ーウクライナの民話ー 片足を怪我した子ガモのお話

みずっち82

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ーウクライナの民話ー 片足を怪我した子ガモのお話

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  昔、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 2人には、子供がいなっかたので、寂しい思いをしていました。
 ある時、おじいさんがおばあさんに言いました。
「これから、キノコ狩りに行こうよ」2人は出かけて行きました。
 おばあさんがキノコを採っていると、草の根っこのところに
 カモの巣を見つけました。巣の中に、子ガモがうずくまっていました。
 おばあさんが、おじいさんに言いました。
「おじいさーん。ちょっと来てよ。すごくきれいなカモがいるよー」
 おじいさんは言いました。「家に連れて帰ろう」
 子ガモを手のひらに乗せてみると、片方の足の骨が折れていました。
 2人は注意深く子ガモを家まで持って来ると、巣をつくって、
 中に柔らかい羽根をしきつめて、そこに子ガモをそっと置きました。
 そして、二人はまた、キノコ狩りに出かけて行きました。
 二人が家に戻って来ました。するとおどろいたことに、家の中は
 きちんと片付いていて、しかも焼きたてのパンやボルシチが
 出来ていました。


                                          
 2人は近所の人に聞きました。
「誰か?見なかった?」
「見たよ。」
「井戸から、娘が水を運んでいたよ。すごくきれいな娘でさ~。
 でも、ちょっと足を引きずっていたよ」
 そこで、おじいさんとおばあさんは、考えて考えました。
「いったい、誰だろう?」
 でも、誰だかさっぱり思いつきません。
 おばあさんがおじいさんに言いました。
「おじいさん。どういうことだか?わかる?」
「分からん。」
「じゃあ。こうしようよ。2人でキノコ狩りに行くふりをしてさ。
 隠れて、誰が水を運んでいるのか、こっそり見てみようよ」
 そして、次の日、おじいさんとおばあさんはキノコ狩りに行く
 ふりをして納屋の後ろにかくれて、家の方を見ていました。
 しばらくすると、天秤棒をかついだ娘がおじいさんとおばあさんの
 家から出てきました。
 それは、それは美しい娘でした。
 でも、すこし、片足を引きずるように歩いていました。
 娘が井戸の方へ行ってしまうと、おじいさんとおばあさんは、
 こっそりと家の中に入って行きました。                       
 そして、巣の中を見ると、連れて来た子ガモはいなくて、羽だけが
 いっぱいありました。
 おじいさんとおばあさんは、カモの巣をストーブの中に
 投げ込みました。巣は燃えてしまいました。
 丁度、その時、水を汲んできた娘が戻ってきました。
 おじいさんとおばあさんを見ると、はっとして、巣の方に
 駆け寄りました。
 巣がなくなっているのを見ると、娘はいきなり泣き出しました。
 おじいさんとおばあさんは、いっしょうけんめい娘をなぐさめました。
「泣かないで、小鳥ちゃん、私たちの娘になって頂戴。
 本当の娘のように、だいじに、だいじにするから」
 娘は言いました。「もしも、おじいさんとおばあさんが、私の巣を
 燃やしたり、私の事をこっそり見たりしなっかたら、
 ずっと一緒に暮らしていたのに。
 でも、もう、一緒に暮らしたくないわ。                                           
 おじいさん。わたしにつむぎ車と紡錘(ぼうすい)を作ってちょうだい。
 私はお別れします」
 おじいさんとおばさんは泣きながら、
「行かないで!」と頼みました。
 おじいさんは、仕方がなく、娘のために、つむぎ車と紡錘(ぼうすい)を
 作ってやりました。
 娘は庭に腰かけてつむぎ始めました。
 その時、突然、子ガモの群れが飛んで来て、娘を見て
 飛びながら歌い始めました。
        エバは どこにいるの?
        ほら、あそこにいるよ。
        きれいに 掃除された庭で
        おじいさんが 作ったベンチに腰かけて
        つむぎ車が 音をたてている
        小さな紡錘(ぼうすい)も 音をたてている
        カタカタ カタカタ と
        娘に羽を1枚づつ 落としましょう
        私たちと 一緒に飛びましょう
                                          
 でも、娘は断った。
 皆は私を見捨てて、遠くへ飛んで行ってしまったわ。
 でも、鳥たちは、羽を1枚づつ 娘に、向けて落として、飛んで行った。
                                              
 2番目の鳥の群れが飛んで来て、歌を歌い始めた。
        エバはどこにいるの?
        ほら、あそこにいるよ。
        きれいに 掃除された庭で
        おじいさんが作ったベンチに腰かけて
        つむぎ車が 音をたてている
        小さな紡錘(ぼうすい)も 音をたてている
        カタカタ カタカタと
        娘に羽を 1枚づつ 落としましょう
        私たちと 一緒に飛びましょう
 でも、娘は断った。
 皆は、私を見捨てて、遠くへ飛んで行ってしまったわ。
 でも、鳥たちは羽を、1枚づつ娘に向けて、落として飛んで行った。

                                          
 3番目の子ガモの群れが飛んで来て、娘を見ていっせいに歌いだした。
         エバは どこにいるの
         ほら あそこにいるよ
         きれいに 掃除された庭で
         おじいさんが 作ったベンチに腰かけて
         つむぎ車 音をたてている                
         小さな紡錘(ぼうすい)も 音をたてている
         カタカタ カタカタと
         みんなで 娘にはねを 1枚づつ 落としましょう
         一緒に飛びましょう
         鳥たちは 羽を 1枚づつ 投げ落としました
 娘は羽で体を覆いました。
 そして、カモになって群れと一緒に飛んで行きました。
 おじいさんとおばあさんは、また2人だけになりました。
            これで おしまい。
               

                                                                                      
                                           
                ウクライナの民話(おとぎ話の木から)
                片足を怪我した子ガモのお話
                翻訳 みずっち82   















                         
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感想 2

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みんなの感想(2件)

Mutukcha
2024.07.11 Mutukcha

ウクライナの話しにも鳥が娘になるのは面白かったです!
またいろいろな国の民話の翻訳を読ませていただきたいですねー。

解除
marie
2024.07.11 marie

せっかく綺麗な娘さんとして役に立つように接してくれたのに、巣を投げ込んでしまって代償が大きすぎましたね。おじいさん、おばあさんの嘆きが目に見えるようです。鶴の恩返しとはまた違う展開がお国柄も表すのでしょうか?面白いですね。

解除

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