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後退ばかりの愛される男
親友でしかない男
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俺とダンが使ってる部屋は、夫と妻の部屋、というものとなる。
よって互いの部屋は、共通のバスルームで繋がれているという造りである。
俺を担いだダンは俺の部屋に我が物顔で入り込み、そこで俺の服を脱がせようと一瞬考えたようだが、それはしないでそのままバスルームへと進んだ。
俺の服は俺による吐しゃ物の異臭が物凄いのだ。
「ああ、キスしながら脱がせてくれないんだ?」
「キスしたら脱がせられないだろ、馬鹿。もう、こんなになって、大丈夫なのか?ほら、腕を抜いてくれ。」
ダンの口調は乱暴だが、彼が俺を傷つけたことは一度もなく、俺はダンに叱られダンの成すがままになりながら、そしてほとんどダンの胸板に寄りかかるようにして服を彼に脱がされていった。
「俺はこんなに綺麗な体をしているのに、ダン様は俺を小学生のように扱う。」
「それじゃあ大人になりなさいよ。君はお酒が弱いのに、どうしてこんな飲み方ばかりするんだよ。」
俺は額にチュっとキスをされた。
「はあ?」
よろめいた俺はそのまま抱き上げられ、いささか乱暴に湯が溜まり切っていないバスタブに漬け込まれた。
「ダン、額にキスって。」
「君がキスって騒ぐからでしょうが!」
「はああ。子ども扱いだねぇ。俺が子供じゃあ、ティナは赤ちゃんか。そうか、やっぱり君は赤ちゃんが好きという、ああ、ロリコンだったのかあ。」
「ば、ばばばか!ち、違うよ!」
真っ赤になったダンが可愛らしく、俺はもう少し彼を揶揄いたかったが、彼はもうティナのものになったのだと自分の身体を見下ろした。
男でしかない体だ。
ダンは完全に異性愛者で、俺に恋をするはずは無いのだ。
俺は大きく息を吐き、バスタブに頭を乗せ上げた。
湯は温かく、昨夜からそういえば一睡もしていないかもしれないと目を閉じた。
気絶はしていたようだが、寝たという感覚は無い。
下腹部はまだ熱を持ってずきずきと鈍痛を俺に与え、体は自分のものじゃないような程に重く気怠いのである。
「大丈夫か!そんなに飲んだのか!」
ダンが叫び声をあげながら湯船に横たわる俺を覗き込んだ。
酔いはとっくに醒めていて、俺が翻弄されているのは昨夜の性行為の残り香だよ、と言ってやろうかとしたところで、俺はダンに抱きかかえられた。
俺は反射的にダンにしがみ付き、それだけでなく、この鈍感な愛すべき男が憎らしいと湯船の中に引きずり込んでしまった。
「わあ!」
ざっぱーんと大量の湯が四方八方へと飛び散り、濡れネズミ、いや、濡れそぼったイノシシなダンは俺の上に重なっている。
「やばい。お前を湯船から抱き上げるには人手が足りなかったな。メイヤーの前でいい先輩ぶるんじゃなかったな。」
どこまでも鈍感な馬鹿野郎め。
「本当にな。ようやく口説き落としたアロイス君に介抱してもらおうと頑張ったのに、ああ、お前のせいで台無しだよ。」
「だったらさ、ホテルにでも行けば良かっただろ。」
「ハハ、お前らは新婚で昨夜は初夜だ。部屋から出てこないと思ったんだよ。」
俺からあからさまに顔を背けたどころか、耳まで真っ赤に染め、その上、珍しいぐらいに悩んでいるという表情を作った。
俺はダンの首筋に顔を摺り寄せた。
どうしてお前は俺が思うように動いてくれないのだ。
どうして俺がお前を思い切れない振る舞いしかしてくれないのだ。
俺はお前にこんなにも愛して欲しいのに、愛を返せないんだったら俺を冷たく思い切ってくれればいいのに。
「どうした?何をして欲しいって?」
俺は自分の想いを声を出していたか?
咄嗟にダンの表情に俺への嫌悪感が出ていないかと捜し、ダンの顔に何の感情どころか俺への心配しか見えなかった。
「洗ってくれっていったのさ。体を洗ってくれ。洗ってくれるんだろう?」
よって互いの部屋は、共通のバスルームで繋がれているという造りである。
俺を担いだダンは俺の部屋に我が物顔で入り込み、そこで俺の服を脱がせようと一瞬考えたようだが、それはしないでそのままバスルームへと進んだ。
俺の服は俺による吐しゃ物の異臭が物凄いのだ。
「ああ、キスしながら脱がせてくれないんだ?」
「キスしたら脱がせられないだろ、馬鹿。もう、こんなになって、大丈夫なのか?ほら、腕を抜いてくれ。」
ダンの口調は乱暴だが、彼が俺を傷つけたことは一度もなく、俺はダンに叱られダンの成すがままになりながら、そしてほとんどダンの胸板に寄りかかるようにして服を彼に脱がされていった。
「俺はこんなに綺麗な体をしているのに、ダン様は俺を小学生のように扱う。」
「それじゃあ大人になりなさいよ。君はお酒が弱いのに、どうしてこんな飲み方ばかりするんだよ。」
俺は額にチュっとキスをされた。
「はあ?」
よろめいた俺はそのまま抱き上げられ、いささか乱暴に湯が溜まり切っていないバスタブに漬け込まれた。
「ダン、額にキスって。」
「君がキスって騒ぐからでしょうが!」
「はああ。子ども扱いだねぇ。俺が子供じゃあ、ティナは赤ちゃんか。そうか、やっぱり君は赤ちゃんが好きという、ああ、ロリコンだったのかあ。」
「ば、ばばばか!ち、違うよ!」
真っ赤になったダンが可愛らしく、俺はもう少し彼を揶揄いたかったが、彼はもうティナのものになったのだと自分の身体を見下ろした。
男でしかない体だ。
ダンは完全に異性愛者で、俺に恋をするはずは無いのだ。
俺は大きく息を吐き、バスタブに頭を乗せ上げた。
湯は温かく、昨夜からそういえば一睡もしていないかもしれないと目を閉じた。
気絶はしていたようだが、寝たという感覚は無い。
下腹部はまだ熱を持ってずきずきと鈍痛を俺に与え、体は自分のものじゃないような程に重く気怠いのである。
「大丈夫か!そんなに飲んだのか!」
ダンが叫び声をあげながら湯船に横たわる俺を覗き込んだ。
酔いはとっくに醒めていて、俺が翻弄されているのは昨夜の性行為の残り香だよ、と言ってやろうかとしたところで、俺はダンに抱きかかえられた。
俺は反射的にダンにしがみ付き、それだけでなく、この鈍感な愛すべき男が憎らしいと湯船の中に引きずり込んでしまった。
「わあ!」
ざっぱーんと大量の湯が四方八方へと飛び散り、濡れネズミ、いや、濡れそぼったイノシシなダンは俺の上に重なっている。
「やばい。お前を湯船から抱き上げるには人手が足りなかったな。メイヤーの前でいい先輩ぶるんじゃなかったな。」
どこまでも鈍感な馬鹿野郎め。
「本当にな。ようやく口説き落としたアロイス君に介抱してもらおうと頑張ったのに、ああ、お前のせいで台無しだよ。」
「だったらさ、ホテルにでも行けば良かっただろ。」
「ハハ、お前らは新婚で昨夜は初夜だ。部屋から出てこないと思ったんだよ。」
俺からあからさまに顔を背けたどころか、耳まで真っ赤に染め、その上、珍しいぐらいに悩んでいるという表情を作った。
俺はダンの首筋に顔を摺り寄せた。
どうしてお前は俺が思うように動いてくれないのだ。
どうして俺がお前を思い切れない振る舞いしかしてくれないのだ。
俺はお前にこんなにも愛して欲しいのに、愛を返せないんだったら俺を冷たく思い切ってくれればいいのに。
「どうした?何をして欲しいって?」
俺は自分の想いを声を出していたか?
咄嗟にダンの表情に俺への嫌悪感が出ていないかと捜し、ダンの顔に何の感情どころか俺への心配しか見えなかった。
「洗ってくれっていったのさ。体を洗ってくれ。洗ってくれるんだろう?」
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