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ダンスの後

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ニナは音楽が鳴り続ける広場の端に置かれたベンチに座ってぐったりしていた。


「やり過ぎです、アーサー」


人を集めるために派手なダンスが必要だったのはわかるが、ニナが何回宙を舞ったことか。

ニナのために飲み物を調達に行ったアーサーの帰りを待ちながら、ニナはダンスをふり返る。ついつい口端がにやつく。


(アーサーとダンス、楽しかったなぁ)


ニナが嬉しさを噛みしめていると、上から声がかかった。


「さっきダンスしてた子だ!」

「すっごかったよ!」

「ほ、本当?ありがとう!」


ニナが街の青年たちに声をかけられて、全力で喜んでしまう。だって、アーサーとのダンスを人前でできることなんて全くないのだ。


にこにこ素直に可愛く笑うニナに、青年二人組はうっかり心を奪われる。


「良かったら、俺たちとも踊らない?」

「ダンス教えてよ」

「え、あ、その、少しなら」

「ダメに決まってるでしょ」


ニナの後ろで細い目を妖しく光らせたアーサーに睨まれた青年たちは石のごとく固まった。


((あ、これ声かけちゃいけない相手だった!!))


青年たちはすぐに危機を察した。睨み一つで刃物を首に突きつけられている恐怖を埋め込まれる。


「僕の可愛い子に声かけて生きて帰れると」


アーサーが細い目に殺意を宿らせて一歩出ようとするのを、ニナは押しとどめた。アーサーが怒るのは一年に一度くらいだが、決まってニナが引き金だ。


「あ!アーサー!飲み物ありがとう!あっちで飲みましょう!」


ニナがアーサーの背中をぐいぐい押して広場を脱出する。逃げ出す青年たちをアーサーは笑わない細い目で永遠に睨みつけていた。


「もう、アーサー!これ以上、目立たないでください」

「だって僕のなのに」

「わ、私はアーサーのものではありませんよ」

「は?」


アーサーの声がぐっと下がる。買って来た飲み物を地面に放り出して、ニナの手を握ったアーサーが早足に歩き出した。


ニナは踏んではいけないものを踏んだと気づいたが、もう遅い。


「ちょ、ちょっとアーサー?!」


ニナの制止を聞かずに、アーサーは路地裏を突き進んだ。


   
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