書きの種(エッセイ日記)

佐藤遼空

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書き方と狙い

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『文芸別冊 堂場瞬一』の中で、堂場さんは自分の影響を受けた作家としてロス・マクドナルドをあげている。ロス・マクドナルドは『動く標的』で登場した私立探偵リュウ・アーチャーのシリーズが人気のハードボイルド作家だ。この作家に関して堂場さんは、「ミステリとして読んではダメで、『ふつうの現代小説』として読んでください」と言っている。

そしてこのロスマクは、プロットが素晴らしいと言った上でこう言う。「なんにも起きてないのに、ひじょうに読ませる。そんなところに影響を受けているかもしれません」と。つまり、堂場さんのそれほど事態が展開していないのに、凄い枚数が進んでいるスタイルは先駆者がいて、狙ってなったものなのだ。

そして文学研究者・宇佐美毅との対談のなかで、宇佐美が「ミステリーによくある伏線や、それまでの話がひっくり返るような仕掛けがないので、『あざとさを感じさせないリアル』」だと思うという事を言った。堂場さんは「リアルでないことは書かないようにしている。密室殺人とかどんでん返しとか、現実にはほとんど起こらないでしょう」と返している。

まさにそれが堂場さんのスタイルなんだな、と感心した。これに対して中山七里さんは、自著のなかで伏線を前の方に引く、落差を重視する、という事を言っている。堂場さんとは真逆のスタイルと言っていい。そして取材は一切せず、想像力の方が重要、という事を言っている。

同じミステリー作家でも、東野圭吾はまた違う。『このミステリがすごい! 2024年版』で青山剛昌(『名探偵コナン』)と対談しているのだが、東野圭吾は『眠りの森』を書くためにバレエを一年くらい取材し、『天空の蜂』のために原子力関係の施設を三~四年がかりで取材した、と語っている。

七里さんは「ミステリー系の人はトリックから話を起こす人が多い」と書いているが、以前にミステリー作家の特集本を読んだ時も、確かにその印象を受けた。しかし七里さんは「トリックは後から考える」派で、東野圭吾は「トリックから考えるのは少ない」と言っている。つまり、ある、という事か。

東野圭吾が「読者の『自分はあまり本は読まないんだけど、東野さんの本だけは読みます』っていうのが最大の褒め言葉」というのが興味深かった。
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