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#8 孤独と旧友
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電車に乗り込んだカラスマは、想像より空いていた車内のイスに腰掛けあたりを見渡す。日曜の昼でもスーツなのは自分くらいなもので、カラスマ以外は大体Tシャツやワンピースなんかを着ている。
(服装で浮いてるだけなんだけど、なんだかとても悲しい…)
幾度となく経験したこの光景だが、この孤独感にはいつまで経ってもなれない。
「なあ、お前…もしかしてカラスマか?」
1人孤独に打ちひしがれていたカラスマの隣に座る男が、カラスマにそう話しかけた。男はドクロ族であり(ドクロ族の車両なので当然だが)、右目の下には特徴的なヒビが入っている。…そして、カラスマはこの男を知っている。
「もしかして、ヒララギか!?」
「おー、よく覚えてんな」
ヒララギは感心したようにそう言う。
「当たり前だろ。誰が友達の名前忘れるってんだよ?」
カラスマがそう返すと、ヒララギはそうかとだけ言って黙ってしまった。会話もなく、ただただ電車に揺られる2人。現れては消え現れては消えを繰り返す摩天楼を眺めるのも、さしてつまらないものではない。一定のリズムでガタン、ゴトンと揺れる感覚にはある種の心地よさも感じる。
『えぇー、次はぁー臣熟ぅー、臣熟ぅー。』
しかし、その心地よさも突如として終わりを迎える。臣熟に着くというアナウンスが流れた直後電車はえげつない急ブレーキをかけたのだ。キツネやタヌキの車両がどうなのかは知らないが、ドクロ族の車両ではこのとき、体の骨が取れてしまう人がいる。カラスマの肋骨も、その例に漏れなかった。沢山のドクロたちの体がバラバラになり混乱する車両内。
「どこだぁー…?お、あった」
電車で通勤しているカラスマは自身の骨に目印をつけていたので、見つけることには手間どらなかった。ひょいっと拾い上げ、肋骨をカチャッとはめる。隣を見ると、ヒララギが電車を出ようと立ち上がっていた。
「お前、骨落としてねぇの?」
自分の骨を探す素振りもなく扉に近づくヒララギに、思わずカラスマはそう問いかける。
「外れにくい体質なんだよ」
振り返ることもせずにヒララギはそう返すと、扉を開き去っていった。
(服装で浮いてるだけなんだけど、なんだかとても悲しい…)
幾度となく経験したこの光景だが、この孤独感にはいつまで経ってもなれない。
「なあ、お前…もしかしてカラスマか?」
1人孤独に打ちひしがれていたカラスマの隣に座る男が、カラスマにそう話しかけた。男はドクロ族であり(ドクロ族の車両なので当然だが)、右目の下には特徴的なヒビが入っている。…そして、カラスマはこの男を知っている。
「もしかして、ヒララギか!?」
「おー、よく覚えてんな」
ヒララギは感心したようにそう言う。
「当たり前だろ。誰が友達の名前忘れるってんだよ?」
カラスマがそう返すと、ヒララギはそうかとだけ言って黙ってしまった。会話もなく、ただただ電車に揺られる2人。現れては消え現れては消えを繰り返す摩天楼を眺めるのも、さしてつまらないものではない。一定のリズムでガタン、ゴトンと揺れる感覚にはある種の心地よさも感じる。
『えぇー、次はぁー臣熟ぅー、臣熟ぅー。』
しかし、その心地よさも突如として終わりを迎える。臣熟に着くというアナウンスが流れた直後電車はえげつない急ブレーキをかけたのだ。キツネやタヌキの車両がどうなのかは知らないが、ドクロ族の車両ではこのとき、体の骨が取れてしまう人がいる。カラスマの肋骨も、その例に漏れなかった。沢山のドクロたちの体がバラバラになり混乱する車両内。
「どこだぁー…?お、あった」
電車で通勤しているカラスマは自身の骨に目印をつけていたので、見つけることには手間どらなかった。ひょいっと拾い上げ、肋骨をカチャッとはめる。隣を見ると、ヒララギが電車を出ようと立ち上がっていた。
「お前、骨落としてねぇの?」
自分の骨を探す素振りもなく扉に近づくヒララギに、思わずカラスマはそう問いかける。
「外れにくい体質なんだよ」
振り返ることもせずにヒララギはそう返すと、扉を開き去っていった。
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