魂っわ!」

 思ったこと全部口にしないでもいいのに。

 私はそう思って元フィオリーナ嬢をにらみそうになって、あわてて顔を伏せた。

 その子爵令嬢をいじめていた自分が何言ってんの? って感じだし。

 私がまた一人落ち込んでいる間にも元フィオリーナ嬢は罵倒を続けている。それをサーリセ様がハイハイ静かにねーと宥めてる。

「普通はそうですよ。あなたの魂がぶっといだけです新ラーニアさん」

 サーリセ様がため息混じりに仕切りなおす。

「まあまあ、そんなわけでこの世界はゲームではなくて現実です。といっても元フィオリーナ嬢の頑張りで学園はゲームと同じような状況になっておりますねえ」

「ね、頑張ったっしょ私! だから入れ替えんなよ駄神」

 そうして振り出しに戻る。

 サーリセ様にギャンギャン噛み付く元フィオリーナ嬢の話で、ラーニアが知らなかった学園の状況がわかってきた。

 聞けば聞くほど……、

 ため息をついた私は、部屋の隅でひっそりと体育座りをしたのだった。
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