83 / 87
目標が定まったのならば進撃のみ
獣のように自宅を目指す
しおりを挟む
似合わない!
病院からダンと私は手を繋いで自宅に帰ることになったが、ダンとジュリアンが病院内で服の取り換えを行ってしまったので、ダンは似合わない真っ赤な地に真っ黒な蝶々や悪趣味な薔薇の絵が描かれているキモノローブなるものを纏っている。
私はその時の二人に声をかけるべきだったかもしれない。
ホテルに泊まるつもりのダンの着替え鞄がホテルにあるのでは無くて?と。
でも、黙っていた。
見慣れた兄の全裸に周囲の人達が眼福だと目を輝かせていたからではない。
私は、私の夫となったダンの裸に見惚れていたのだ。
ダンは家にいれば普段着がラフパンツにTシャツ姿ばかりでもあるが、私の前で風呂上がりでも裸に近い格好でふらふらなんてした事は無いという、兄と比べれば聖人ともいえる嗜みのある人なのだ。
そんな彼が次々に服を脱いでいくのである。
あら、まあ、あららら、である。
私の頭にあった全裸で抱き合うモデルの写真の男性部分がかなり修整され、その画像は目にしたダンの引き締まった体に完全に置き換えられている。
「笑い過ぎだよ、君。」
「あら、だって。あなたは兄以上に素敵な人なのに、その兄のローブがとってもちぐはぐに見えて。不思議ね。あなたの顔だって秀でた額にって、とっても貴公子的なのにね。」
まあ!ダンは真っ赤になってしまった。
耳まで真っ赤に染めて、恥ずかしそうに照れるなんて!
私が引き起こした彼の変化が楽しくて、私は彼の腕に自分の腕を絡めた。
「ああ!」
「あら、ごめんなさい。い、いや、だった?」
手を引こうとして、しかし、ダンに絡めていた腕はダンが腕を締め付けた事で逃げられなくなった。
「ダン?」
「悪い。俺は君に触れられると電気が走ったみたいになるんだ。嬉しい、どっきり、きゅん?とにかくびくりとしてしまう。」
「わ、私こそもよ!でも、あなたが触れたところはぜんぶ、ぜんぶ、なんだか温かくて、ええ、いつだってとっても幸せな気持ちになるのよ。って、きゃあ!」
私は旗の気持ちがわかりそうだった。
つまり、ダンが私を私が旗のようにはためいてしまうんじゃないかというぐらいの勢いで引っ張り、ほとんど誘拐に見えるぐらいの乱暴さでタクシーに押し込んでしまったのである。
「急ぐぞ。俺は君を今すぐ抱きしめたい。」
そう言うや彼は私の頭を乱暴に両手で押さえつけ、……私は何もかも消えた様な感じとなった。
私は彼の口づけによって雷に打たれ、彼に塞がれた唇と口中と、そして、優しく撫でつけられる頭皮や髪の毛にしか感覚を持ちえなくなったのだ。
いえ、私の両腕はちゃんとわかっている。
ダンの背中を、髪の毛をまさぐり撫でつけ、もっと彼を自分へと引き込もうと勝手に動いている。
ああ、彼の背中は固いけれどなんて温かいの。
病院からダンと私は手を繋いで自宅に帰ることになったが、ダンとジュリアンが病院内で服の取り換えを行ってしまったので、ダンは似合わない真っ赤な地に真っ黒な蝶々や悪趣味な薔薇の絵が描かれているキモノローブなるものを纏っている。
私はその時の二人に声をかけるべきだったかもしれない。
ホテルに泊まるつもりのダンの着替え鞄がホテルにあるのでは無くて?と。
でも、黙っていた。
見慣れた兄の全裸に周囲の人達が眼福だと目を輝かせていたからではない。
私は、私の夫となったダンの裸に見惚れていたのだ。
ダンは家にいれば普段着がラフパンツにTシャツ姿ばかりでもあるが、私の前で風呂上がりでも裸に近い格好でふらふらなんてした事は無いという、兄と比べれば聖人ともいえる嗜みのある人なのだ。
そんな彼が次々に服を脱いでいくのである。
あら、まあ、あららら、である。
私の頭にあった全裸で抱き合うモデルの写真の男性部分がかなり修整され、その画像は目にしたダンの引き締まった体に完全に置き換えられている。
「笑い過ぎだよ、君。」
「あら、だって。あなたは兄以上に素敵な人なのに、その兄のローブがとってもちぐはぐに見えて。不思議ね。あなたの顔だって秀でた額にって、とっても貴公子的なのにね。」
まあ!ダンは真っ赤になってしまった。
耳まで真っ赤に染めて、恥ずかしそうに照れるなんて!
私が引き起こした彼の変化が楽しくて、私は彼の腕に自分の腕を絡めた。
「ああ!」
「あら、ごめんなさい。い、いや、だった?」
手を引こうとして、しかし、ダンに絡めていた腕はダンが腕を締め付けた事で逃げられなくなった。
「ダン?」
「悪い。俺は君に触れられると電気が走ったみたいになるんだ。嬉しい、どっきり、きゅん?とにかくびくりとしてしまう。」
「わ、私こそもよ!でも、あなたが触れたところはぜんぶ、ぜんぶ、なんだか温かくて、ええ、いつだってとっても幸せな気持ちになるのよ。って、きゃあ!」
私は旗の気持ちがわかりそうだった。
つまり、ダンが私を私が旗のようにはためいてしまうんじゃないかというぐらいの勢いで引っ張り、ほとんど誘拐に見えるぐらいの乱暴さでタクシーに押し込んでしまったのである。
「急ぐぞ。俺は君を今すぐ抱きしめたい。」
そう言うや彼は私の頭を乱暴に両手で押さえつけ、……私は何もかも消えた様な感じとなった。
私は彼の口づけによって雷に打たれ、彼に塞がれた唇と口中と、そして、優しく撫でつけられる頭皮や髪の毛にしか感覚を持ちえなくなったのだ。
いえ、私の両腕はちゃんとわかっている。
ダンの背中を、髪の毛をまさぐり撫でつけ、もっと彼を自分へと引き込もうと勝手に動いている。
ああ、彼の背中は固いけれどなんて温かいの。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

記憶がないなら私は……
しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。 *全4話
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる