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ネズミ
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裏医務室にて、作業台の上でネズミがビクビク痙攣している。ネオは温度のない赤い目でそれを凝視していた。
ネズミはコロンと腹を天井に向けて無防備に差し出し、人形のように転がった。
「少し苦しかった、かな」
このネズミはもう、二度と動かない。ネオは死んだネズミを持って裏庭に出る。裏庭に穴を掘ってソレを埋めた。
もう何匹目になるだろうか。数えるのも億劫なほどの屍が裏庭の肥料になっている。
だがネオには何の罪悪感もない。イブを苦しませないために他の犠牲は厭わない。
「ネーオ!ただいま!」
薄暗い裏庭で土まみれになっているネオに、そこにいるだけで世界が彩り鮮やかになるイブが正面から抱きついてきた。
「イブ、おかえりなさい」
ネオは土に汚れた手で抱き返すのを躊躇したが、イブがネオの胸に顔をぐりぐり擦りつける。
「汚れてしまいますよ?」
「いいの、いいの!ネオの匂い大好きよ」
「匂い……」
「薬品と土と、ネオの匂いが混ざった感じよ」
ネオが微妙に口を歪めるが、イブは朗らかに笑った。イブが切りそろえた白い髪を一房掴んで、ネオに見せる。
「私は、どんな匂いかしら?嗅いでみる?」
「喜んで嗅がせてもらいます」
イブに逆らわないネオはイブの頭頂部に鼻先を押し当てる。芳しい花の香りが鼻孔を喜ばせる。
「他の何をも越えることができない好きな香りです」
「ふふっ、ネオったら。でもネオはもし私が臭くてもそう言いそうね」
「イブが臭いなんてことは空から太陽が落ちるよりありえません」
「それはどんな匂いでも臭いと判定されないということなのかしら?」
「イブは全てが、どうあってもいい匂いですので」
「ネオって盲目だわ」
イブがネオに抱きついたまま顔を上げてそっと目を閉じる。すると、すぐにネオの唇が唇に降って来る。
「イブのためならこの赤い目を喜んで刳り貫けます。目などいりません」
「そんなことをしてはダメよ?私はネオの赤い目が大好きなのだから」
優しく唇を押し当てて、何度も啄み、ネオのキスが獰猛に変わっていく。
ネオがイブを強く抱きしめてイブの唇を貪る。
「んっ、ぁ」
「イブ、大好きです。何よりも可愛い」
イブを抱きしめる腕は苦しいくらいで、キスは息も絶え絶えだ。穏やかなネオがこの瞬間だけは、イブを少しだけ荒っぽく扱う。
その落差がイブのお気に入り。
本能から、イブだけを求められている気がするからだ。
「ふぁ……ネオ、もう……」
ネオのキスに腰が抜けて立っていられなくなったイブを、ネオが抱きしめて支える。
ネオがイブの首筋に顔を押し付けて荒くなった息を整えようと努力した。
「イブの全てが僕を狂わせます。触れるのを止められなくて」
恍惚に満ちた声を出して、甘えるように首筋に顔を埋めるネオの背をイブがぎゅっと抱きしめる。
「ネオってとても可愛いわ!!」
「可愛いはイブのために生まれ存在する言葉ですよ?」
誰も来ない裏庭で存分に大好きを伝えあう。隙あらば二人でくっついていたかった。
ネズミはコロンと腹を天井に向けて無防備に差し出し、人形のように転がった。
「少し苦しかった、かな」
このネズミはもう、二度と動かない。ネオは死んだネズミを持って裏庭に出る。裏庭に穴を掘ってソレを埋めた。
もう何匹目になるだろうか。数えるのも億劫なほどの屍が裏庭の肥料になっている。
だがネオには何の罪悪感もない。イブを苦しませないために他の犠牲は厭わない。
「ネーオ!ただいま!」
薄暗い裏庭で土まみれになっているネオに、そこにいるだけで世界が彩り鮮やかになるイブが正面から抱きついてきた。
「イブ、おかえりなさい」
ネオは土に汚れた手で抱き返すのを躊躇したが、イブがネオの胸に顔をぐりぐり擦りつける。
「汚れてしまいますよ?」
「いいの、いいの!ネオの匂い大好きよ」
「匂い……」
「薬品と土と、ネオの匂いが混ざった感じよ」
ネオが微妙に口を歪めるが、イブは朗らかに笑った。イブが切りそろえた白い髪を一房掴んで、ネオに見せる。
「私は、どんな匂いかしら?嗅いでみる?」
「喜んで嗅がせてもらいます」
イブに逆らわないネオはイブの頭頂部に鼻先を押し当てる。芳しい花の香りが鼻孔を喜ばせる。
「他の何をも越えることができない好きな香りです」
「ふふっ、ネオったら。でもネオはもし私が臭くてもそう言いそうね」
「イブが臭いなんてことは空から太陽が落ちるよりありえません」
「それはどんな匂いでも臭いと判定されないということなのかしら?」
「イブは全てが、どうあってもいい匂いですので」
「ネオって盲目だわ」
イブがネオに抱きついたまま顔を上げてそっと目を閉じる。すると、すぐにネオの唇が唇に降って来る。
「イブのためならこの赤い目を喜んで刳り貫けます。目などいりません」
「そんなことをしてはダメよ?私はネオの赤い目が大好きなのだから」
優しく唇を押し当てて、何度も啄み、ネオのキスが獰猛に変わっていく。
ネオがイブを強く抱きしめてイブの唇を貪る。
「んっ、ぁ」
「イブ、大好きです。何よりも可愛い」
イブを抱きしめる腕は苦しいくらいで、キスは息も絶え絶えだ。穏やかなネオがこの瞬間だけは、イブを少しだけ荒っぽく扱う。
その落差がイブのお気に入り。
本能から、イブだけを求められている気がするからだ。
「ふぁ……ネオ、もう……」
ネオのキスに腰が抜けて立っていられなくなったイブを、ネオが抱きしめて支える。
ネオがイブの首筋に顔を押し付けて荒くなった息を整えようと努力した。
「イブの全てが僕を狂わせます。触れるのを止められなくて」
恍惚に満ちた声を出して、甘えるように首筋に顔を埋めるネオの背をイブがぎゅっと抱きしめる。
「ネオってとても可愛いわ!!」
「可愛いはイブのために生まれ存在する言葉ですよ?」
誰も来ない裏庭で存分に大好きを伝えあう。隙あらば二人でくっついていたかった。
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