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#12 まさかの再開と名酒の香り

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 扉の外から、右目の下に特徴的なヒビのあるドクロは驚いたように声を上げる。光を吸い込むようなそのヒビを見ると、カラスマはより驚いてしまう。

「ヒ、ヒララギ!?」
「お前ここで何してんだ!?まさか…」
「ち、違う違う!」

何やら良からぬ想像をするヒララギに、焦ったように訂正するカラスマ。

「ってか、ここには俺が住んでるんだけど」
「えっ」

どうやらアズサの部屋に訪れたつもりだったらしく、ヒララギは思わず声を漏らしてしまう。

「アズサなら、リビングで飲んでるよ」

そう言いながらカラスマが指をさした先ではアズサがゲキマズ発泡酒を飲んでいる。はじめの内はマズイマズイ言っていた彼女も酒が回ってくると気にならなくなってきたのだろう、もう既に5本目を飲み始めている。

「アズサ、お前んちで飲んでたのかよ…」

ヒララギはため息混じりにそう呟き、続けて邪魔するぞと口にしながら上がってきた。

「お、ヒララギぃ~」

人の家で飲もうと言い出したり発泡酒をがぶ飲みしたりする割に酒に弱いアズサは、既に頬を赤くしている。

「うぃ」

ヒララギはアズサに向かってそれだけ言ってリビングに入ると、リビングに入って胡座あぐらをかいた。

「アズサが呼んだ友達ってヒララギだったのか」
「うん。えぇ、知り合い~?」

若干、呂律ろれつが回らなくなってきたアズサにカラスマは旧友だと説明する。アズサは驚くでもなく

「ふぁー、なるほど~」

と返した。

「じゃあ早速、カンパ…」

言いかけたカラスマは口をつぐむ。自身の文の酒が、既にアズサに飲み尽くされていることに気がついたのだ。

「…あ、ごめ~ん」

それを察したアズサは彼に謝罪するが、酔っているのもありどこかふざけているような感じだ。

「なんだカラスマ、酒ないのか?」

察しの悪いヒララギはそう問う。

「全部、飲まれてた」

カラスマはそう返す。

「ったく、しゃあねぇな」

ヒララギはため息をつき、自身のカバンから大きなビンを取り出す。

「皆で飲もうぜ」

そう言って机に置かれた茶色いビンには“ドグラ・モグラ”のラベルが貼られている。世界でも有名なブランドの酒だ。

「マジ!?」

一瞬にして安っぽい酔いが覚めたアズサは驚愕する。

「いいってことよ」

ヒララギは自慢げな顔でそう言った。カラスマはキッチンからガラスのコップを3つ持ってきて配り、そこにヒララギが酒をつぐ。そして3人はコップを軽くぶつけ、カンという小気味いい音を鳴らす。

「乾杯!」
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