ReaL -墓守編-

千勢 逢介

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第三章・血斗

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   Ⅷ


 母親の怒りと悲しみの叫びはいつまでも続いた。彼女の記憶に生々しくこびりついているのは、炎に焼かれ、身もだえする子供たちの断末魔だった。

 なんとしても彼らに復讐をしなくてはならない……それも血で贖う復讐を。
 人間に味わわせるべき苦痛に飢えた両手が、わずかな光のなかできらめく。

 しかし母親は同時に、敵の暴力性を恐れてもいた。特に仲間を救いに駆けつけ、子供たちに火を放ったあの人間に対して。
 ほかの連中からも邪悪な雰囲気を感じ取ることはできたが、あの男から発されるものは数段恐ろしい性質を孕んでいた。

 用心はしなくてはならない。復讐を遂げるには、敵の影を踏まないことがなによりも重要なのだから。
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