5 / 87
妹も一歩踏み出した
兄怒る
しおりを挟む
「認めません!なんですか!二人が結婚って!いつの間にそんなふしだらな事に!」
爛れた生活実行中の兄が怒るとは思わなかった。
「でもジュリアン。ダンは生活が乱れていないし、家事だって協力してくれる素晴らしい人よ!結婚相手と考えたら最高の男性でしょう。」
「それは最高の男性と言わない!最高の家政夫と呼ぶんです!」
「では、お兄様。最高の男性の定義をお願いします!」
兄は右手を格好よく、いかにも軍人のようにして挙げると、士官学校時代の訓示を読んだ時のようにして最高の男性の定義を言い始めた。
ちなみに、兄とダンは酒を飲むと士官学校時代の変な戒律をそらんじ始めるので、今の兄はその酔っぱらって芝居がかった風にして戒律を叫んだ時のようだとも言える。
「ひとーつ、精神性の高さ!」
「ダンの精神性はジュリアンの上じゃない。」
兄はぎりっと奥歯を噛んだ。
「ふたーつ、心身ともに健康であり、俺が認めるぐらいに外見の良い男!」
「わたし、ダンは凄くカッコイイ人だと思う。」
「俺もそこは認める。」
「ぐふっ。」
ダンは私達から顔を背けて二つ折りになっていて、なんと肩を小刻みに震わせている。
彼は見つめる私達に、ストップという風に右の手の平を見せた。
「こっちむけ、ティナ。みーつ、いいか、話題豊富で頭の良い男にしよう。無口でもいいけどね、コミュニケーションが取れない相手は問題でしょう?」
「そういうジュリアンこそダンと一緒の時が一番楽しそうよ。私もダンは話しやすくて大好き。」
「当り前です!ダンは士官学校時代も今も、結婚したい男ナンバーワンだぞ!」
士官学校は男性しかいなかったじゃないかと言い返そうとして、軍隊内で結婚したい男ナンバーワンならば既に最高の男でいいのではと気が付いた。
あ、兄も自分の言動に気が付いたのか、顔を真っ赤にしている。
「ちょっと、待って、今のなし!今のぜんぜん雑談。じゃあ、四つ目。エッチが上手。」
「そこは分からない。兄様としては?」
「どうして俺がダンの具合を知っているんだ。覗く趣味は無いぞ。」
兄とダンはそういう関係じゃ無かったと少しほっとして、でも、精神的に抱いている恋愛感情こそ揺るがないものかもしれないとぼんやりと考えた。
だって私のしつこいくらいの初恋は、ダンに手を繋がれて家を出た時から変わっていないもの。
士官学校の制服姿の彼は、それはもう、一生忘れない程に格好良い姿だったのである。
「で、お前はどうなの。他の奴とはやったのかな?」
「はひ?」
「だからね。初体験は済ませたのかってお兄ちゃんは聞いているの。」
「ぶはっ。」
私と兄は同時にダンへと振り返り、ダンがかなり咽ているということを確認した。
「ダン!大丈夫!」
私は椅子から立ち上がって彼のもとに行き、彼の大きな背中に手を伸ばした。
「ほら、何やってんの。ちょっと叩くからね。」
私が触れる前にダンを抱えたのは兄であり、兄は自分にダンが被さるような態勢にさせて背中をバシバシと叩き始めた。
私はその光景を見つめながら、今思いついた五つ目の定義を勝手に口にしていた。
「よそ見をしないで初志貫徹が出来る人。」
兄とダンはピタリとそこで動きを止め、私に同時に振り返った。
そして、兄は顔を歪めると、なぜか「いいだろう。」なんて言い放った。
「え?」
「いいよ、認める。先に入籍して、俺が結婚するまで二人がここに住むのが条件だ。」
「げほ、おい、ジュリアン。その条件は君だけ有利じゃないか?結婚前に家事ぐらい覚えなさいよ。」
「ダン、俺はお前がいないと駄目そうよ?いいの?」
兄は言うやダンをぎゅうっと抱きしめ、ダンはそんな兄の背中を軽くバシッと叩いた。
仲の良い親友な二人。
私はテーブルの上のディナーナイフで兄を刺す想像をしてしまった。
爛れた生活実行中の兄が怒るとは思わなかった。
「でもジュリアン。ダンは生活が乱れていないし、家事だって協力してくれる素晴らしい人よ!結婚相手と考えたら最高の男性でしょう。」
「それは最高の男性と言わない!最高の家政夫と呼ぶんです!」
「では、お兄様。最高の男性の定義をお願いします!」
兄は右手を格好よく、いかにも軍人のようにして挙げると、士官学校時代の訓示を読んだ時のようにして最高の男性の定義を言い始めた。
ちなみに、兄とダンは酒を飲むと士官学校時代の変な戒律をそらんじ始めるので、今の兄はその酔っぱらって芝居がかった風にして戒律を叫んだ時のようだとも言える。
「ひとーつ、精神性の高さ!」
「ダンの精神性はジュリアンの上じゃない。」
兄はぎりっと奥歯を噛んだ。
「ふたーつ、心身ともに健康であり、俺が認めるぐらいに外見の良い男!」
「わたし、ダンは凄くカッコイイ人だと思う。」
「俺もそこは認める。」
「ぐふっ。」
ダンは私達から顔を背けて二つ折りになっていて、なんと肩を小刻みに震わせている。
彼は見つめる私達に、ストップという風に右の手の平を見せた。
「こっちむけ、ティナ。みーつ、いいか、話題豊富で頭の良い男にしよう。無口でもいいけどね、コミュニケーションが取れない相手は問題でしょう?」
「そういうジュリアンこそダンと一緒の時が一番楽しそうよ。私もダンは話しやすくて大好き。」
「当り前です!ダンは士官学校時代も今も、結婚したい男ナンバーワンだぞ!」
士官学校は男性しかいなかったじゃないかと言い返そうとして、軍隊内で結婚したい男ナンバーワンならば既に最高の男でいいのではと気が付いた。
あ、兄も自分の言動に気が付いたのか、顔を真っ赤にしている。
「ちょっと、待って、今のなし!今のぜんぜん雑談。じゃあ、四つ目。エッチが上手。」
「そこは分からない。兄様としては?」
「どうして俺がダンの具合を知っているんだ。覗く趣味は無いぞ。」
兄とダンはそういう関係じゃ無かったと少しほっとして、でも、精神的に抱いている恋愛感情こそ揺るがないものかもしれないとぼんやりと考えた。
だって私のしつこいくらいの初恋は、ダンに手を繋がれて家を出た時から変わっていないもの。
士官学校の制服姿の彼は、それはもう、一生忘れない程に格好良い姿だったのである。
「で、お前はどうなの。他の奴とはやったのかな?」
「はひ?」
「だからね。初体験は済ませたのかってお兄ちゃんは聞いているの。」
「ぶはっ。」
私と兄は同時にダンへと振り返り、ダンがかなり咽ているということを確認した。
「ダン!大丈夫!」
私は椅子から立ち上がって彼のもとに行き、彼の大きな背中に手を伸ばした。
「ほら、何やってんの。ちょっと叩くからね。」
私が触れる前にダンを抱えたのは兄であり、兄は自分にダンが被さるような態勢にさせて背中をバシバシと叩き始めた。
私はその光景を見つめながら、今思いついた五つ目の定義を勝手に口にしていた。
「よそ見をしないで初志貫徹が出来る人。」
兄とダンはピタリとそこで動きを止め、私に同時に振り返った。
そして、兄は顔を歪めると、なぜか「いいだろう。」なんて言い放った。
「え?」
「いいよ、認める。先に入籍して、俺が結婚するまで二人がここに住むのが条件だ。」
「げほ、おい、ジュリアン。その条件は君だけ有利じゃないか?結婚前に家事ぐらい覚えなさいよ。」
「ダン、俺はお前がいないと駄目そうよ?いいの?」
兄は言うやダンをぎゅうっと抱きしめ、ダンはそんな兄の背中を軽くバシッと叩いた。
仲の良い親友な二人。
私はテーブルの上のディナーナイフで兄を刺す想像をしてしまった。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

記憶がないなら私は……
しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。 *全4話

【完結】望んだのは、私ではなくあなたです
灰銀猫
恋愛
婚約者が中々決まらなかったジゼルは父親らに地味な者同士ちょうどいいと言われ、同じ境遇のフィルマンと学園入学前に婚約した。
それから3年。成長期を経たフィルマンは背が伸びて好青年に育ち人気者になり、順調だと思えた二人の関係が変わってしまった。フィルマンに思う相手が出来たのだ。
その令嬢は三年前に伯爵家に引き取られた庶子で、物怖じしない可憐な姿は多くの令息を虜にした。その後令嬢は第二王子と恋仲になり、王子は婚約者に解消を願い出て、二人は真実の愛と持て囃される。
この二人の騒動は政略で婚約を結んだ者たちに大きな動揺を与えた。多感な時期もあって婚約を考え直したいと思う者が続出したのだ。
フィルマンもまた一人になって考えたいと言い出し、婚約の解消を望んでいるのだと思ったジゼルは白紙を提案。フィルマンはそれに二もなく同意して二人の関係は呆気なく終わりを告げた。
それから2年。ジゼルは結婚を諦め、第三王子妃付きの文官となっていた。そんな中、仕事で隣国に行っていたフィルマンが帰って来て、復縁を申し出るが……
ご都合主義の創作物ですので、広いお心でお読みください。
他サイトでも掲載しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる