愛するあなたを失いたくないけれど、今のままでは辛すぎる

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ストーカーは二歩ぐらい先に

ベッドルーム

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 観念した俺は玄関に入るとそこで色々と脱ぎだした。

「少佐?」

「ベッドルームで脱いだ方が良いか?こんな臭い腐れ服。」

「いいえ。あなたのお好きなように。俺はあなたの素晴らしい体を眺められるので文句など一つもありません。」

「で、君のベッドルームはどこだ?」

「その右のドアを。」

 俺は出来る限り堂々と偉そうにメイヤーの寝室のドアを開け、……部屋の内部を見回すやすぐにそのドアを閉めた。

「あなたのそんな乙女めいたところが好きです。」

 俺の背中に裸になったメイヤーの胸板がピタッと貼り付いた。

「壁紙代わりに俺の写真だらけなのはどういう料簡だ?」

 ふふっとメイヤーは鼻で笑い、俺が逃げ出さないように左腕で腰を抱きながら彼は再び部屋のドアを開いた。
 大き目のベッドはホテルかと思うぐらいにベッドメイキングされ、サイドテーブルには気分を盛り上げるためのキャンドルが置かれている。
 それだけじゃない、ローションに避妊具のゴムに、ええと、変な形をしたディルドがあるじゃないか。
 ついでに言えば、ローションは病院の検査室にあるようなホルダー、ローションを温める機能付きの物に入れ込まれていた。

 俺は血圧の音が聞こえるぐらいにザアーと血の気が失せた。

「やっぱり、計画的、だったのだな。君はいつから俺をストーキングしたいたのかな。はは、壁にも天井にも、こっちを見ていない俺の写真ばかりじゃないか。」

「自然なあなたが好きなんです。作り笑いをしていないね。俺はあなたを一目見て恋に落ちたって言ったじゃないですか!」

「爽やかそうに言っても喜ぶか!君は俺の写真をただ貼って喜んでいるだけか?そんな男がこんな寝るための準備を執拗に整えているものか!」

「そうですね。その通りです。俺はあなたをどうやって抱こうかと考えながら、あなたの写真を見つめていました。ほら、あの天井の真ん中は素敵でしょう。大きくしてしまいましたが。」

 俺はメイヤーの手を振り払うとベッドへと進み、ベッドの上に乗り上げると、そのまま天井に貼り付けてあったメイヤーが一番お気に入りらしい写真を掴んで剥がした。
 この汗ばんで嬉しそうな顔は、ダンへの俺の心情を全て吐露している顔なのだ。
 ダンは俺のこんな顔を見ても俺の気持ちに気付かなかったのか。

「君は他人に向けられた表情に発情していたのか?それは虚しくないのかな。」

「だって、基準がわかりませんから。あなたをそんな笑顔にさせようと、ええ、その写真はその目標です。決してアークロイド少佐になったつもりで眺めていたわけではありません。」

 俺は茫然としながら全て見透かしていたメイヤーを見返した。

「あなたをめちゃくちゃにさせてください。」

 ベッドの上に立っていたがために俺はメイヤーによってベッドに沈められ、下半身を無防備にさらしたうつ伏せというみじめな格好で押さえつけられた。

「すごいな。君は凄い。俺の上半身を完全に抑え込めたね。」

「じっとしていただかないと、あなたのアナルを傷つけてしまいそうなんで。」

 俺の尻にはあの温められていたローションがぶちまけられた。
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