47 / 87
泥まみれでも明日へと進むべき
開放されたのか鎖を付けられたのか
しおりを挟む
「俺はちゃんと解放されて外を歩けるんだね。」
「あなたは!当たり前でしょう。俺はあなたの心も体も傷つけることなんかできない男ですよ。」
真面目顔で言い切ったメイヤーを、俺はあきれ顔で見返すしか出来なかった。
手錠を嵌めて変態的な行為を強要し、俺の心と肉体を粉々にしたのはこの目の前のメイヤーという男では無かっただろうか。
「さあ、今晩はカーセックスはしませんから、安心して車に乗って下さい。」
俺はメイヤーに腰を押され、しかし不快感を感じるよりもメイヤーの手の感触にほんの数十分前の行為の快感を思い出して腰がぞわっとした。
俺は慌てた様に助手席に乗り込み、けれども余裕はまだあるという顔を作って正面を向いた。
しばし後に運転席にメイヤーが乗り込んできた。
「シートベルトを締めていませんね。」
「些末な仕事は君のモノだからな。」
「ハハハ!俺はあなたのそんな所が好きですよ!」
メイヤーは身を乗り出して俺にシートベルトを装着させると、俺の首筋をなぞってそのまま俺の唇にキスをした。
「君の性欲は留まることを知らないな。」
「あなたを愛しているからです。俺のする事が嫌なら、あなたが俺に命令をすればいいのですよ。俺は何でも言う事を聞きます。消えろ、という命令以外は。」
確かに、トイレで俺がイったあと、勿論メイヤーも俺を追いかけるようにして俺を使ってイったが、彼は俺の言うこと全て受け入れた。
体を洗いたい、一人で。
どうぞ。
家に帰りたい。
お送りします、服は好きなのを着てください。
そうして案内された彼のウォーキングクローゼットだったが、中にある服は全てハイブランドのものであり、悔しい事に俺から見ても趣味の良いものばかりだったと思い出した。
俺はその中の柔らかな生地のパンツとトレーナーを引き出したが、彼が差し出した下着が自分が愛用するメーカの新品だったと思い出した事で、嫌な予感が胸に沸いた。
服にはタグなどついていないが、どれも新品であったと気が付いたからだ。
「服をありがとう。次の出勤日までにはクリーニングに出して返すよ。」
「いいえ。この中の服はどれもあなたの為に俺が買ったものです。あなたが着たらって。あなたが選んで着てくれるならば、これ以上嬉しい事はありません。」
自宅に帰ったらまずこの服を捨てる事、俺は頭の中にそうメモをした。
そんな俺の思考を読んだように、メイヤーは若々しい声で大笑いした。
俺は彼から顔を逸らして窓の外を見る事にし、もともと近所だった事もあり五分もしないで車は俺の部屋があるアパルトメントの地下駐車場に停車された。
「歩けますか?」
「当り前だ。」
俺は車から飛び出すように降りて、しかし、一歩踏み出した所で崩れ落ちた。
膝がぐにゃぐにゃになっているかのようなのだ。
「歩けていたのに。」
「俺が腰を支えていましたから。明日はゆっくり過ごしてくださいね。」
「今日だってゆっくり過ごしたかったよ。」
俺はメイヤーに引き上げられ、まるで恋人が寄りそうにして腰を支えられた。
「部屋まで今度は送らせてください。」
「嫌だと言ったら?」
メイヤーは俺の右耳に息を吹きかけるようにして囁いた。
「次はあなたを家に帰さない。」
俺が君の家に二度と行かなければ済む話でしょう、と、俺がこのストーカーに言い切れないのが怖い所だ。
「あなたは!当たり前でしょう。俺はあなたの心も体も傷つけることなんかできない男ですよ。」
真面目顔で言い切ったメイヤーを、俺はあきれ顔で見返すしか出来なかった。
手錠を嵌めて変態的な行為を強要し、俺の心と肉体を粉々にしたのはこの目の前のメイヤーという男では無かっただろうか。
「さあ、今晩はカーセックスはしませんから、安心して車に乗って下さい。」
俺はメイヤーに腰を押され、しかし不快感を感じるよりもメイヤーの手の感触にほんの数十分前の行為の快感を思い出して腰がぞわっとした。
俺は慌てた様に助手席に乗り込み、けれども余裕はまだあるという顔を作って正面を向いた。
しばし後に運転席にメイヤーが乗り込んできた。
「シートベルトを締めていませんね。」
「些末な仕事は君のモノだからな。」
「ハハハ!俺はあなたのそんな所が好きですよ!」
メイヤーは身を乗り出して俺にシートベルトを装着させると、俺の首筋をなぞってそのまま俺の唇にキスをした。
「君の性欲は留まることを知らないな。」
「あなたを愛しているからです。俺のする事が嫌なら、あなたが俺に命令をすればいいのですよ。俺は何でも言う事を聞きます。消えろ、という命令以外は。」
確かに、トイレで俺がイったあと、勿論メイヤーも俺を追いかけるようにして俺を使ってイったが、彼は俺の言うこと全て受け入れた。
体を洗いたい、一人で。
どうぞ。
家に帰りたい。
お送りします、服は好きなのを着てください。
そうして案内された彼のウォーキングクローゼットだったが、中にある服は全てハイブランドのものであり、悔しい事に俺から見ても趣味の良いものばかりだったと思い出した。
俺はその中の柔らかな生地のパンツとトレーナーを引き出したが、彼が差し出した下着が自分が愛用するメーカの新品だったと思い出した事で、嫌な予感が胸に沸いた。
服にはタグなどついていないが、どれも新品であったと気が付いたからだ。
「服をありがとう。次の出勤日までにはクリーニングに出して返すよ。」
「いいえ。この中の服はどれもあなたの為に俺が買ったものです。あなたが着たらって。あなたが選んで着てくれるならば、これ以上嬉しい事はありません。」
自宅に帰ったらまずこの服を捨てる事、俺は頭の中にそうメモをした。
そんな俺の思考を読んだように、メイヤーは若々しい声で大笑いした。
俺は彼から顔を逸らして窓の外を見る事にし、もともと近所だった事もあり五分もしないで車は俺の部屋があるアパルトメントの地下駐車場に停車された。
「歩けますか?」
「当り前だ。」
俺は車から飛び出すように降りて、しかし、一歩踏み出した所で崩れ落ちた。
膝がぐにゃぐにゃになっているかのようなのだ。
「歩けていたのに。」
「俺が腰を支えていましたから。明日はゆっくり過ごしてくださいね。」
「今日だってゆっくり過ごしたかったよ。」
俺はメイヤーに引き上げられ、まるで恋人が寄りそうにして腰を支えられた。
「部屋まで今度は送らせてください。」
「嫌だと言ったら?」
メイヤーは俺の右耳に息を吹きかけるようにして囁いた。
「次はあなたを家に帰さない。」
俺が君の家に二度と行かなければ済む話でしょう、と、俺がこのストーカーに言い切れないのが怖い所だ。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
記憶がないなら私は……
しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。 *全4話
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる