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平民街

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フードローブを深く被ったイブとネオが「平民街」の路地裏に並んで立っている。


「君たちもうちょっと、なんとかならないの?怪しさ満点なんだけど」


ローブに顔を隠す二人の前で、平民服を纏ったアーサーが腕を組んで仁王立ちする。


王族の顔をきちんと知っているものは意外といないものだ。黒髪黒目のアーサーが堂々としていれば平民に紛れることができる。


「どうしようもないわアーサー。だって髪が真っ白なのだから隠さないと」

「聖女様が平民街に……危険過ぎます」


ネオはフードで顔を隠しつつ、ぶつぶつ呟いた。イブがネオの顔を覗き込んで、きょとんと首を傾げる。


「あら、ネオは反対なの?

私はみんなで平民街の市場に行くの、楽しみにしていたのだけれど」

「全力でお守りします」

「庭師君の手の平返しが光より早い」


アーサーがケラケラ笑うのをネオはじっとり睨んだ。事の元凶はこの王子だ。


「本当にお願いいたしますよ、庭師さん!平民街の市場は悪い人も多いですからね!」


アーサーの隣で平民服のニナも腰に手を当ててネオに威勢よく言った。アーサーがなめらかにニナの肩を抱く。


「ニナは当然、僕が守るよ」

「全く、市場に行きたいなんて殿下のお願いには困ったものです」

「まあまあ、ニナだっていい考えだって言っただろう?」


ニナはため息をついてアーサーの口車に乗った自分を今さら軽率に思い始めた。


『聖女と庭師君、デートさせてあげたくない?』


イブの恋を後押ししたいニナはついアーサーの提案に乗ってしまった。


まさか四人で平民街の市場に繰り出すことになるなんて思わなかった。


アーサーは大胆不敵だ。


  
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