愛するあなたを失いたくないけれど、今のままでは辛すぎる

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妹も一歩踏み出した

危うしな体の反応

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 危なかった。

 ティナの前では何事もない顔で部屋に戻ってみせたが、部屋に戻れば俺はそんな余裕顔などしていられなかった。

 ティナの身体は俺が思っていたよりも成熟していた。
 足元をぐらつかせた彼女を脊髄反射で抱き上げたが、俺の下半身が動物的反射行動を起こしかけたのだ。

 このまま彼女をベッドに運びたい。

 そんな衝動を抱いたそこで、ティナは俺を無邪気に諫めてくれた。
 お姫様抱っこだと子供のように喜んで、やっぱり子供のように俺の首にしがみ付いたのだ。

 彼女は父親がそれなりの年齢時の子供であった上に、子爵家、というやんごとないお家柄のお嬢様だったのだ。父親に抱っこされる記憶があるわけもなく、だからこそ俺の抱っこに目を輝かせて喜んだのだろう。

 ああ、それほどに無邪気で幼気な女の子に、あのジュリアンが俺にしてきたキスをしてやろうなんて考えてしまったとは!

 ティナは俺に何の警戒心も抱いていなかった。
 頬を紅潮させ、信頼しきった顔で抱っこをもっととせがんでいた子供だ。

「ああ、結婚したのだから手を出しても非難はされないだろうが、そんな状況だからこそ俺が彼女の純潔を守ってあげねばいけないのに!俺こそ処女膜を破りたがっているってどうよ!」

 乱暴にシャツやスーツを脱ぎ捨て、俺はパンツ一枚の格好でベッドに転がった。
 下半身に手が伸びそうだ。
 最高の男の定義とやらを俺の目の前で語り合ってくれた兄妹め。
 彼等が思う最高の男に俺はならなければいけなくなったじゃないか!

 まあ、ティナが俺を物凄くカッコいい男だと思ってくれていた事を知れたのは最高だった。が、ティナが経験のない無垢であったことも生々しく教えてくれてありがとう、だ。
 最近の俺はベッドに入るたびに、痛くしないでね、ともじもじするティナの幻影が見えるようになってしまったのだ。

「ああ、畜生め。」

 結婚を受け入れた俺は、これで彼女を自分に縛り付けられると思わなかったか?

「そうだ。縛りつけたい。まだ彼女は年若い。時間をかけて俺に恋してもらえばいいんだ。」

 その前に彼女に好きな男が出来たら目も当てられないが。
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