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#2 名付けと休日出勤

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 カラスマが買ってきた生きたマフラー。灰色のそれは飾りの目とクチバシを動かして様々な表情を作る。そしてなんと、思考も会話もお手の物なのだから驚きだ。

「そういえば、名前つけないとなぁ」
「カッコイイ名前にしろよ」

マフラーはカラスマに圧をかける。

「うーん…マフラー…マフラ…マフラさん!」
「…ダッサ」

マフラと名付けられたそいつは冷たい声を洩らす。しかし、その声はカラスマの耳に届かない。うん、いい名前だ!とか抜かしながら首にマフラを巻く。

「…あんまりあったかくない」
「夏だし、それでいいだろ」

そんな会話をするカラスマの携帯が突如、激しく振動する。あまりに激しい揺れにカラスマの肋骨が外れてしまった。

「うわぁぁっ!?はいもしもしぃ!?」

肋骨を拾うより電話に出ることを優先したカラスマは間抜けな声を出す。

『カラスマ、休日出勤な。』

電話の相手は名乗るでもなく、カラスマにそう告げる。そいつはえっと驚くカラスマにそれ以上何か言うこともせず、すぐに電話は切れた。カラスマはとびきり大きなため息をつく。

「はぁ…めんどくせぇー…」
「ま、がんばれよ」
「お前も来いよ!」
「はぁ!?」

そんな受け答えをしながら仕事用のフォーマルな背骨と肋骨、スーツに着替えるカラスマ。最後に夏には合わないマフラを身に着け、玄関の扉を開いた。
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