書きの種(エッセイ日記)

佐藤遼空

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今年を象徴するコンテンツ

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僕は例年、今年を象徴するコンテンツ、というものを挙げている。投稿サイトに書き始めた記念に、今まで何を挙げてきたのか、振り返ってみたい。

2017 欅坂46『不協和音』
2018 米津玄師『Leomon』 DA PUMP『U・S・A』
2019 『ガンダム』 『鬼滅の刃』
2020 『半澤直樹』 YOASOBI『夜に駆ける』
2021 『クーピーチャンネル』
2022 逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』 ヒグチアイ『悪魔の子』 ADO『新時代』
2023 さくらみこ 星街すいせい『アイドル』

一応、社会的にヒットしたものである条件はあるものの、基本的には個人的観点からセレクトするもので、まったく僕の独断と偏見である。では、今年2024年は何を挙げるか?

今年まず挙げるのは、やはりドラマ『不適切にもほどがある』である。これがヒットした理由、というものの深層に、僕は『良識では社会は良くならない』という感覚があったのではないか、と思う。

これは世界的な現象で、アメリカでハリスが負けてトランプが勝った背景にも同じ事が言えると思う。ハラスメントだとかSDGsだとか、ジェンダーだとか色々な「気を付けるべき」事柄の項目は増えていった。しかしこれらの実行は、基本的には「何かを制限すること」に基づいている。

良識というものは、基本的に「何かを制限すること」だ。人は言いたい放題言う事もできるし、差別できるし、盗めるし、殺せる。それをしないのが良識だ。だから倫理徳目というのは、基本的には制限事項だ。けど人は、そんな制限から解き放たれ、「思うがまま」にやってみたい、という衝動を持っている。だが『良識が作る社会』では、それは叶わない、という事を皆が知っている。そして「良識より、自分たちの利益が大事」という事に傾く。

その際に、良識を代表するメディアや有識者を、もはや人々は尊敬しない。裏付けのない情報を流せば、社会的に信頼が落ち、訴訟沙汰になったりする既存メディアより、裏付けなしでも罰則のないネットの情報を「より深い」と信用する。専門的知識を持つ有識者の言う事より、金儲けで成功したインフルエンサーの言葉を信用する。

『不適切にもほどがある』は、そういう社会的雰囲気のなかで、何を自身の言動の基準にすべきか迷う現代人に、写し鏡として機能した。だが、答えはない。それは自分自身で考え、確かめながら行くしかないからだ。「昔の方が、自由だった」のは一面の真実で、その背景で「誰かが自由を押し潰されて」いた。そういうジレンマの中に生きる僕らに、考える問いを与えてくれた作品だろう。

もう一つは『儒風亭らでん』ちゃん、を挙げようと思う。らでんちゃんはホロライブから去年デビューし、今年一周年を迎えたVチューバーだ。最初は破天荒キャラで行こうとしたが生来の真面目さがバレ、学芸員資格を持っていて美術に深い造詣があることが判り学術系Vチューバーとしてブレイクした。

が、今年なによりブレイクしたのは、『舞茸ダンス』である。「時間が余った、なにしよう。舞茸グルグル、舞茸グルグル」というダンスなのだが、これがブレイクし、小学生にも人気のムーヴメントになった。まさか、らでんちゃん本人も、こんな形でバズるとは思ってなかったろう。

らでんちゃんはクリスマス配信で登録者数100万人を突破し、来年のソロライブも発表された。凄いことである。ただ、一応らでんちゃんを象徴的に挙げはしたが、基本的にはVチューバー業界全体の動向、という事の意味が強い。

例えば宝鐘マリンは登録者数300万人を超える世界no.1Vチューバーだが、先ごろ横浜Kアリーナで2デイズのライブをやった。恐ろしい程の満席ぶり、熱狂ぶりだった。今、どれだけのアーチストが、Kアリーナの2デイズを実現できる発信力を持っているだろう?

星街すいせいの『ビビデバ』のMVは再生回数1億回を越えている。紅白に出るアーチストで、これだけのヒット曲を今年出したのは、Creepy Nutsくらいじゃないのだろうか? Vの市場は明らかに大きくなっている。

地上波でもVチューバーが出るようになり、いわゆる『ファンの世界』から、業界がその枠を越えようとしてる時期にあるのだろうと思う。その意味でも、美術館とのコラボなどがある儒風亭らでんちゃんを挙げた次第である。
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