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妹も一歩踏み出した
兄の婚約とは?
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私達は新婚みたいに手を繋いで、いつも通りの私達の家に戻った。
兄はいないからいつも通りとは言えないが。
「あの、ダン?お茶はいかが?淹れてくるわ。」
「ありがとう。でもいいよ。外で軽く食べて来れば良かったね。着替えている間に届くように宅配でも頼もうか?」
ダンはスーツのネクタイをシュルっと解き、シャツのボタンを上から三つぐらいまで開けた。
かなりシャツははだけ、それよりも、いままでパリッとしていた彼が思いっきり着崩した格好になった事で、私の心臓はどっきーんと跳ねあがっていた。
契約結婚だろうと、こんなに素敵な男性が私の旦那様なのよ!
外に駆けだして、ダンと結婚した!と騒いで回りたい!
「どうしたの?顔が真っ赤だ。」
ダンは私の頬に手を添えた。
私の心臓は飛行機のエンジン並みに高速回転しはじめた!
「ティナ?」
物凄く心配したという風にダンは私にかがみこみ、私は結婚式でのジュリアンとダンのキスの場面が頭にフラッシュバックした。
二人の熱烈なキスは、今日の結婚式が私とではなく彼らのもの、と言っているように見える程だった。
もしかして兄とダンは相思相愛で、私は実は先走ってしまった?
私は兄に未だに婚約者の紹介を受けていない。
婚約が兄の嘘で、兄はそれでダンの興味を引くつもりだったのだとしたら?
「ティナ?」
私は私の配偶者と書類上になっている彼を見返した。
世界で一番愛している彼の幸せを私が壊してしまっていた?
そんな恐ろしい不安に脅えながら。
「どうしたの?なんだか君は泣きそうだ。落ち着いたら結婚が嫌になったのかな?」
「わ、わたし、ジュリアンの婚約者に会っていないことに気が付いたの。」
「あ、ああ、俺もだよ。婚約したと発表した癖にそういえば紹介はまだだよね。」
「でね、思ったの。ジュリアンは気を惹きたい誰かがいて、それで婚約なんて嘘を吐いたのかもって。」
「誰の気を惹きたいのかな。あいつはタクシーを止めるみたいに、気に入った人間を呼び寄せるぞ。」
「そ、そういうので呼び出されない人よ!」
ダンはうーんと本気で考え始め、ダンはもしかして凄く鈍感な人なのかもと気が付いた。
自分が愛する人が自分を愛していないという前提で考えているから何も見えていない、そう、そういう鈍感な人だったのかもしれない。
でも、兄がそこまで行動を起こしていたというならば、私が結婚なんてダンに言わなければ、ダンは、ああダンは、兄とハッピーエンドになれていた?
私は自分の浅はかさに足元がぐらついた。
「おっと!ほら!具合が悪いの?」
私の身体は支えられ、いえ、ダンが私を抱き上げている。
この抱き方は花嫁様を花婿が抱くスタイル、お姫様抱っこ!
私はダンを不幸にした張本人だろうに、そんな後悔など一瞬で頭から消し飛んでいた。
もう、反射的にダンの首に両腕を回してしがみ付いたのだ。
「わあ、ごめん。怖かったね!今すぐ下ろすからって、降りないの?」
「降りるもんか!一生に一度のお姫様抱っこよ!」
私は下ろされなかったが、私を抱くダンが馬鹿笑いをあげたそのままソファに倒れ込んだ。
わあ!
私はソファに横になっているけれど、そんな私にダンが覆いかぶさっている状態だ。ダンの顔がどんどんと私の間近に迫り、私は彼にキスされそうだと期待が高まった。
ジュリアンとしたみたいなキスを私としてくれる?
ちゅ。
キスは額だけだった。
「も、もう終わりなの、かしら?」
「俺は若くないから腕がガタガタだ。君は本当に可愛いよ。お姫様抱っこ。ああ、君は俺にはあの頃のままでいるんだね。」
ダンはすっと私からその大きな体を離し、ソファに私を残したまま自分の部屋へと行ってしまった。
額にだけのキス。
私はダンには十二歳のままなのね。
兄はいないからいつも通りとは言えないが。
「あの、ダン?お茶はいかが?淹れてくるわ。」
「ありがとう。でもいいよ。外で軽く食べて来れば良かったね。着替えている間に届くように宅配でも頼もうか?」
ダンはスーツのネクタイをシュルっと解き、シャツのボタンを上から三つぐらいまで開けた。
かなりシャツははだけ、それよりも、いままでパリッとしていた彼が思いっきり着崩した格好になった事で、私の心臓はどっきーんと跳ねあがっていた。
契約結婚だろうと、こんなに素敵な男性が私の旦那様なのよ!
外に駆けだして、ダンと結婚した!と騒いで回りたい!
「どうしたの?顔が真っ赤だ。」
ダンは私の頬に手を添えた。
私の心臓は飛行機のエンジン並みに高速回転しはじめた!
「ティナ?」
物凄く心配したという風にダンは私にかがみこみ、私は結婚式でのジュリアンとダンのキスの場面が頭にフラッシュバックした。
二人の熱烈なキスは、今日の結婚式が私とではなく彼らのもの、と言っているように見える程だった。
もしかして兄とダンは相思相愛で、私は実は先走ってしまった?
私は兄に未だに婚約者の紹介を受けていない。
婚約が兄の嘘で、兄はそれでダンの興味を引くつもりだったのだとしたら?
「ティナ?」
私は私の配偶者と書類上になっている彼を見返した。
世界で一番愛している彼の幸せを私が壊してしまっていた?
そんな恐ろしい不安に脅えながら。
「どうしたの?なんだか君は泣きそうだ。落ち着いたら結婚が嫌になったのかな?」
「わ、わたし、ジュリアンの婚約者に会っていないことに気が付いたの。」
「あ、ああ、俺もだよ。婚約したと発表した癖にそういえば紹介はまだだよね。」
「でね、思ったの。ジュリアンは気を惹きたい誰かがいて、それで婚約なんて嘘を吐いたのかもって。」
「誰の気を惹きたいのかな。あいつはタクシーを止めるみたいに、気に入った人間を呼び寄せるぞ。」
「そ、そういうので呼び出されない人よ!」
ダンはうーんと本気で考え始め、ダンはもしかして凄く鈍感な人なのかもと気が付いた。
自分が愛する人が自分を愛していないという前提で考えているから何も見えていない、そう、そういう鈍感な人だったのかもしれない。
でも、兄がそこまで行動を起こしていたというならば、私が結婚なんてダンに言わなければ、ダンは、ああダンは、兄とハッピーエンドになれていた?
私は自分の浅はかさに足元がぐらついた。
「おっと!ほら!具合が悪いの?」
私の身体は支えられ、いえ、ダンが私を抱き上げている。
この抱き方は花嫁様を花婿が抱くスタイル、お姫様抱っこ!
私はダンを不幸にした張本人だろうに、そんな後悔など一瞬で頭から消し飛んでいた。
もう、反射的にダンの首に両腕を回してしがみ付いたのだ。
「わあ、ごめん。怖かったね!今すぐ下ろすからって、降りないの?」
「降りるもんか!一生に一度のお姫様抱っこよ!」
私は下ろされなかったが、私を抱くダンが馬鹿笑いをあげたそのままソファに倒れ込んだ。
わあ!
私はソファに横になっているけれど、そんな私にダンが覆いかぶさっている状態だ。ダンの顔がどんどんと私の間近に迫り、私は彼にキスされそうだと期待が高まった。
ジュリアンとしたみたいなキスを私としてくれる?
ちゅ。
キスは額だけだった。
「も、もう終わりなの、かしら?」
「俺は若くないから腕がガタガタだ。君は本当に可愛いよ。お姫様抱っこ。ああ、君は俺にはあの頃のままでいるんだね。」
ダンはすっと私からその大きな体を離し、ソファに私を残したまま自分の部屋へと行ってしまった。
額にだけのキス。
私はダンには十二歳のままなのね。
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