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第九章 拘束 ミサイル防衛
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佑一たち三人は、居酒屋に入り込んだ。割合大きな店で、大勢の客で賑わっている。そのうちの小上がりの一席に案内され、三人は腰を下ろした。一応間仕切りはあるが、まったく密室性はなく、周囲の席の雑然とした様子は完全に耳に入ってくる。
矢崎は慣れた様子で注文をすると、まず届いたビールのジョッキをあげた。
「それじゃあ国枝くん、お疲れさま」
佑一も土本も、ジョッキを乾杯として合わせた。とりあえず飲む。疲労した身体に、水分が行きわたるようだった。
「いやあ、美味いっすね。これが最高です」
声をあげた土本を見ながら、矢崎が口を開く。
「それじゃあ、改めて紹介するけど、彼が『アリ』の土本清志くんだ」
(え、こんな場所で、その話か)
佑一は驚いて目を丸くした。それを察したように、矢崎が言葉を継ぐ。
「ああ、こんなとこだから、誰も周りなんか気にかけてないから。周囲に怪しいのもいないし、入ってくる様子もない。チェック済みだよ」
「そう…ですか」
「逆にこれだけうるさいと、声も聞き取りづらいだろ。で、こちらは国枝佑一くん」
紹介された佑一は、土本に少し礼をした。土本が笑う。
「いやあ、基地にきた時は捜査一課って聞いてたから。けど、矢嶋さんの仲間だったんすね」
「まあ…秘匿捜査ですから」
「いや、けどあの時のナイフ取り、凄かったすよね! 全然、何やったのか判らなかったもん」
「なに、君、そんな特技あるの?」
矢崎が佑一に目を向ける。ええ、まあ…と佑一は適当に答えた。
その最中にも焼き鳥やからあげ、田楽や焼き茄子等、注文品が運ばれてくる。三人はしばし、飲んで喰った。
その最中、佑一はふと思いついて訊いてみた。
「二人は、あの道場で知り合ったんですか?」
「そうそう、おれが入門したら矢嶋さんがいたんすよ。なんか強い人いる~って思ったすね」
土本が笑いながら、そう話す。
(そうなのか)
佑一は意外に思った。土本が先に入門していて、彼に近づくために矢崎が入門する。偶然を装って知り合う、公安のいつもの手法だと思っていたからである。
佑一の胸中を察してか、矢崎が口を開いた。
「柔道やってたんだよ、あまり上手くないけどね。投げ技っていうのはさ、センスがいるんだ。けど寝技は学習して練習すると上手くなる。体力も凄くつくしね」
「土本さんは? 自衛隊にいるのに、わざわざ柔術道場に通うなんて」
「おれっすか? おれは動画見てたらアメリカの海兵隊で受ける訓練に、ブラジリアン柔術が取り入れられてるって映像を見て興味持ったんすよ。それで来てみたら、おれより体力あるオバケみたいな人が結構いるんで、すげぇってなって」
土本は愉快そうに言った。
「で、仲良くなってみたら警察の人だった。それでまあ、知ってる事はちょこちょこと話す仲になったんす。だって警察も自衛隊も、国を守るための組織でしょ? 同志みたいなもんじゃないすか」
頓着なくそう言う土本に、佑一は無言で微笑んでみせた。
(矢崎さんが、そう教え込んだんだろうか?)
そう疑問に思ったが、もちろん口にはしない。佑一が矢崎を見ると、矢崎は静かな微笑みを浮かべたまま、つまみを口にしていた。
「そうだ。ちょっとおかしな動きがあったんですよ」
やがて土本が、そう口を開いた。矢崎が促す。
「おかしなって、どんな?」
「これ見て下さいよ」
そう言って土本は、スマホの画面を見せた。覗き込むと、そこにはいかつい装甲車が写っている。キャタピラがついていて戦車っぽいが、上に砲台のようなものはない。
「これは?」
佑一の問いに、土本は答えた。
「MLRSの自走発射機。アメリカでの正式名称はM270。この写真は米軍基地の解放イベントで撮ったもんです」
「陸自のじゃないのね」
矢崎の言葉に、土本は首を振ってみせた。
「とんでもない。うちの内部なんか写真撮ってるとこ見られたら、即捕まりますよ。いくらおれでも、そんな事しませんて」
「なるほど。じゃあ、これが何なの?」
「これ、背中が開くんですよ」
次の写真は、その装甲車の荷台部分が、傾いて持ち上がっている写真だった。見るとその荷台部分はミサイルポッドであり、左右六発ずつ、計十二発のミサイルが装填されているようだった。
「今、ここに入ってるのはM26っていうロケット弾なんすね。けどこれ実はフェイクで、ATACMSを二発積めるポッドなんです」
「ATACMSってのは?」
「短距離弾道ミサイル」
そう事もなげに言いながら、土本は追加で頼んだ酎ハイをあおった。
「日本にも配備しようって話が一時期上がったんすよ。短距離弾道ミサイルってのは射程が500kmくらいなんすね。これだと、沖縄の基地に配備して、尖閣諸島に届く。そこに上陸してくる中国軍が狙えるので、必要である、と。そんな話だったんです」
「その時は……まだ敵基地攻撃能力を持つ、という話ではなかった?」
「そうすね。それが最近になって、敵基地攻撃能力が必要だって話になって、今度トマホークが配備されることになった。これは種類が色々あるんすけど、日本に配備する予定なのは射程が1600kmくらいのものって事になってるんす。ただし、トマホークは弾道ミサイルじゃなくて、巡航ミサイルなんす」
「弾道ミサイルと巡航ミサイルって、どう違うんですか?」
佑一が問うと、土本は嬉しそうな顔で話し始めた。
「弾道ミサイルってのは、上に打ち上げて落ちてくるんすね。でも、巡航ミサイルってのは自動制御で、地面と平行に飛ぶんす。頭のところに赤外線シーカーが入ってて、GPSで誘導するんす。自動操縦のミサイルにナビがついてるみたいなもんすね」
「じゃあ、目標を正確に捉えるという事ですか?」
「そうすね。こいつはレーダーに捉えにくい低空を飛んで近づくんすよ。それで目標に近づくと、実際の目標画像と事前のデジタル画像を照合して、自動修正で目標に突入するんす。まあ、眼で見て確認、みたいな感じっすかね」
得意げに話す土本に対し、佑一はふと思いついた疑問を投げかけてみた。
「それだけ凄い性能なら、全部のミサイルが巡航ミサイルでもいいのでは? どうして弾道ミサイルがあるんですか?」
「あ~、それは目的の違いっていいすかね。巡航ミサイルは正確だけど、飛行速度がマッハ1以下くらいで遅いんすよ。だからそれなりに迎撃されちゃうんです。まあ、ロシアみたいに大量に撃ち込めば、全部は迎撃できないって判ったんすけどね。で、弾道ミサイルは数千キロでも数分で着いちゃうくらい速い。けど、狙いが正確じゃないんすね。正確なものでも、CEPが100~200mくらいの感じなんすよ。だから広範囲に破壊する核弾頭とセットで考えるわけです。これだとおおまかに当たればいいわけっすから」
「けど、そんな攻撃方法ばかりでは、実際に使用した時に人道上の問題が出るわけだ。最初から国際社会を無視してるような北朝鮮みたいな国ならともかく、民間施設を狙わない、というのが一応国際的なルールになってるからね。それで弾道ミサイルは持ってて脅しにはなるけど、実際に使用するのは巡航ミサイルの方。戦略ミサイルの弾道ミサイル、戦術ミサイルの巡航ミサイルというわけさ」
矢崎が土本の話を途中から引き継いだ。そこで矢崎は、土本に話を戻す。
「で、それが一体、どうしたっていうんだい?」
「これに似てるんだけど、もうちょい大型のものがうちに来たんすよ。けど、おれが知らない機体だった。あれは新開発の自走発射機っすね。しかもその機体に関しては、特に説明がなかった。で、知らないうちに何処かへ消えていった。恐らくだけど、王日岳のレーダー基地の方すね」
「レーダー基地に、ミサイル発射機……」
矢崎が思案気に呟く。土本はさらに話を続けた。
「あくまでおれの勘ですけど、あの大きさは中距離弾道ミサイルなんすよ」
「……それが、おかしな動き?」
佑一は判らなくて問うた。自衛隊基地に新型ミサイルが配備される事自体は、それほどおかしな事とは思えなかったからである。それに対し、土本が答えた。
「中距離弾道ミサイルって、実はアメリカでは廃棄されたんすよ。パーシング・システムっていうのを使ってたんすけどね。88年だったかな、中距離核戦力全廃条約(INF条約)ってのがアメリカとソ連の間で結ばれて以来、中距離弾は作ってない…という話なんす」
「……けど、その中距離弾っぽいものが、日本に来た、と」
土本は頷いた。
「最近、北朝鮮からノドンとかテポドンとか飛んでくるでしょ。あれは準中距離弾道ミサイルに入るんす。射程が1000km~3000kmくらいのものが準中距離、中距離のものは3000kmから5000kmくらいって事になってるけど、まあ区別はあんまりないんす。つまり、アメリカやソ連は中距離弾道弾は止めたけど、今、絶賛使用中なのは中距離弾なんすよ」
「その対抗策として、日本にも中距離弾を配備した? 敵国まで優に飛べる、まさに反撃能力というわけだね」
土本の話を、矢崎が継いだ。
「そもそもだけど、『敵基地』に攻撃を限定することが、自走式発射機を見ても判るように、位置を特定できないから無意味な概念なんだよ。東京から北京までが約2000km。トマホークは1600kmで敵を狙えるかもしれないけど、戦艦か飛行機に搭載しないと本土までは狙えない距離だ。けど中距離弾道弾なら、東京からでも大陸が射程に入る」
その矢崎の言葉に、佑一は一瞬寒気を感じた。矢崎が続ける。
「けど、これは公には発表されてない事実だ。日本が、米ソも保有を止めた中距離弾道弾を配備するとなると、大変な問題となる。どうしてだか、判るかい?」
矢崎の問いに、佑一は慎重にその言葉を吐いた。
「……核爆弾の配備の準備」
佑一の答えを聞いて、矢崎はにやりと笑みを浮かべた。
矢崎は慣れた様子で注文をすると、まず届いたビールのジョッキをあげた。
「それじゃあ国枝くん、お疲れさま」
佑一も土本も、ジョッキを乾杯として合わせた。とりあえず飲む。疲労した身体に、水分が行きわたるようだった。
「いやあ、美味いっすね。これが最高です」
声をあげた土本を見ながら、矢崎が口を開く。
「それじゃあ、改めて紹介するけど、彼が『アリ』の土本清志くんだ」
(え、こんな場所で、その話か)
佑一は驚いて目を丸くした。それを察したように、矢崎が言葉を継ぐ。
「ああ、こんなとこだから、誰も周りなんか気にかけてないから。周囲に怪しいのもいないし、入ってくる様子もない。チェック済みだよ」
「そう…ですか」
「逆にこれだけうるさいと、声も聞き取りづらいだろ。で、こちらは国枝佑一くん」
紹介された佑一は、土本に少し礼をした。土本が笑う。
「いやあ、基地にきた時は捜査一課って聞いてたから。けど、矢嶋さんの仲間だったんすね」
「まあ…秘匿捜査ですから」
「いや、けどあの時のナイフ取り、凄かったすよね! 全然、何やったのか判らなかったもん」
「なに、君、そんな特技あるの?」
矢崎が佑一に目を向ける。ええ、まあ…と佑一は適当に答えた。
その最中にも焼き鳥やからあげ、田楽や焼き茄子等、注文品が運ばれてくる。三人はしばし、飲んで喰った。
その最中、佑一はふと思いついて訊いてみた。
「二人は、あの道場で知り合ったんですか?」
「そうそう、おれが入門したら矢嶋さんがいたんすよ。なんか強い人いる~って思ったすね」
土本が笑いながら、そう話す。
(そうなのか)
佑一は意外に思った。土本が先に入門していて、彼に近づくために矢崎が入門する。偶然を装って知り合う、公安のいつもの手法だと思っていたからである。
佑一の胸中を察してか、矢崎が口を開いた。
「柔道やってたんだよ、あまり上手くないけどね。投げ技っていうのはさ、センスがいるんだ。けど寝技は学習して練習すると上手くなる。体力も凄くつくしね」
「土本さんは? 自衛隊にいるのに、わざわざ柔術道場に通うなんて」
「おれっすか? おれは動画見てたらアメリカの海兵隊で受ける訓練に、ブラジリアン柔術が取り入れられてるって映像を見て興味持ったんすよ。それで来てみたら、おれより体力あるオバケみたいな人が結構いるんで、すげぇってなって」
土本は愉快そうに言った。
「で、仲良くなってみたら警察の人だった。それでまあ、知ってる事はちょこちょこと話す仲になったんす。だって警察も自衛隊も、国を守るための組織でしょ? 同志みたいなもんじゃないすか」
頓着なくそう言う土本に、佑一は無言で微笑んでみせた。
(矢崎さんが、そう教え込んだんだろうか?)
そう疑問に思ったが、もちろん口にはしない。佑一が矢崎を見ると、矢崎は静かな微笑みを浮かべたまま、つまみを口にしていた。
「そうだ。ちょっとおかしな動きがあったんですよ」
やがて土本が、そう口を開いた。矢崎が促す。
「おかしなって、どんな?」
「これ見て下さいよ」
そう言って土本は、スマホの画面を見せた。覗き込むと、そこにはいかつい装甲車が写っている。キャタピラがついていて戦車っぽいが、上に砲台のようなものはない。
「これは?」
佑一の問いに、土本は答えた。
「MLRSの自走発射機。アメリカでの正式名称はM270。この写真は米軍基地の解放イベントで撮ったもんです」
「陸自のじゃないのね」
矢崎の言葉に、土本は首を振ってみせた。
「とんでもない。うちの内部なんか写真撮ってるとこ見られたら、即捕まりますよ。いくらおれでも、そんな事しませんて」
「なるほど。じゃあ、これが何なの?」
「これ、背中が開くんですよ」
次の写真は、その装甲車の荷台部分が、傾いて持ち上がっている写真だった。見るとその荷台部分はミサイルポッドであり、左右六発ずつ、計十二発のミサイルが装填されているようだった。
「今、ここに入ってるのはM26っていうロケット弾なんすね。けどこれ実はフェイクで、ATACMSを二発積めるポッドなんです」
「ATACMSってのは?」
「短距離弾道ミサイル」
そう事もなげに言いながら、土本は追加で頼んだ酎ハイをあおった。
「日本にも配備しようって話が一時期上がったんすよ。短距離弾道ミサイルってのは射程が500kmくらいなんすね。これだと、沖縄の基地に配備して、尖閣諸島に届く。そこに上陸してくる中国軍が狙えるので、必要である、と。そんな話だったんです」
「その時は……まだ敵基地攻撃能力を持つ、という話ではなかった?」
「そうすね。それが最近になって、敵基地攻撃能力が必要だって話になって、今度トマホークが配備されることになった。これは種類が色々あるんすけど、日本に配備する予定なのは射程が1600kmくらいのものって事になってるんす。ただし、トマホークは弾道ミサイルじゃなくて、巡航ミサイルなんす」
「弾道ミサイルと巡航ミサイルって、どう違うんですか?」
佑一が問うと、土本は嬉しそうな顔で話し始めた。
「弾道ミサイルってのは、上に打ち上げて落ちてくるんすね。でも、巡航ミサイルってのは自動制御で、地面と平行に飛ぶんす。頭のところに赤外線シーカーが入ってて、GPSで誘導するんす。自動操縦のミサイルにナビがついてるみたいなもんすね」
「じゃあ、目標を正確に捉えるという事ですか?」
「そうすね。こいつはレーダーに捉えにくい低空を飛んで近づくんすよ。それで目標に近づくと、実際の目標画像と事前のデジタル画像を照合して、自動修正で目標に突入するんす。まあ、眼で見て確認、みたいな感じっすかね」
得意げに話す土本に対し、佑一はふと思いついた疑問を投げかけてみた。
「それだけ凄い性能なら、全部のミサイルが巡航ミサイルでもいいのでは? どうして弾道ミサイルがあるんですか?」
「あ~、それは目的の違いっていいすかね。巡航ミサイルは正確だけど、飛行速度がマッハ1以下くらいで遅いんすよ。だからそれなりに迎撃されちゃうんです。まあ、ロシアみたいに大量に撃ち込めば、全部は迎撃できないって判ったんすけどね。で、弾道ミサイルは数千キロでも数分で着いちゃうくらい速い。けど、狙いが正確じゃないんすね。正確なものでも、CEPが100~200mくらいの感じなんすよ。だから広範囲に破壊する核弾頭とセットで考えるわけです。これだとおおまかに当たればいいわけっすから」
「けど、そんな攻撃方法ばかりでは、実際に使用した時に人道上の問題が出るわけだ。最初から国際社会を無視してるような北朝鮮みたいな国ならともかく、民間施設を狙わない、というのが一応国際的なルールになってるからね。それで弾道ミサイルは持ってて脅しにはなるけど、実際に使用するのは巡航ミサイルの方。戦略ミサイルの弾道ミサイル、戦術ミサイルの巡航ミサイルというわけさ」
矢崎が土本の話を途中から引き継いだ。そこで矢崎は、土本に話を戻す。
「で、それが一体、どうしたっていうんだい?」
「これに似てるんだけど、もうちょい大型のものがうちに来たんすよ。けど、おれが知らない機体だった。あれは新開発の自走発射機っすね。しかもその機体に関しては、特に説明がなかった。で、知らないうちに何処かへ消えていった。恐らくだけど、王日岳のレーダー基地の方すね」
「レーダー基地に、ミサイル発射機……」
矢崎が思案気に呟く。土本はさらに話を続けた。
「あくまでおれの勘ですけど、あの大きさは中距離弾道ミサイルなんすよ」
「……それが、おかしな動き?」
佑一は判らなくて問うた。自衛隊基地に新型ミサイルが配備される事自体は、それほどおかしな事とは思えなかったからである。それに対し、土本が答えた。
「中距離弾道ミサイルって、実はアメリカでは廃棄されたんすよ。パーシング・システムっていうのを使ってたんすけどね。88年だったかな、中距離核戦力全廃条約(INF条約)ってのがアメリカとソ連の間で結ばれて以来、中距離弾は作ってない…という話なんす」
「……けど、その中距離弾っぽいものが、日本に来た、と」
土本は頷いた。
「最近、北朝鮮からノドンとかテポドンとか飛んでくるでしょ。あれは準中距離弾道ミサイルに入るんす。射程が1000km~3000kmくらいのものが準中距離、中距離のものは3000kmから5000kmくらいって事になってるけど、まあ区別はあんまりないんす。つまり、アメリカやソ連は中距離弾道弾は止めたけど、今、絶賛使用中なのは中距離弾なんすよ」
「その対抗策として、日本にも中距離弾を配備した? 敵国まで優に飛べる、まさに反撃能力というわけだね」
土本の話を、矢崎が継いだ。
「そもそもだけど、『敵基地』に攻撃を限定することが、自走式発射機を見ても判るように、位置を特定できないから無意味な概念なんだよ。東京から北京までが約2000km。トマホークは1600kmで敵を狙えるかもしれないけど、戦艦か飛行機に搭載しないと本土までは狙えない距離だ。けど中距離弾道弾なら、東京からでも大陸が射程に入る」
その矢崎の言葉に、佑一は一瞬寒気を感じた。矢崎が続ける。
「けど、これは公には発表されてない事実だ。日本が、米ソも保有を止めた中距離弾道弾を配備するとなると、大変な問題となる。どうしてだか、判るかい?」
矢崎の問いに、佑一は慎重にその言葉を吐いた。
「……核爆弾の配備の準備」
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