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いつまで、中学生の頃のいじめを引きづっているんだろう。真っ暗で散らかった部屋のベッドの上で、僕は引きこもり生活を送っている自分への嫌悪を抱きながら横になっていた。
──何回目の自己嫌悪だろうかそしてどうせ何も変わらない。
僕はそんな諦めをしてベッドから起き上がる。午前七時だった。部屋の扉を恐る恐る開くと朝食が置いてあった。僕は朝食のおぼんを手に取り部屋のドアを閉める。
僕、日野明は中学の頃にあったいじめが原因で通信制高校の一年になる今でも自室に引きこもる生活をしている。両親とはもうしばらく話していないし、たまに鉢合わせても、お互い気まずく無視をする。
僕は朝食を食べながら、パソコンを付けてアニメを見る。よく見るアニメは青春系のアニメだ。きらびやかな青春を見て傷をえぐる。
「うう・・・・」
いつもは泣くほどではないけど、今日は自己嫌悪したせいか、泣いてしまう。こんな自傷行為もなにも意味なんてないけれど、暗い感情でも動いているのを感じると、少しだけ生きた心地がするからやめられない。
泣きながら朝食を食べて、気晴らしにゲームの情報収集をする。すると新作ゲームの情報を見つけた。
「ユニオンオンライン、面白そうだなグラも良い感じだし」
僕は久しぶりにワクワク感を覚えた。さっそく公式サイトに行きダウンロードする。
ダウンロードを待っていると、修也というネッ友からメッセージが送られてきた。
「明、新作ゲーム見たか?」
「ああ、今ダウンロード中」
「やっぱりか、俺もすぐやりたいんだけど学校あるしな、あんまり先行かないでくれよ」
学校がある。その文面にちくりと心が痛むのを感じながら返信する。
「分かったよ、一緒にやれる時間になったらやろうな」
「おう、そんじゃ」
メッセージのやり取りが終わる頃に、ダウンロードは完了していた。僕はプレイのボタンをクリックしてゲームを起動する。
アキラというプレイヤーネームで職業は魔法使いにした。最初の街に降り立った時、あまりの人の居なさにびっくりしたけど、リリース当初だし、平日の昼間なんてこんなもんだろうと思い直した。
街から出て一面草木の生えた広い平原に出る。アニメ調の綺麗なグラフィックに圧倒されながら、これからどうしようかとクエスト欄を開くとゴブリンキングの討伐というクエストが目に入る。
「他は採取系かとにかく戦いたいし、これ行っとくか」
そして僕は初期の杖を片手にモンスターがいる洞窟に向かって歩きだした。道中のスライムみたいなモンスターを倒しながら向かっていると、洞窟につく頃にはレベルが三くらいになった。普段こういうRPGゲームをやらない僕でも不安になるくらい低レベルだけど、初期ボスなんて頑張ればこれくらいで倒せるだろうと高をくくって洞窟に入る。
至る所にクリスタルが刺ささっている洞窟は一本道で、道中に敵はいなかった。しばらく歩いて進むと少し大きな扉の前に宝箱とワープポイントが用意されていた。
僕は宝箱の中の回復薬を入手して、扉を開け中に入る。目の前には筋骨隆々とした体に片手に大きな棍棒を持ったゴブリンキングが居る。
戦いはゴブリンキングの叫びで始まった。このゲームはアクションゲームのようにキャラクターを自由に動かして移動や回避が出来る。僕は振りかかる棍棒を避けながら、振り終わりの隙をつくためにバックステップで瞬時に一定の距離を取り魔法の詠唱を始める。
しかしここで想定外のことが二つ起こる。振り終わりの隙が出来る時間が思ったより短く、自分の魔法の詠唱スピードが遅いことだ。これによって、振りかかる棍棒を避けることも出来ずにゲームオーバーになってしまった。
その後もレベルを少し上げて何回か挑んでみたけど、どうしても魔法の詠唱中にやられてしまう。
「レベルもあるだろうけど、この職パーティー推奨では」
そんなことに気付き始めて、修也が来るまでログアウトしようかと考えていた時だった。
「あの、始めたばかりの方ですよね?」
背後から女性のプレイヤーが話しかけてきた。
「あ、はい」
「なにか攻略に詰まってるんですか?」
僕は洞窟にいるゴブリンキングが倒せないことを伝えた。すると、彼女はハッとした様子を見せて言った。
「私もそこで詰まってたんです、一人だと火力が足りなくて、このゲームパーティー推奨みたいなんですよね」
「僕も同じこと思い始めてました。良かったらパーティー組みませんか」
「是非よろしくお願いします!」
これが彼女とのファーストコンタクトだった。
──何回目の自己嫌悪だろうかそしてどうせ何も変わらない。
僕はそんな諦めをしてベッドから起き上がる。午前七時だった。部屋の扉を恐る恐る開くと朝食が置いてあった。僕は朝食のおぼんを手に取り部屋のドアを閉める。
僕、日野明は中学の頃にあったいじめが原因で通信制高校の一年になる今でも自室に引きこもる生活をしている。両親とはもうしばらく話していないし、たまに鉢合わせても、お互い気まずく無視をする。
僕は朝食を食べながら、パソコンを付けてアニメを見る。よく見るアニメは青春系のアニメだ。きらびやかな青春を見て傷をえぐる。
「うう・・・・」
いつもは泣くほどではないけど、今日は自己嫌悪したせいか、泣いてしまう。こんな自傷行為もなにも意味なんてないけれど、暗い感情でも動いているのを感じると、少しだけ生きた心地がするからやめられない。
泣きながら朝食を食べて、気晴らしにゲームの情報収集をする。すると新作ゲームの情報を見つけた。
「ユニオンオンライン、面白そうだなグラも良い感じだし」
僕は久しぶりにワクワク感を覚えた。さっそく公式サイトに行きダウンロードする。
ダウンロードを待っていると、修也というネッ友からメッセージが送られてきた。
「明、新作ゲーム見たか?」
「ああ、今ダウンロード中」
「やっぱりか、俺もすぐやりたいんだけど学校あるしな、あんまり先行かないでくれよ」
学校がある。その文面にちくりと心が痛むのを感じながら返信する。
「分かったよ、一緒にやれる時間になったらやろうな」
「おう、そんじゃ」
メッセージのやり取りが終わる頃に、ダウンロードは完了していた。僕はプレイのボタンをクリックしてゲームを起動する。
アキラというプレイヤーネームで職業は魔法使いにした。最初の街に降り立った時、あまりの人の居なさにびっくりしたけど、リリース当初だし、平日の昼間なんてこんなもんだろうと思い直した。
街から出て一面草木の生えた広い平原に出る。アニメ調の綺麗なグラフィックに圧倒されながら、これからどうしようかとクエスト欄を開くとゴブリンキングの討伐というクエストが目に入る。
「他は採取系かとにかく戦いたいし、これ行っとくか」
そして僕は初期の杖を片手にモンスターがいる洞窟に向かって歩きだした。道中のスライムみたいなモンスターを倒しながら向かっていると、洞窟につく頃にはレベルが三くらいになった。普段こういうRPGゲームをやらない僕でも不安になるくらい低レベルだけど、初期ボスなんて頑張ればこれくらいで倒せるだろうと高をくくって洞窟に入る。
至る所にクリスタルが刺ささっている洞窟は一本道で、道中に敵はいなかった。しばらく歩いて進むと少し大きな扉の前に宝箱とワープポイントが用意されていた。
僕は宝箱の中の回復薬を入手して、扉を開け中に入る。目の前には筋骨隆々とした体に片手に大きな棍棒を持ったゴブリンキングが居る。
戦いはゴブリンキングの叫びで始まった。このゲームはアクションゲームのようにキャラクターを自由に動かして移動や回避が出来る。僕は振りかかる棍棒を避けながら、振り終わりの隙をつくためにバックステップで瞬時に一定の距離を取り魔法の詠唱を始める。
しかしここで想定外のことが二つ起こる。振り終わりの隙が出来る時間が思ったより短く、自分の魔法の詠唱スピードが遅いことだ。これによって、振りかかる棍棒を避けることも出来ずにゲームオーバーになってしまった。
その後もレベルを少し上げて何回か挑んでみたけど、どうしても魔法の詠唱中にやられてしまう。
「レベルもあるだろうけど、この職パーティー推奨では」
そんなことに気付き始めて、修也が来るまでログアウトしようかと考えていた時だった。
「あの、始めたばかりの方ですよね?」
背後から女性のプレイヤーが話しかけてきた。
「あ、はい」
「なにか攻略に詰まってるんですか?」
僕は洞窟にいるゴブリンキングが倒せないことを伝えた。すると、彼女はハッとした様子を見せて言った。
「私もそこで詰まってたんです、一人だと火力が足りなくて、このゲームパーティー推奨みたいなんですよね」
「僕も同じこと思い始めてました。良かったらパーティー組みませんか」
「是非よろしくお願いします!」
これが彼女とのファーストコンタクトだった。
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