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子爵が提案した新たなクエスト

大泥棒の方が似合いそうな子爵様

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 アンジェラ大叔母の屋敷の門前に馬車は止まり、私は自分を送ってくれた男に礼を言おうとしたが、男の方が行動が素早かった。
 馬車からひらりと飛び降りると、軽く周囲を見回した後で私に対して手を差し出したのである。

「どうぞ、お手を。未来の公爵夫人。」

 カナンは本気でノアの支持者のようだ。
 ノアは王になることなど考えておらず、公爵位を貰って王位継承から逃れたいと夢見てもいるのだ。
 公爵位を授けられたからと言っても、王位継承椅子取りゲームから一抜けなど出来ないのだけれど。
 そうか、そうなると、彼は死ぬまで彼の早世を願う者達に狙われるのか。

「どうかされましたか?」

「いいえ。ノアの身の上を考えたら、やっぱり私が傍にいた方が暗殺者には対処できるのかな、と考えただけです。はあ、そこで問題がまた起きるのよね。彼が好きになった女の子を愛人のままでしていていいのかって問題。」

「あなたがその愛人になれば全部解決です。」

「まあ!私に愛人になれと言うの!失礼な方ね!」

「いえ、あの、そう意味では。ええと。」

「ええと?」

 カナンは言葉に詰まったが、切り替えの早い男らしい。
 カナンは私を馬車から降ろす事に集中することにしたらしく、私がふわりと宙を舞ったと錯覚するぐらいに軽々と馬車から支え下ろした。

「ありがとう。」

「いえ。」

 カナンはそこで私の手を離さず、またまた自分の腕に勝手に絡めてしまった。

「少佐?」

「俺にあなたのお父様に挨拶できる恩恵を頂けますか?」

 私はカナンの言葉に大叔母の屋敷のエントランスを見返せば、エントランスの両開きの扉の左右に真っ白な近衛兵の制服を着た青年達が立っていた。

「まあ、お父様も来ていたのね?」

「お嬢様を心配して、でしょうね。」

「あなたの考える心配の内容が、恐らくあなたと父では違うでしょうけれど。」

 カナンにエスコートさせながら応接間に向かってみれば、大叔母の家でありながら我が物のようにして、大きなソファに動物園の大熊のようにして父が転がっていた。
 後ろに撫でつけられたダークブロンドの長めの短髪は、まるでライオンのたてがみのように輝き、彫りが深い笑い皺に飾られた男らしい目元には草原を思わせる若草色の瞳が輝く。
 つまり、私の父は、唯一無二の存在感を持つ大柄な美丈夫だということだ。
 そんな彼は、だらしなくソファに沈んでいた体を起こすと私に向けて両腕を広げた。

「王子暗殺未遂犯の大罪人イルヴァ、君の汚名が喜ばしいよ。」
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