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愛を伴い夜が明けるまで何歩進めるかな?
特別じゃない人間達
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信じられないが、仕事をきっちりこなすメイヤーは、勝ち取った一晩だけの情事にきっちりと採算を合わせて来た。
奴は彼が思う駄賃を俺から奪えるまで、俺を解放することを拒むかのように自分がイクことを押さえているようでもあった。
俺はメイヤーの攻撃に情けなくも途中で何度か気を失い、何度もメイヤーによる攻撃の刺激によって目を覚まさせられた。
最後にはメイヤーが望む正常位で突かれている最中という情けないものだったが、俺はその体勢に抗議するどころか情けが欲しいという具合にメイヤーにしがみ付いているという有様だ。
「あなたが嫌いな俺にしがみ付いていますよ。」
「煩い、黙れ、お前は!あ、はあ。」
イクという感覚は、俺の人格さえも破壊する爆発である。
俺は何度もイカされ、俺は大海原で翻弄される小舟のような有様で、メイヤーにしがみ付いていなければそのまま沈んでしまいそうなのだ。
「ははは。いいんですよ。もっとしがみ付いてください。愛しています。あなたにしがみ付かれるなんて、俺の夢そのものです。」
「じゃあ、さっさとイッてくれ。今なら愛する俺と一緒にイケるだろうよ。」
「イキそうなんですね。いいですね。一緒に行きましょう。あなたが俺にキスをしてくれるなら。」
俺はメイヤーの言う通りに彼の顔を両手で挟み、彼の唇に口づけていた。
俺の口中は蹂躙され、俺の下半身で動く彼のものも激しさを増し、俺は完全に自分が戻れないところまで来てしまったと脅えながらも自分の身体を縛る自分の自意識を放棄した。
俺はメイヤーにむしゃぶりつき、そんな俺にメイヤーは追い立てられ、俺達は同時にスパークして力尽きた。
浅い呼吸となったその中で、俺はようやく終わった責め苦に涙が零れ、どうしようもない程に叫び出したいほどの感情に襲われていた。
レイプされた人間がその後に感じるフラストレーションではない。
俺はメイヤーとのセックスの最中、一度たりともダンの面影を追いかけなかったのである。
俺の頬に唇を感じた。
「もう朝でしょう。時間切れだよ、メイヤー。」
「――結局心は許してもらえないのですね。」
「酔った上でのことは翌日に持ち込んではいけないでしょう?そのルールが守れないのなら、君は俺の副官を降りるのだね。ダンは君が欲しいと言っていたよ。」
すると俺に覆いかぶさり始めていたメイヤーは、ごろりと仰向けに転がると、やけっぱちにも思える大声で笑い出した。
そして、彼は両手で自分の顔を覆った。
「メイヤー。」
「俺が、ああ、あなたに俺は嫌われていたわけでは無かったんですね。俺は特別視されて嫌われていたわけじゃ無かったんだ。あなたはアークロイドが自分以外を気に入るとそれを反射的に排除するだけだったんだ。俺がアークロイドとあなたの知らない所で知り合っていたから気に入らなかったわけじゃないんだ。お、俺が、ほ、欲しいとあの人が言ったからだったなんて!」
俺はメイヤーが嘆こうとどうでも良いとそのまま目を瞑ろうとして、恐らくメイヤーが眠る時に目につくだろう位置の写真が目に入った。
メイヤーが新入生だった年の俺だ。
メイヤーを監督してやった二週間の時の俺だ。
それは俺のようで俺ではない俺だった。
俺は足元に向かって優しく微笑んでいて、俺の足元には士官学校に住み着いていた縞ネコが転がっている。
ダンはその猫を嫌っていた。
寮の俺達の部屋に入ってくると、彼は直ぐにその猫を追い出してしまうのだ。
――酷いな、君は。あの子は可哀想な野良猫なのに。
「寮生みんなから可愛がられている飼い猫でしょう。いいんだよ。いいからさ、ジュリアンは俺の話を聞いてくれない?君は猫が来るとそればかりだ。」
写真の中の俺が猫の姿を見つめているのは、ダンとの寮生時代を思い出しながら敵わない恋を噛みしめているからだった。
俺はダンの言葉に今でも翻弄され、今でも一喜一憂している愚か者だ。
俺は昨夜の強姦魔に手を伸ばすと、俺に傷つけられたとすっかり弱々しくなっている彼を自分へと抱き寄せた。
「ジュリアン、さま?」
「朝まで、もう少しある。」
ジュリアンの好いていた俺は、写真のあんな顔をした俺なのだろうか?
恋心をどうしても捨てられない自分を嘆いている顔なのに。
奴は彼が思う駄賃を俺から奪えるまで、俺を解放することを拒むかのように自分がイクことを押さえているようでもあった。
俺はメイヤーの攻撃に情けなくも途中で何度か気を失い、何度もメイヤーによる攻撃の刺激によって目を覚まさせられた。
最後にはメイヤーが望む正常位で突かれている最中という情けないものだったが、俺はその体勢に抗議するどころか情けが欲しいという具合にメイヤーにしがみ付いているという有様だ。
「あなたが嫌いな俺にしがみ付いていますよ。」
「煩い、黙れ、お前は!あ、はあ。」
イクという感覚は、俺の人格さえも破壊する爆発である。
俺は何度もイカされ、俺は大海原で翻弄される小舟のような有様で、メイヤーにしがみ付いていなければそのまま沈んでしまいそうなのだ。
「ははは。いいんですよ。もっとしがみ付いてください。愛しています。あなたにしがみ付かれるなんて、俺の夢そのものです。」
「じゃあ、さっさとイッてくれ。今なら愛する俺と一緒にイケるだろうよ。」
「イキそうなんですね。いいですね。一緒に行きましょう。あなたが俺にキスをしてくれるなら。」
俺はメイヤーの言う通りに彼の顔を両手で挟み、彼の唇に口づけていた。
俺の口中は蹂躙され、俺の下半身で動く彼のものも激しさを増し、俺は完全に自分が戻れないところまで来てしまったと脅えながらも自分の身体を縛る自分の自意識を放棄した。
俺はメイヤーにむしゃぶりつき、そんな俺にメイヤーは追い立てられ、俺達は同時にスパークして力尽きた。
浅い呼吸となったその中で、俺はようやく終わった責め苦に涙が零れ、どうしようもない程に叫び出したいほどの感情に襲われていた。
レイプされた人間がその後に感じるフラストレーションではない。
俺はメイヤーとのセックスの最中、一度たりともダンの面影を追いかけなかったのである。
俺の頬に唇を感じた。
「もう朝でしょう。時間切れだよ、メイヤー。」
「――結局心は許してもらえないのですね。」
「酔った上でのことは翌日に持ち込んではいけないでしょう?そのルールが守れないのなら、君は俺の副官を降りるのだね。ダンは君が欲しいと言っていたよ。」
すると俺に覆いかぶさり始めていたメイヤーは、ごろりと仰向けに転がると、やけっぱちにも思える大声で笑い出した。
そして、彼は両手で自分の顔を覆った。
「メイヤー。」
「俺が、ああ、あなたに俺は嫌われていたわけでは無かったんですね。俺は特別視されて嫌われていたわけじゃ無かったんだ。あなたはアークロイドが自分以外を気に入るとそれを反射的に排除するだけだったんだ。俺がアークロイドとあなたの知らない所で知り合っていたから気に入らなかったわけじゃないんだ。お、俺が、ほ、欲しいとあの人が言ったからだったなんて!」
俺はメイヤーが嘆こうとどうでも良いとそのまま目を瞑ろうとして、恐らくメイヤーが眠る時に目につくだろう位置の写真が目に入った。
メイヤーが新入生だった年の俺だ。
メイヤーを監督してやった二週間の時の俺だ。
それは俺のようで俺ではない俺だった。
俺は足元に向かって優しく微笑んでいて、俺の足元には士官学校に住み着いていた縞ネコが転がっている。
ダンはその猫を嫌っていた。
寮の俺達の部屋に入ってくると、彼は直ぐにその猫を追い出してしまうのだ。
――酷いな、君は。あの子は可哀想な野良猫なのに。
「寮生みんなから可愛がられている飼い猫でしょう。いいんだよ。いいからさ、ジュリアンは俺の話を聞いてくれない?君は猫が来るとそればかりだ。」
写真の中の俺が猫の姿を見つめているのは、ダンとの寮生時代を思い出しながら敵わない恋を噛みしめているからだった。
俺はダンの言葉に今でも翻弄され、今でも一喜一憂している愚か者だ。
俺は昨夜の強姦魔に手を伸ばすと、俺に傷つけられたとすっかり弱々しくなっている彼を自分へと抱き寄せた。
「ジュリアン、さま?」
「朝まで、もう少しある。」
ジュリアンの好いていた俺は、写真のあんな顔をした俺なのだろうか?
恋心をどうしても捨てられない自分を嘆いている顔なのに。
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