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婚約破棄編

第13話・カイベルの成功

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ーーーカイベル・フォンディナムは微笑んだ。

部屋の前でぎゃあぎゃあと品無く喚く姉を無視し、荷物を荷台に詰めていく。

ーーー(彼女を支えるのは、この僕だ!)

この国の王子共が共に国を出ていくと聞いたとき、カイベルはたいそう怒り狂って、風魔法で花瓶やらなんやらを割ってしまったが、まあ、もうカイベルにとってここは家ではなくなるのだから、何も問題はないのである。え、公爵が苦労して手に入れたお高い花瓶?それならここに散らばってますよ。

とまあ、そんなこんなで一文着あったが、カイベルは目的を達成したのである。

自身の母という形を取っているあの女の元に、国王がちょくちょく出向くのは知っていた。アホな当主とバカな姉は気づいていなかっただろうが。
まさか、この情報がこんなところで役に立つとは思わなんだ。

カイベルは、これからのことに想いをはせ、大変上機嫌であった。

エミリアと何をしよう。
エミリアに何をしよう。
エミリアに何をしてもらおう。

学園を去ることになった今、他の男共よりも一歩リードしたカイベルは、自身が勝ったも同然だと確信していた。

アルベルト・ゲーチェリー・ツェルガはストーカーな上、勘違いでバカな自滅を勝手にしてくれたし、他にも有力なライバルは全員学園に在席し、なによりこの国にいるのだから。

カイベルはニヤケの止まらない顔を直すことなく、うっそりと微笑んだ。
姉が扉の前で鼻を啜っているが、そんなものは相知らぬ。


ーーーだが、カイベルは知らなかった。
カイベルのストーカーに近い行為を、貰った花を動物達の死骸の葬花に使ったから怒って、いつか怨念を晴らすために自分をストーキングしているのだと勘違いしながらも、ちゃんとエミリアは気づいていたことを。
自分のストーキングがバレているなんて思いもしないカイベルは、姉の泣き声と甘ったるい縋るような声を背に、るんるんと鼻歌を歌いながら荷造りを進めていくのであった。
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