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フェイの決意
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ベルデールが巨大な熊の分霊体(ファントム)でレギアを襲う。レギアは鉄の爪で、熊の爪を防御した。アストリックスは大長老に駆け寄ったが、既に絶命していることを確認しただけだった。
その瞬間、大長老の遺体から、薄靄のような大長老の霊体が飛び出した。アストリックスは驚きに声をあげた。
大長老の霊はまっすぐにベルデールの元へ飛び、その正面に向き合った。ベルデールが恐怖の表情を浮かべた。
「だ、大長老、私は……」
大長老の霊は何も言わずにベルデールの首を両手で締めあげた。
「ひ…ひぃ……」
ベルデールの身体が首を絞められて宙に浮く。ベルデールは呼吸が止まり、顔色が青くなっていった。恐ろしい光景に、誰も身じろぎ一つできなかった。やがて、ごきり、という音とともにベルデールの首が折れた。鈍い音とともにベルデールの遺骸が地面に落ちた。
「――なるほど、恐ろしいものですね。さすが大長老の死霊というべきか。しかし、これでもはや恐るべき相手はいない!」
ルシャーダは百足の分霊体をフェイへ飛ばした。
「魔導障壁(ディフェンス)」
その直撃をヒーリィが剣を構え、力場の壁で防御する。しかし霊力を増しているルシャーダの百足は、その障壁を喰い破って侵入した。
「骸!」
百足がヒーリィの胸に突き刺さっている。その胸元でうねるように暴れると、二匹の百足が口にオレンジと青の宝珠をくわえて出てきた。
「フフ……私が欲しいのは、黒の写本ではなくデゾンレールの呪宝。だが、このレギアの作った二つの宝珠でも、その機能は同等なようだ。これで私は目的を果たした。君らには、デゾン復活を待たずにここで消えてもらいましょう」
ルシャーダは青とオレンジの宝珠を手に入れると、黒のデゾンカースの呪宝を高々と掲げた。ベルデールの身体から黒い霧状の霊気が漏れ、呪宝に吸収されていく。
そして大長老グラファイスの死霊が、不意に姿を現し、黒の呪宝へと引き寄せられていった。
「いけない! あれだけの力を手にされたら――」
しかしレギアの叫びは空しく、大長老の死霊はルシャーダへと接近していった。大長老の死霊も黒の呪宝へと吸収される。ルシャーダは微笑を浮かべた。
「ほう。これは凄まじい霊力。さすがは大長老だ――」
しかし次の瞬間、ルシャーダの瞳が真っ赤に染まった。その瞳は、ベルデールの配下だった長老たちを見ている。
「ウラギリモノメ」
奇妙な声を発すると同時に、紫の百足が長老たちに襲いかかった。百足は容赦なく長老たちの喉を喰い破る。
「い、いったい何が――?」
「大長老の怨霊が取り憑いたんだ」
ザラガの恐ろしげな声に、ストリーム長老が青ざめた顔で答えた。
「こ、これは――デゾンカースの呪宝のせいか」
ザラガはルシャーダに背後から忍び寄ると、その手に持つデゾンカースの呪宝をたたき落とした。と、その途端にルシャーダの瞳が普通に戻る。
「む――私は、いったい?」
「デゾンカースの呪宝に引き寄せられた大長老の怨霊が取り憑いていたのです」
「……恐るべきものだ。迂闊には触れられないな。ザラガ、魔法でこの箱にデゾンカースの呪宝を」
ルシャーダが懐から箱を取り出す。ザラガが手を向けると、念動力の魔法でルシャーダの箱のなかに黒い呪宝が吸い込まれた。
「室長、もう十分です。ここは引き上げましょう」
「確かに、そうだな。本物ではないが、デゾンレールの代替物も入手した。帰ろう」
ルシャーダとザラガはそう話し合うと、魔導昇降機に乗り込み起動させた。縦穴を上る籠が、ザラガの魔力によって上昇していく。
「待て、ルシャーダ!」
去っていくルシャーダにレギアが追いすがろうとした。しかし深海魚の群に阻まれて、浮遊することができない。ルシャーダたちはその間にも、はるか上方の洞穴の入り口へと去っていった。
*
事態が終結してからも、広場の喧噪は収まってはいなかった。アストリックスは怪我人の治療にあたり、生き残った長老たちは集まって何事かを相談していた。広場は怪我人の治療と死者の運搬、瓦礫の撤去などが行われていた。
レギアが魔面を外した。辛そうな顔をしていたが、収納珠から箱を取り出すと、その中にあるデゾンレールの呪宝を取り出した。
「骸、これを付けておけ」
「よいのですか?」
「そうしなければ、お前がもたないだろう。そして、その子と一緒にサムウジの所へ戻って、サムウジを助けるんだ――」
そう言い終わらないうちに、レギアの表情がなくなり、その身体が倒れようとした。呪宝を受け取っていたヒーリィが、意識のないレギアの身体を支えた。
「その人、大丈夫なの?」
「反動で意識を失ってるだけだ。しばらくしたら回復する。我々はサムウジの所へ戻ろう」
「うん」
フェイはヒーリィに頷きながら、ちらと父親のストリーム長老を横目で見た。ストリーム長老は他の長老たちと忙しそうに何事かを話し合っていた。
「行こう、骸さん――って呼ぶのも変だ。本当の名前は?」
「私はヒーリィだ。――アストリックス、我々はサムウジ氏の所へ戻るが、君はどうする?」
ヒーリィに呼ばれたアストリックスは小走りに近寄ってくると、フェイに軽く微笑んでみせた。
「わたくしは、此処でもう少し怪我人の治療を終えたら合流しますわ」
ヒーリィは頷くと、レギアを背負って広場を歩きだした。フェイもそれに倣い、横について一緒に歩く。しばらく歩いた後、フェイはヒーリィに話しかけた。
「――さっき僕を助けたのは、僕が黒の写本を読めるから?」
ヒーリィは歩きを止めることなく、フェイの方を見た。表情に何の感情も浮かんでおらず、フェイは反応に戸惑った。
「自らに利益があるから君を助けた、と訊いているのか?」
「そうだよ。違うの?」
フェイは少し攻撃的な気分になって言った。しかしヒーリィは何の表情も見せず、歩みを緩めることもなく答えた。
「損得勘定を考えるなら、そもそも魔女殿のやってることは、当人に何の得にもならないことだ」
ヒーリィはそれから、歩きながらこれまでのことを話した。自分が死体であったこと。レギアとデゾンレールの呪宝。アストリックスとの出会い。
「――魔女殿は、ただこれから生まれる被害をくい止めるために、自ら命をかけている」
「……それじゃあ、あなたたちは何で危険を犯すの? 意味が判らない」
フェイは言った。ヒーリィは表情を変えることなく、それに答えた。
「私は魔女殿にこの剣を捧げた。アストリックスは……恐らくだが、魔女殿に自らの理想の道しるべを見たのだろう。我々はただ魔女殿に惹かれた……と言ってもいい。だが、君を助けたことに関してはもっと根本的な答えもある」
フェイは目線でその答えを促した。
「傍にいる者の危険に迷ってる暇がなかった。ただ、それだけだよ」
ヒーリィはそう言うと、後はただ歩き続けた。
フェイは、自分の中で何かが動いているのを感じた。
ただそれが何かはよく判らなかった。
(この人も、僕を助けた――)
フェイは瞳を閉じたままのレギアの顔を見て、不意にある想いに囚われた。
(僕は子供だ。――狭い世界で、自分のことだけを考えてる小さな存在だ)
フェイは何故か泣きたいような気持ちになったが、それを堪えて歩き続けた。
サムウジの家に着くと、フェイは黒の写本を取り出して『魂封じ』を目覚めさせる方法を探し始めた。ヒーリィはレギアをソファに寝かせると、家のなかを歩き回っていた。
思いがけないくらい早く、フェイは「魂封じの解除」の項目を見つけた。それは白紙部分ではなく、通常の霊術大全の写しの部分だった。フェイはヒーリィを呼んだ。
「見つけたのだな」
「此処の部分。魂封じを解除するには、誰かがその心に潜って目覚めさせる必要があるって書いてある。その際に、大きめの霊鏡を二枚使うみたい」
「それで、どうするのだ?」
「顔を挟むように合わせ鏡にして置いて、そこで潜る人間が霊気を間に発する。うまくいけば霊体が離脱して、相手の意識に潜れるみたい」
「なるほど、では私が潜ろう」
フェイは首を振った。
「潜る者には魂封じにあってる者との、精神的なつながりが重要だって書いてある。そうでないと潜れないか、潜っても相手の精神に呑み込まれて帰ってこれないか。それに霊力の高さも重要だって」
フェイの言葉に、ヒーリィは無表情のまま黙り込んだ。フェイはそのまま言葉を続けた。
「だから、僕が潜るよ」
「それが極めて危険なことだと、十分理解した上で言ってるのかね?」
ヒーリィは静かに問うた。
「サムは僕の友達だ。つながりが一番強いのは、きっと僕だ。――僕は、サムを助けたい」
フェイはきっぱりとした表情で答えた。ヒーリィはそれに続けた。
「そうか。ではすぐに始めよう。霊鏡は向こうの部屋にあった」
そう言うと、ヒーリィは道具を取りに行った。フェイはサムウジの寝ている部屋に行き、ベッドの傍でその顔を見た。サムウジはまったく動かなかった。
(サムウジ……僕が…あなたを助けるよ)
やがてヒーリィが霊鏡をもって現れ、サムウジの傍に合わせ鏡になるように据えた。
「これでいいはずだ。――どうだ? これは危険なことだ。思い直すなら今だが」
「ううん。僕はやるよ」
フェイの堅い決意の顔に、ヒーリィも黙って頷いた。
フェイはサムウジの顔の上に手をかざすと、そこに自身の霊力を集中した。しばらく変化はなかったが、やがてその霊力が合わせ鏡のなかで膨張していく感じを掴んだ。と、次の瞬間、フェイはサムウジの意識のなかへと飛んでいた。
その瞬間、大長老の遺体から、薄靄のような大長老の霊体が飛び出した。アストリックスは驚きに声をあげた。
大長老の霊はまっすぐにベルデールの元へ飛び、その正面に向き合った。ベルデールが恐怖の表情を浮かべた。
「だ、大長老、私は……」
大長老の霊は何も言わずにベルデールの首を両手で締めあげた。
「ひ…ひぃ……」
ベルデールの身体が首を絞められて宙に浮く。ベルデールは呼吸が止まり、顔色が青くなっていった。恐ろしい光景に、誰も身じろぎ一つできなかった。やがて、ごきり、という音とともにベルデールの首が折れた。鈍い音とともにベルデールの遺骸が地面に落ちた。
「――なるほど、恐ろしいものですね。さすが大長老の死霊というべきか。しかし、これでもはや恐るべき相手はいない!」
ルシャーダは百足の分霊体をフェイへ飛ばした。
「魔導障壁(ディフェンス)」
その直撃をヒーリィが剣を構え、力場の壁で防御する。しかし霊力を増しているルシャーダの百足は、その障壁を喰い破って侵入した。
「骸!」
百足がヒーリィの胸に突き刺さっている。その胸元でうねるように暴れると、二匹の百足が口にオレンジと青の宝珠をくわえて出てきた。
「フフ……私が欲しいのは、黒の写本ではなくデゾンレールの呪宝。だが、このレギアの作った二つの宝珠でも、その機能は同等なようだ。これで私は目的を果たした。君らには、デゾン復活を待たずにここで消えてもらいましょう」
ルシャーダは青とオレンジの宝珠を手に入れると、黒のデゾンカースの呪宝を高々と掲げた。ベルデールの身体から黒い霧状の霊気が漏れ、呪宝に吸収されていく。
そして大長老グラファイスの死霊が、不意に姿を現し、黒の呪宝へと引き寄せられていった。
「いけない! あれだけの力を手にされたら――」
しかしレギアの叫びは空しく、大長老の死霊はルシャーダへと接近していった。大長老の死霊も黒の呪宝へと吸収される。ルシャーダは微笑を浮かべた。
「ほう。これは凄まじい霊力。さすがは大長老だ――」
しかし次の瞬間、ルシャーダの瞳が真っ赤に染まった。その瞳は、ベルデールの配下だった長老たちを見ている。
「ウラギリモノメ」
奇妙な声を発すると同時に、紫の百足が長老たちに襲いかかった。百足は容赦なく長老たちの喉を喰い破る。
「い、いったい何が――?」
「大長老の怨霊が取り憑いたんだ」
ザラガの恐ろしげな声に、ストリーム長老が青ざめた顔で答えた。
「こ、これは――デゾンカースの呪宝のせいか」
ザラガはルシャーダに背後から忍び寄ると、その手に持つデゾンカースの呪宝をたたき落とした。と、その途端にルシャーダの瞳が普通に戻る。
「む――私は、いったい?」
「デゾンカースの呪宝に引き寄せられた大長老の怨霊が取り憑いていたのです」
「……恐るべきものだ。迂闊には触れられないな。ザラガ、魔法でこの箱にデゾンカースの呪宝を」
ルシャーダが懐から箱を取り出す。ザラガが手を向けると、念動力の魔法でルシャーダの箱のなかに黒い呪宝が吸い込まれた。
「室長、もう十分です。ここは引き上げましょう」
「確かに、そうだな。本物ではないが、デゾンレールの代替物も入手した。帰ろう」
ルシャーダとザラガはそう話し合うと、魔導昇降機に乗り込み起動させた。縦穴を上る籠が、ザラガの魔力によって上昇していく。
「待て、ルシャーダ!」
去っていくルシャーダにレギアが追いすがろうとした。しかし深海魚の群に阻まれて、浮遊することができない。ルシャーダたちはその間にも、はるか上方の洞穴の入り口へと去っていった。
*
事態が終結してからも、広場の喧噪は収まってはいなかった。アストリックスは怪我人の治療にあたり、生き残った長老たちは集まって何事かを相談していた。広場は怪我人の治療と死者の運搬、瓦礫の撤去などが行われていた。
レギアが魔面を外した。辛そうな顔をしていたが、収納珠から箱を取り出すと、その中にあるデゾンレールの呪宝を取り出した。
「骸、これを付けておけ」
「よいのですか?」
「そうしなければ、お前がもたないだろう。そして、その子と一緒にサムウジの所へ戻って、サムウジを助けるんだ――」
そう言い終わらないうちに、レギアの表情がなくなり、その身体が倒れようとした。呪宝を受け取っていたヒーリィが、意識のないレギアの身体を支えた。
「その人、大丈夫なの?」
「反動で意識を失ってるだけだ。しばらくしたら回復する。我々はサムウジの所へ戻ろう」
「うん」
フェイはヒーリィに頷きながら、ちらと父親のストリーム長老を横目で見た。ストリーム長老は他の長老たちと忙しそうに何事かを話し合っていた。
「行こう、骸さん――って呼ぶのも変だ。本当の名前は?」
「私はヒーリィだ。――アストリックス、我々はサムウジ氏の所へ戻るが、君はどうする?」
ヒーリィに呼ばれたアストリックスは小走りに近寄ってくると、フェイに軽く微笑んでみせた。
「わたくしは、此処でもう少し怪我人の治療を終えたら合流しますわ」
ヒーリィは頷くと、レギアを背負って広場を歩きだした。フェイもそれに倣い、横について一緒に歩く。しばらく歩いた後、フェイはヒーリィに話しかけた。
「――さっき僕を助けたのは、僕が黒の写本を読めるから?」
ヒーリィは歩きを止めることなく、フェイの方を見た。表情に何の感情も浮かんでおらず、フェイは反応に戸惑った。
「自らに利益があるから君を助けた、と訊いているのか?」
「そうだよ。違うの?」
フェイは少し攻撃的な気分になって言った。しかしヒーリィは何の表情も見せず、歩みを緩めることもなく答えた。
「損得勘定を考えるなら、そもそも魔女殿のやってることは、当人に何の得にもならないことだ」
ヒーリィはそれから、歩きながらこれまでのことを話した。自分が死体であったこと。レギアとデゾンレールの呪宝。アストリックスとの出会い。
「――魔女殿は、ただこれから生まれる被害をくい止めるために、自ら命をかけている」
「……それじゃあ、あなたたちは何で危険を犯すの? 意味が判らない」
フェイは言った。ヒーリィは表情を変えることなく、それに答えた。
「私は魔女殿にこの剣を捧げた。アストリックスは……恐らくだが、魔女殿に自らの理想の道しるべを見たのだろう。我々はただ魔女殿に惹かれた……と言ってもいい。だが、君を助けたことに関してはもっと根本的な答えもある」
フェイは目線でその答えを促した。
「傍にいる者の危険に迷ってる暇がなかった。ただ、それだけだよ」
ヒーリィはそう言うと、後はただ歩き続けた。
フェイは、自分の中で何かが動いているのを感じた。
ただそれが何かはよく判らなかった。
(この人も、僕を助けた――)
フェイは瞳を閉じたままのレギアの顔を見て、不意にある想いに囚われた。
(僕は子供だ。――狭い世界で、自分のことだけを考えてる小さな存在だ)
フェイは何故か泣きたいような気持ちになったが、それを堪えて歩き続けた。
サムウジの家に着くと、フェイは黒の写本を取り出して『魂封じ』を目覚めさせる方法を探し始めた。ヒーリィはレギアをソファに寝かせると、家のなかを歩き回っていた。
思いがけないくらい早く、フェイは「魂封じの解除」の項目を見つけた。それは白紙部分ではなく、通常の霊術大全の写しの部分だった。フェイはヒーリィを呼んだ。
「見つけたのだな」
「此処の部分。魂封じを解除するには、誰かがその心に潜って目覚めさせる必要があるって書いてある。その際に、大きめの霊鏡を二枚使うみたい」
「それで、どうするのだ?」
「顔を挟むように合わせ鏡にして置いて、そこで潜る人間が霊気を間に発する。うまくいけば霊体が離脱して、相手の意識に潜れるみたい」
「なるほど、では私が潜ろう」
フェイは首を振った。
「潜る者には魂封じにあってる者との、精神的なつながりが重要だって書いてある。そうでないと潜れないか、潜っても相手の精神に呑み込まれて帰ってこれないか。それに霊力の高さも重要だって」
フェイの言葉に、ヒーリィは無表情のまま黙り込んだ。フェイはそのまま言葉を続けた。
「だから、僕が潜るよ」
「それが極めて危険なことだと、十分理解した上で言ってるのかね?」
ヒーリィは静かに問うた。
「サムは僕の友達だ。つながりが一番強いのは、きっと僕だ。――僕は、サムを助けたい」
フェイはきっぱりとした表情で答えた。ヒーリィはそれに続けた。
「そうか。ではすぐに始めよう。霊鏡は向こうの部屋にあった」
そう言うと、ヒーリィは道具を取りに行った。フェイはサムウジの寝ている部屋に行き、ベッドの傍でその顔を見た。サムウジはまったく動かなかった。
(サムウジ……僕が…あなたを助けるよ)
やがてヒーリィが霊鏡をもって現れ、サムウジの傍に合わせ鏡になるように据えた。
「これでいいはずだ。――どうだ? これは危険なことだ。思い直すなら今だが」
「ううん。僕はやるよ」
フェイの堅い決意の顔に、ヒーリィも黙って頷いた。
フェイはサムウジの顔の上に手をかざすと、そこに自身の霊力を集中した。しばらく変化はなかったが、やがてその霊力が合わせ鏡のなかで膨張していく感じを掴んだ。と、次の瞬間、フェイはサムウジの意識のなかへと飛んでいた。
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