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落とし穴はどこにでもある
優しすぎる、あなた
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助けなければ良かったと言われ、俺は心臓がひっくり返りそうになった。
後日仕返しに来たあの二人、返り討ちどころかひん剥いた恥ずかしい姿を写真に撮って脅した、そんな所業がバレていたのかととても焦った。
しかし目の前のジュリアンは天使だと俺が考える通りに天使そのもので、俺の口先に簡単に騙され、俺への警戒心さえも解いている表情となった。
「すまないね。同じように辛いのに、君を楽にしてあげることは出来ない。でも、今度はそのムール貝を食べさせてくれ。イカも。」
彼は俺に何度突っ込まれて酷い目に遭っているんだろうかと俺こそ考え、そんな自分の行動を少しでも謝罪したいとジュリアンの言う通りのものを口に運んで差し上げる事に集中することにした。
この食べさせる行為も、俺には実にセックスのようで楽しいのである。
形の良いジュリアンの唇に俺はフォークで愛撫するようにしてパスタを運び、彼はそれをちゅるっと吸って口にほおばる。
俺のものを舐める時はそんな風に音を立ててくれるのかな?
「何をじっと見ているんだ。エビはもうないのか?」
「申し訳ありません。今度はあなたの為にソフトシェルクラブの揚げ春巻きを作って差し上げます。カニを丸ごと春巻きの皮でくるんで揚げるんです。」
ジュリアンは無意識だろうが、チロっと舌を出して下唇を舐めた。
ああ、なんと可愛らしく魅力的なのだ。
色白の肌に青い毛布でくるんだ彼は赤ん坊のように清純に見えるのに、今のような無意識のささやかな所作で俺を彼は煽り立てる。
俺は彼の体力を取り戻し次第もう一戦したいと、完全に欲望で燃え盛っているという有様だ。
いや、彼を前にして俺の欲望は留まることを知らないのだ。
彼がこの世から消えたら、俺は何も考えずに命を絶つだろう。
「今からソフトクラブを買って来ましょうか?今日オープンした高級食材店ならばきっと手に入ると思いますよ。」
「ありがとう。いや、今日はいい。それに、ああ、もうパスタもいいよ。全部は食べられなかったな。悪かった。」
あなたが謝る必要など無いですよ、と、行儀のよすぎる子爵家のお坊ちゃまに俺は涙が出そうなほどに追い詰められていた。
彼の内面の美しさのせいで、自分の浅ましさが浮き彫りにされ過ぎる、と。
「いえ。昨日の今日ですからね。食べられないのも仕方がありません。ジェラートもありますよ。いかがですか?」
「ああ、素敵だね。でも、いいかな。起き上がって食べる気力もない。眠いんだ。眠くて堪らない。」
言葉通りにジュリアンは俺の目の前でガクッと意識を失った。
規則正しい寝息に俺は安心しながら、彼を腕に抱え込んで抱き上げた。
「あなたが目覚めたらすぐに続きをしましょう。」
後日仕返しに来たあの二人、返り討ちどころかひん剥いた恥ずかしい姿を写真に撮って脅した、そんな所業がバレていたのかととても焦った。
しかし目の前のジュリアンは天使だと俺が考える通りに天使そのもので、俺の口先に簡単に騙され、俺への警戒心さえも解いている表情となった。
「すまないね。同じように辛いのに、君を楽にしてあげることは出来ない。でも、今度はそのムール貝を食べさせてくれ。イカも。」
彼は俺に何度突っ込まれて酷い目に遭っているんだろうかと俺こそ考え、そんな自分の行動を少しでも謝罪したいとジュリアンの言う通りのものを口に運んで差し上げる事に集中することにした。
この食べさせる行為も、俺には実にセックスのようで楽しいのである。
形の良いジュリアンの唇に俺はフォークで愛撫するようにしてパスタを運び、彼はそれをちゅるっと吸って口にほおばる。
俺のものを舐める時はそんな風に音を立ててくれるのかな?
「何をじっと見ているんだ。エビはもうないのか?」
「申し訳ありません。今度はあなたの為にソフトシェルクラブの揚げ春巻きを作って差し上げます。カニを丸ごと春巻きの皮でくるんで揚げるんです。」
ジュリアンは無意識だろうが、チロっと舌を出して下唇を舐めた。
ああ、なんと可愛らしく魅力的なのだ。
色白の肌に青い毛布でくるんだ彼は赤ん坊のように清純に見えるのに、今のような無意識のささやかな所作で俺を彼は煽り立てる。
俺は彼の体力を取り戻し次第もう一戦したいと、完全に欲望で燃え盛っているという有様だ。
いや、彼を前にして俺の欲望は留まることを知らないのだ。
彼がこの世から消えたら、俺は何も考えずに命を絶つだろう。
「今からソフトクラブを買って来ましょうか?今日オープンした高級食材店ならばきっと手に入ると思いますよ。」
「ありがとう。いや、今日はいい。それに、ああ、もうパスタもいいよ。全部は食べられなかったな。悪かった。」
あなたが謝る必要など無いですよ、と、行儀のよすぎる子爵家のお坊ちゃまに俺は涙が出そうなほどに追い詰められていた。
彼の内面の美しさのせいで、自分の浅ましさが浮き彫りにされ過ぎる、と。
「いえ。昨日の今日ですからね。食べられないのも仕方がありません。ジェラートもありますよ。いかがですか?」
「ああ、素敵だね。でも、いいかな。起き上がって食べる気力もない。眠いんだ。眠くて堪らない。」
言葉通りにジュリアンは俺の目の前でガクッと意識を失った。
規則正しい寝息に俺は安心しながら、彼を腕に抱え込んで抱き上げた。
「あなたが目覚めたらすぐに続きをしましょう。」
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