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決戦の火蓋は落された もう後退は許されない
妻に何が起きたのか
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昨日の失敗は昨日の失敗だ。
戦術は常に一つではない。
失敗すればまた違う方法と、いくつもの戦略と戦術を有能な兵士は立てているものなのだ。
俺はそう思い直すと、朝から軍服を引き出してそれに袖を通した。
いつもは出勤ギリギリまでラフな格好で過ごし、本当にギリギリになってズボンとシャツだけで家を飛び出すというだらしなさだった。
ジュリアンの事をだらしないなんて言えないな。
彼は日常生活はあんなだが、家を出る時に上着のボタンが止まっていないという事など無い。
そして、ジュリアンの軍服姿が神々しいと思い返しながら、自分だって軍服姿の時は同僚や一般人問わず女性から熱い視線を浴びた事だってあるだろうと自負していての今のこの格好だろうと自分を奮い立たせた。
つまり、俺は制服という力を借りてティナを落とそうと考えたのである。
「さあ、行くぞ。」
俺は部屋を一歩出て、自分の戦術が失敗していたとその場で認めた。
硬い制服ズボンでは、不意なる俺のとんがり状態をあからさまにしてしまう危険性を知ったのだ。
「ティナ!どうしたんだ!その格好は!誰だ!君にそんな格好を薦めたのは!」
声を荒げたのは、彼女の格好が俺の好み真っただ中だったからである。
卵型の美しい輪郭は、緩く結い上げられた蜂蜜色の髪によって際立たせられている。
また、今日のメイクはまるで女性士官のようだ。
ブラウンで目元の陰影を濃くし、口元は少々赤みが強いだけのベージュという、けばけばしくない仕事向きの化粧であるが、そこが好感が持てる上に彼女を大人びて見せていた。
そんな彼女が纏うものは、真っ白のブラウスとミニタイトスカートだった。
シフォンシャツは袖が大きくゆったりとしているが、その代わりに胴部分は体に沿ったラインを見せるという清楚でいながら挑戦的だ。また、紺色のシンプルなミニタイトスカートは彼女のお尻の形がよくわかるという危険極まりないものなのである。
俺は今すぐに彼女がタイトスカートの下に履いているのが、パンティストッキングなのかガーター留めストッキングなのか確認しなければいけないという使命感に襲われたほどだ。
「あ、ごめんなさい。に、似合わなかった?」
あんなに花爛漫だった彼女は俺の怒声のせいか、しまったという悲しそうな表情を作り俺から顔を背けた。
「ちがう、ああ、ちがうよ!」
俺はこの時ほど大柄な自分を嬉しく思った事はない。
俺の不用意な言葉で傷ついた彼女が自室に逃げ込む前に、俺は彼女を腕に抱いて捕える事が出来たのである。
捕えた次はどうするのか、という危険な問題もあるが、とりあえず、ティナを傷つけたことは謝らねばいけないだろう。
「ごめん、ティナ。ええと、その服は似合うよ。似合い過ぎて吃驚して騒いでしまった。」
「え、ああ、そうなの?いやだったのかなって、あの。」
俺の腕の中でティナははにかみ、俺は彼女の可愛らしさに胸が締め付けられるようだ。
「い、いやじゃない。あの、あのさ、ああ!俺は今日は半休が無くなっていたんだ!」
本当は、今すぐそのタイトスカートを捲り上げたい、なんだ。
今日は軍服を着ていて良かったと思いながら、俺はティナの頬にキスをするや彼女を手放して駆け出していた。
外へ。
今日は午前休みの癖に!
だってあのまま家にいては駄目だろう!
恋をしてもらう前なのに、今の俺はティナを押し倒したいのだから!
戦術は常に一つではない。
失敗すればまた違う方法と、いくつもの戦略と戦術を有能な兵士は立てているものなのだ。
俺はそう思い直すと、朝から軍服を引き出してそれに袖を通した。
いつもは出勤ギリギリまでラフな格好で過ごし、本当にギリギリになってズボンとシャツだけで家を飛び出すというだらしなさだった。
ジュリアンの事をだらしないなんて言えないな。
彼は日常生活はあんなだが、家を出る時に上着のボタンが止まっていないという事など無い。
そして、ジュリアンの軍服姿が神々しいと思い返しながら、自分だって軍服姿の時は同僚や一般人問わず女性から熱い視線を浴びた事だってあるだろうと自負していての今のこの格好だろうと自分を奮い立たせた。
つまり、俺は制服という力を借りてティナを落とそうと考えたのである。
「さあ、行くぞ。」
俺は部屋を一歩出て、自分の戦術が失敗していたとその場で認めた。
硬い制服ズボンでは、不意なる俺のとんがり状態をあからさまにしてしまう危険性を知ったのだ。
「ティナ!どうしたんだ!その格好は!誰だ!君にそんな格好を薦めたのは!」
声を荒げたのは、彼女の格好が俺の好み真っただ中だったからである。
卵型の美しい輪郭は、緩く結い上げられた蜂蜜色の髪によって際立たせられている。
また、今日のメイクはまるで女性士官のようだ。
ブラウンで目元の陰影を濃くし、口元は少々赤みが強いだけのベージュという、けばけばしくない仕事向きの化粧であるが、そこが好感が持てる上に彼女を大人びて見せていた。
そんな彼女が纏うものは、真っ白のブラウスとミニタイトスカートだった。
シフォンシャツは袖が大きくゆったりとしているが、その代わりに胴部分は体に沿ったラインを見せるという清楚でいながら挑戦的だ。また、紺色のシンプルなミニタイトスカートは彼女のお尻の形がよくわかるという危険極まりないものなのである。
俺は今すぐに彼女がタイトスカートの下に履いているのが、パンティストッキングなのかガーター留めストッキングなのか確認しなければいけないという使命感に襲われたほどだ。
「あ、ごめんなさい。に、似合わなかった?」
あんなに花爛漫だった彼女は俺の怒声のせいか、しまったという悲しそうな表情を作り俺から顔を背けた。
「ちがう、ああ、ちがうよ!」
俺はこの時ほど大柄な自分を嬉しく思った事はない。
俺の不用意な言葉で傷ついた彼女が自室に逃げ込む前に、俺は彼女を腕に抱いて捕える事が出来たのである。
捕えた次はどうするのか、という危険な問題もあるが、とりあえず、ティナを傷つけたことは謝らねばいけないだろう。
「ごめん、ティナ。ええと、その服は似合うよ。似合い過ぎて吃驚して騒いでしまった。」
「え、ああ、そうなの?いやだったのかなって、あの。」
俺の腕の中でティナははにかみ、俺は彼女の可愛らしさに胸が締め付けられるようだ。
「い、いやじゃない。あの、あのさ、ああ!俺は今日は半休が無くなっていたんだ!」
本当は、今すぐそのタイトスカートを捲り上げたい、なんだ。
今日は軍服を着ていて良かったと思いながら、俺はティナの頬にキスをするや彼女を手放して駆け出していた。
外へ。
今日は午前休みの癖に!
だってあのまま家にいては駄目だろう!
恋をしてもらう前なのに、今の俺はティナを押し倒したいのだから!
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