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戦への火花が所々で散っている

楽しい夜の勉強

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 俺はたぶん地獄に落ちるだろう。
 りまと初めて口づけたあの夜から毎夜、りまは夜には俺の部屋に来て、俺の横に座って俺に漢文の指南をしてくれる。
 そして俺は俺の手の中に落ちてくれないかと願いながら、勉強が終わるや彼女に口づけてもいるのだ。

 俺はたったそれだけの行為で天にも昇る気持ちになれるのだが、これは彼女の優しさと無知を利用しての見下げ果てた行為ではないのか?
 そう考えたところで、俺はそれを止めることなど一切できないどころか、彼女を毎夜抱き締めるたびに俺の指先は彼女の身体の探索にで伸びてしまうという最悪な獣だがな。

 りまがどうしてこんな俺に我慢しているのか。

 それは俺達が離縁という事にならないためだ。
 真面目なりまは、俺と離縁することになれば海軍と陸軍の間に面倒が起きると考え、そのことで彼女の家、桐生家についても考えている。
 さらに、自分を慕う藤吾を悲しませたくないという、為さぬ子への愛情だ。
 何と立派だと、俺の中で皮肉な声が出るのは、俺に惚れているから別れたくないと言って欲しいと、俺の心が嘆いているからであろう。

「あの、衛様。き、キスが長ごうございます。」

「いや、すまなかった。」

 俺は慌てて抱き締めていたりまを解放し、りまは顔が真っ赤に染まった様子で恥ずかしそうに、俺に探索されたばかりの乱れた襟元をそっと直した。
 もしかして、実はもう少し押せば彼女は落ちるのではないのか?
 そんな確信もしているが、今の俺はりまの身体よりも心が欲しく、さらに言えば、俺が体を奪う事を望んでいる間男の存在が俺の欲情を押しとどめてもいるのである。

 ヨキの話では、りまが俺に告白した通りのことが金木犀の下で行われたようだが(ああ、りまはなんと正直者なのだ)、和郎が聞いたという台詞を元に考えれば考える程に、あの桐生利秋はりまに惚れており、りまを抱きたいと考えていると考えるしかないのだ。

 りまの純潔を俺より先に散らせば、俺にりまが折檻を受けると思ったか。
 あるいは、俺との行為が無いのにりまに子供が出来てしまうと困った事になると、そこまで落ちぶれた考えを抱いてしまったのか。

「あの、衛様。」

 俺はりまのか細い声に彼女を見返した。
 彼女はとっても潤んだ目をしていて、そんな目で俺に何かを強請るような一途さで俺を見つめているではないか!

「な、何事だ!」

「きゃあ!」

 俺はりまを自分の膝に乗せ上げて抱き締めており、りまは俺のその衝動的な行動に驚いて小さな悲鳴を上げた。

「す、すまな、い。」

 全く申し訳さなど無いどころか、俺は自分の身体が勝手にしでかした事を褒め称えながらりまをぎゅうと抱き締めた。

「あの、あの。教えていただきたい事が。」

「何だって君に教えてあげようとも!」

 よし、綺麗な標準語で言えたぞ!
 いざという時に言葉が通じないと困るからと練習していて助かった。
 俺はりまを見返してみて、……りまは眉根に皺を寄せていた。

 おや?
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