書きの種(エッセイ日記)

佐藤遼空

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七里さん、参考になりません!

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『さよならドビュッシー』で有名になった中山七里さんの、『超合理的!ミステリーの書き方』を読んだ。「ミステリーの書き方」とあるので、ミステリーの指南書になるかと思ったが……七里さん、参考になりません!

この人がちょっとおかしいのは、相当凄くて普通じゃない人なのに、自分は普通で物書き業界にはもっと化物がいっぱいる、とかやたら思ってること。いや、そりゃそうなんかもしれないけどさ、七里さんも相当におかしいよ。

まず驚いたのは、物語を完全に『文章』でイメージしてる、という話だ。映像があってそれを文章にする、という形ではなく、原稿用紙500枚なら500枚分、文章で頭に入ってるというのだ。で、それをアウトプットするだけだそうだ。……だけじゃないだろ! そういう書き方だからなのか、この人、執筆中に音楽聴くらしい。いや、僕は無音じゃないと集中できませんけど。

え~と、もうちょっと有益情報を書こう。『伏線は前の方に置け』『落差が人を驚かす』『2000字のプロットで面白くないものは、面白くならない』『インプットの量が大事。面白くないものも摂取すると、上手いもの下手なものが判るようになる』『興味を引く謎は、「つじつまの合わないこと」』『読者が予想してなかった、あるいは忘れていた動機』

こんなもんかな。どれも具体例はないので、あんまり参考にはならないんだけど。テクニカルなものとしては、手掛かり、トリック、伏線、どんでん返しに工夫が必要――って、そりゃそうでしょ! まあただ七里さんは、『トリックそのものより、情報を出す順番の方が重要』とも言ってる。これ、凄い大事だけど、具体例がない。そこが知りたいんじゃん!

七里さんは「一日に25枚書く」のだそうだ。けど、一ヶ月で1050枚書いたこともあるらしい、相当な速筆だ。その速筆は戦略でもあるという。『新人作家は量産しないとだめ』という、この話が一番興味深かったかもしれない。

新刊は昔は平台に二ヶ月くらい置かれていたが、今は2週間で交替する。人間って基本的に保守的なので、知ってるものには手を出すけど、知らないものには手を出さない。となると、よく見かける作家の本と無名の新人の本じゃ、よく見る方を取る。その「よく見る方」になるために量産しろ、という話だった。
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