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-15-『氷温系少女の秘密』
しおりを挟む「あっ、危ねえっ!
やっぱ……起きてたか。
でも、今度のスキルは効いたな……」
壮一は胸を撫で下ろした。
盛り上がった布団の上――シフルの腰の辺りに乗る。
標的は、規則的な寝息を発している。
新スキル『熟睡念波』が効くか効かないかは賭けだったが、成功だ。
依然としてレベル差はあるだろうが、ダイレクトに魔法を浴びせたことも功を奏したかもしれない。
(これでよし、と……
しっかし、この部屋、寒いなぁ……)
ここからが本番だが、意識が奪われるほど部屋の中が寒い。
辺りを見回すと、室内の壁は白い氷がへばりついていた。ベッドのシーツすら、薄っすらと白い霜が降りている。
壮一は自らの矮躯を抱きしめ、身震いした。
「まあ、予定通り『おねしょで恥をかかちゃおう作戦』でいくか……
って、うおっ、ジョッキの水が凍ってじゃん!
マジかよ。どういう室温だよ……」
手に持ったジョッキの外側は、真っ白に曇っていた。
水面にも揺らぎがなくなり、中身は凍りついている。
慌ててジョッキを逆さにし、ぶんぶんと振ったが、凝固した水はまったく落ちてこなかった。
早くも計画が頓挫し、壮一は途方に暮れた。
「うーん。
仕方ない。プランBだ。
家探しをして、脅迫のネタを探すしかないか」
役目を失ったジョッキをサイドボードに置く。
いったん、シフルから距離を取った。
まずはクローゼットを漁り、ハンガーにかけられた服を物色する。
冷気対策か衣服には丁寧に保護カバーがかけられていて、取りだすのに苦労したわりにはろくな成果がなかった。
次に壁際の収納棚。
下着や靴下などを漁っているときは興奮したが、整理整頓がきっちりされていただけに、荒らすのが申し訳なく感じてしまった。
本命の書き物机は――もっとも、つまらない結果だった。
わくわくしながら日記帳など、乙女の秘密を記したものを探したが、あったのは雑然とした文房具ばかりだった。
他には、自己啓発本や会計学についての書籍くらいか。
「いまいちだな……んんっ? これは……ッ!」
何気なくサイドボードを引くと、引きだしの中で棒状の器具がゴロゴロと転がった。壮一は不審に思い、身を乗り出して凝視する。
長短はあるが、男性器に手を加えたような代物――性具だ。
それも一つや二つではない。
ゆうに十本を越えている。
壮一は『ムーンショット』と極太の字で表記されているルナティックな形状のバイブを手に持ち、わなわなと肩を震わせた。
「なっ、何ゆえ、
かような妖物がここに……まさかっ!」
動揺のあまり、言語中枢が江戸時代に逆行した壮一は、ババッと無駄に勢いをつけて眠るシフルの方に振り返った。
実年齢はともかく、ネムエルと相違なく見える容貌。
起きれていれば目力が強烈にあるヤンキー娘だが、すやっている姿にはピュアさ残る少女が――ディルド殿にご執心だったとは。
「馬鹿な!
ふ、婦女子たるものが、
こんな、こんな……愛なき愚物に頼るなど、
まったくの言語道断でござるよ!
拙僧は感心せぬ!
破廉恥、真に破廉恥でござるよっ!」
仏門に帰依した壮一は、ひとしきり嘆くことで落ち着きを取り戻そうとしていた。
肩にあたるマクラの両端部を上げ下げし、大げさに独り芝居を続ける。
やがて、壮一も力尽きて満足したのか、疑り深い視線をシフルに向けた。
「……しっ、しかし、
ネムエルの話が本当なら、
シフルちゃんは男性とお付き合いした経験がないはずでは……?」
ふと、黒光りするディルドが気になった。
全長は十六センチ弱はあり、やや三日月型に反っている。
握りの部分には摩耗があり、若干の使用感が見られた。
(いや、待てよ?
これは、シフルちゃんのあそこにINしたことがある……ということは、
俺がこれを舐め――おっ、おぉっぉおおおおおおおおおお! 砕け散れぇえええええええ!)
おのれの蛮行が導きだす絵面に恐怖した壮一は、ディルドを机の角に叩きつけた。バキィッと乾いた音が響き、ディルドは根元から折れ、竿の部分が床を回転しながら飛んでいった。
「はぁー! はぁー!
はぁぁぁあ……あっ、危なかった。
あ、危うく……俺の男としての尊厳が消し飛ぶところだった。
さすが四魔将。恐るべきトラップだぜ」
興奮冷めやらぬまま、額にかいた汗をぬぐう。
すっきりとした表情には、勝手に私物を破壊した罪意識などかけらもない。
「さて、と……俺とネムエルの不純異性交友を邪魔をしておきながら、
ご自身はポケモンマスターとはな……
よぉっしっ、とにかく弱味は掴めんだぞ。
脅迫の材料として、いくつかもらっておくか」
机の中のアダルトグッズを吟味する。
バイブの数は十三本。ローターが五つ。油でなめした荒縄。目隠しに手かせや足かせなどの拘束具。革のムチやフェザータッチ用のくすぐり棒。果てやアナルビーズまで転がっていた。
「うーん。
シフルちゃん……ちょっとぉ……
エッチ過ぎなーい?
どんだけ、欲求不満なんだよ……」
問いかけても、寝息を立てているシフルは返答などしない。
壮一はサイドボードからベッド際にジャンプした。
シフルの足もとのほうに移動する。
何気なく、かかっている薄いタオルケットを下からめくった。
素足が、ぺろんと露わになる。
なんの変哲もない女の足だ。
だが、生々しい質感を伴っており、健康的な肌色を保っている。
「ほう」
パジャマズボンは穿いていない――劣情がふつふつと煽られる。
高級ワインの蓋を開くような、ウキウキとした気持ちで壮一はシフルを隠している薄布を広げていった。
気分だけは、熟練ソムリエである。
「足は細すぎず、太すぎずで十点満点だな。
しかし、俺の評価は厳しい。
身に着けてる下着もしっかり採点させてもらうぜ……
あれっ? な、ない。
ノーパンだとっ……!?」
股関節までたどり着いたところで、異変に気付く。
焦れったくなった壮一は、タオルケットをばさりと脇に払いのけた。
シフルの全身が、天井の魔法灯が放つ淡い明かりに照らされる。
驚くべきことに水色パジャマの上着は着ているが、下半身はすっぽんぽんだった。
横になりながらも、ディルドを大事そうに胸に抱えている。
「あっ……ちょっと、引くかも……
バイブがディディベア扱いかよ……。
うっ、うーん……これ、やばい状態すぎない?
こんなの人に目撃されてしまったら、俺なら死を選びかねない。
いくら恥を晒すにしろ、限度があるだろ……」
ごくっ、と壮一はつばをのみ込んだ。
よい方に解釈すれば、自慰に及ぼうとしたところで【睡眠魔法】を浴びせてしまったかもしれない。
悪いことをしたと思う反面。
ヤンキー系の美少女の恥ずかしい姿を見れて、得した感もあった。
「てか、股も濡れたままだな……。
室温は恐らく零度以下だろうに、
なんで愛液が凍らないんだろ」
横尻の中心部、押し潰れた女性器は薄膜を張っていた。
下心がそそられた壮一は、シフルの寝顔を窺いながら慎重に手を伸ばし、女性器から沁みだしている愛液を指先ですくい取った。
指の間にねっちょりと絡み、糸も引いた。
冷たいが、粘度も良好だ。
「うーん……
女の子は寝ながらでもオナれるものなのか……?
ひょっとして、俺が知らないだけで……
保健体育で出題されない裏メニューなのか……?」
排出が続いているのだと思い、壮一は女性器の周りを指でなぞった。
壮一は知らなかったが、寒冷地に棲む魚類や動物の中には、血液に不凍タンパクを獲得した生物もいる。氷塊の化身であるシフルがそれらと同質の体液を持っていても、なんら不思議ではないのだ。
「んっ」
(……やべっ!)
うめき声に驚き、壮一は後方に飛び退いて距離を取った。
ベッドの縁に隠れ、頭を覗かせながらも、数分ほど様子見をする。
起きる気配はなく、問題はなさそうだ。
(悪戯しすぎたか……
いや、でも、なんか……
尻がもぞもぞと動いてるな……物足りなさそうな感じ。
指であそこを触ったのが、愛撫になったからか?
やばい。俺の心のおちんちんがむくむくと成長してきた……)
「致し方ない。
例え、死に向かう道だとしても、ゆくか。
『人魔の術』……」
弱味をつかみにきたはずが、邪心から当初の目的を忘れつつある壮一は、なぜか変身ヒーローのようにポーズを取り、マクラから人型に変身した。
視野は広がり、視線は高くなり、感覚器官が変質する。
久方ぶりの五体の具合を確かめるためにジャンプし、膝を折り曲げて屈伸運動をした。
「これはあくまで、
殺されかけた復讐だからセーフ」
肩をぐるぐると回しながら言い訳する。
小ズルい理屈であるが、愛しのネムエルと致す寸前でもあったし、うっぷんは残ってしまっている。
シフルの白無垢の下半身に舐めるように眺めながらも。
今日も今日とて、壮一は欲望に押し流された。
応援ありがとうございます!
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