愛するあなたを失いたくないけれど、今のままでは辛すぎる

蔵前

文字の大きさ
上 下
72 / 87
さあ、一緒に走り抜けよう

ファストフードには中毒性がある

しおりを挟む
 俺を愛していると言ったはずの男は、俺の部屋の戸口で座り込み、俺への情熱を失ったかのような物言いをし始めた。

「君は――。俺としたくなくなったのなら、帰っていいよ。」

「そうじゃ無いでしょう!俺が言いたいのは、俺はあなたに全てを見せてもらいたいのに、あなたは俺に自分を隠してばかりだって言っているんです。」

 俺は自分が綺麗にしたばかりのベッドを見つめ、それから意味がわからないことを言い出したメイヤーを見返した。

「俺は肛門や玉袋の筋まで君に見せて、そうだ、おしっこも目の前でさせられたよね。で、今だって君としようとベッドを綺麗にした!確かに君に暴かれたことばかりだと言ってもいいけど、俺はそんなに君に隠し事はしていないよ!この間までは副官席に座る真面目な邪魔者ぐらいだったもの!」

「あなたは本気で酷い!」

 メイヤーは反射的に叫び返し、だが、そのすぐあとに自分の口を右手で塞ぎ、俺に仕舞ったという顔を見せるどころか笑い泣きをし始めた。

「どうしたの?」

「お、俺があなたに毎日持って行ったコーヒー。あなたには迷惑だったのですよね。い、今もあれが嫌いだと俺に一言も言ってくれないのは、やっぱり俺がどうでも良いからですか?」

 俺は腕を組んで、何のコーヒーなのかと首を傾げた。

「ねえ、君が俺に持って来たのはヘーゼルナッツ風味のコーヒーだけだよね?」

「ええ!安い豆を香料で誤魔化しただけのコーヒーですよ!そ、そんなものをあなたが飲むわけ無いって、アークロイド様がおっしゃっていました!」

 俺はベッドから降りるとメイヤーにかがみこみ、メイヤーを引っ張り上げるようにして俺に引き寄せて、俺を非難しながらも俺になすがままとなっている彼の唇に口づけた。
 俺からの濃厚なキスにメイヤーの手は自然と俺の身体をまさぐり始め、そのうちに俺の期待通りにメイヤーは俺を俺が綺麗にしたベッドに転がした。

「あなたは俺とセックスがしただけですか?」

「そうだな、濃厚なのを頼む。今だから言うけどね、本当はチョコレートシロップもあのヘーゼルナッツに加えて欲しいと思っていたんだ。」

 メイヤーは俺の胸に顔を埋めて笑い出し、しかし、彼の手は俺の下腹部へと伸びて俺を喜ばし始めている。

「そうだ、早く俺にしてくれ。俺はジャンクなものもファストなものも、実は魅力的だと感じているんだ。それらは美味しくて中毒性があるだろう?」

「最高だ!あなたは淫靡な堕天使だ。そんなあなたがお望みならば、俺はあなたのジャンクでファストな肉棒そのものになりますよ。」

 俺の下はメイヤーの指を受けて簡単に開いて柔らかくなっており、メイヤーはそんな俺の身体の状態を知ったからか、俺の望むようにすぐさまそこに彼の物を穿ってきた。
 俺は体中が痺れる電撃を受けた様にして身を逸らせ、俺にさらに腰を打ち付けて来たメイヤーの首に両腕を回した。

「ぜん、前言は取り消す。ファストな部分は忘れてくれ。」

「了解です。愛する人。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

【完結】望んだのは、私ではなくあなたです

灰銀猫
恋愛
婚約者が中々決まらなかったジゼルは父親らに地味な者同士ちょうどいいと言われ、同じ境遇のフィルマンと学園入学前に婚約した。 それから3年。成長期を経たフィルマンは背が伸びて好青年に育ち人気者になり、順調だと思えた二人の関係が変わってしまった。フィルマンに思う相手が出来たのだ。 その令嬢は三年前に伯爵家に引き取られた庶子で、物怖じしない可憐な姿は多くの令息を虜にした。その後令嬢は第二王子と恋仲になり、王子は婚約者に解消を願い出て、二人は真実の愛と持て囃される。 この二人の騒動は政略で婚約を結んだ者たちに大きな動揺を与えた。多感な時期もあって婚約を考え直したいと思う者が続出したのだ。 フィルマンもまた一人になって考えたいと言い出し、婚約の解消を望んでいるのだと思ったジゼルは白紙を提案。フィルマンはそれに二もなく同意して二人の関係は呆気なく終わりを告げた。 それから2年。ジゼルは結婚を諦め、第三王子妃付きの文官となっていた。そんな中、仕事で隣国に行っていたフィルマンが帰って来て、復縁を申し出るが…… ご都合主義の創作物ですので、広いお心でお読みください。 他サイトでも掲載しています。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

出生の秘密は墓場まで

しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。 だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。 ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。 3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。

処理中です...