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第八章 悪魔は人の勇気を糧とする

俺は幸せだよ?

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「わかった。三分で話を片付けてくれ。そうでないと、やれない俺のあそこの血管が破裂して俺が死んでしまう。っ!」

 ヴァクラに額をしたたかに叩かれた。
 それから彼は、三分かからず一分だったが、美亜を送り出す前に美亜に語った話にプラス、この町が大悪魔の手中にあるという内緒話を付け足してくれた。

「悪魔は本当は召喚されたくないから、召喚士を根絶やしにしようとする、か。親父が車を追突させられておっ死んだのも、それが原因かもな。って、っ!」

 額どころか、俺の胸にヴァクラが頭突きをしてきたのである。
 俺はヴァクラによる衝撃によって大きく息を吐き、俺に攻撃をしたヴァクラは、頭が痛いと喚いていた。

「そっちが痛いわけ無いだろ。」

「痛いよ!情報不足で俺の頭は痛いよ!早く言ってよ!教えてよ!そうすると、お前のお父さんの死から始まっていたかもしれないって事じゃないか!」

「何がだよ?」

「お前達を取り込もうって話だよ?人間でな、悪魔を召喚できる能力を持っているのは殆どいないんだ。大悪魔が召喚されたくないから殺すからね。だけどね、自分のライバルを隷属できる手段でもあるんだよ。召喚者が自分の駒になってくれたのだとしたらね!」

 俺は親父が死んでからの事を思い出した。
 誰も彼も、親戚は自分が引き取るとは言わないくせに、美亜を俺が引き取ることに関しては口を揃えて止めろと言った。
 施設に送れと美亜の前でも言ったのだ。

「俺から引き離して、美亜を取り込む?」

 俺はヴァクラを押しのけると布団から飛び出し、吉永が手渡して来たパンフレットがある台所へと走った。
 パンフレットは床にページを開いて放ってあり、俺はそこに跪くとそのままこの団体が行っている慈善事業のページを開いた。

「あったな。あった。孤児への支援があった。で、あいつは学校の子供達に俺にはいらない子だって揶揄われていたんだよな。」

 俺の上にヴァクラの影が掛かり、彼は俺も気になっていた美亜の言葉について俺に尋ねて来た。

「美亜の勇気って何だろうね。俺は美亜の本から美亜の過去の断片を読んだんだ。お前の婚約者と一緒にいるところでさ。それは、あのね。」

「知っているからいいよ。」

 俺も俺がこの人生を決断した日を思い出していた。
 綺夏は美亜を連れ出してどこかに行ったのだが、俺だって妹と少しは親しくなろうと考えて二人の乗る車の後ろを追いかけたのだ。
 二人は古本屋に入っていき、あとを追いかけた俺は美亜が選んだ本の数々に苦笑しながら、二人の後姿を見守っていたのである。

「これから行く児童相談所では、お兄さんが怖い、お兄さんと一緒に住みたくないって、ちゃんと言うのよ?」

「お兄さんと一緒に住みたくはないって言うって約束するけど、お兄さんが怖いって言わなくていいでしょう?お兄さんは、あの、怖くないもの。」

「言わなきゃ施設に行けないだろうが!」

 美亜に怒鳴った時の綺夏の顔は醜悪だった。
 彼女は美亜が施設に行きたいというから、施設に保護されるための台詞を教えていたと俺に言い、美亜もそれが間違いないと俺に言った。

 綺夏をそこまで追い詰めたのは自分であったと、俺はそこで綺夏を捨て、美亜を選んだのだ。
 綺夏の代りに俺が美亜の本の支払いをし、俺は綺夏を責めずに頭だけ下げた。

「君の時間を台無しにしてごめん。」

「誰もあなたを責めない選択なのに、あなたは自分を犠牲にする方を選んだのね。それで二人とも幸せになれると思うの?あなたは夢を失うのよ?これから一生、自分の子供だって持てない生活になるのは間違いないのよ!」

 綺夏はそれだけ言って去って行き、俺はその日からも一切俺に懐こうともしない美亜に対して疲弊して行き、夢を失った自分を嘆くようになったのだ。

「美亜はね、俺の婚約者に施設に連れていかれる最中だったんだ。行った先で俺とは住めないって言えって強要されていてね。それで、あいつは行くことは拒否しなかったが、俺が怖いって言う事は嫌だって言ったんだよ。だからさ、俺は。」

 俺の背中にヴァクラがそっと抱きついた。
 抱きついただけでなく、俺のうなじにそっとキスをした。

「美亜の勇気の理由がわかった。似た者兄妹。お前もわかっただろ?」

「俺はわからない。わかりたくもない。俺は今幸せだ。美亜が勇気なんか出して俺の手から逃げ出す理由なんか無い。」

「ふふ。そうだね。じゃあ、もっとお前を幸せにしよう。美亜が自分の馬鹿さ加減に気が付くように。」

 ヴァクラの片手は俺の胸をまさぐり始め、もう一本の腕の手は、俺の力を失ってしまったものへと伸ばされた。
 ショーツの中に入り込み、長い指先は俺の丸まってしまったものを優しく包み込んで撫でさすり始めた。

「は、はは。はあ。時間が無いぞ。」

「だからさ。今日は趣向を変えよう。お前が大声出してよがる日にしようよ?」

「だれが!」

 俺は笑いながらヴァクラに言い返し、今朝の目標であるヴァクラによがり声を上げさせるを着手することにした。
 ああ、俺は幸せだ。
 この幸せをもたらしたのは、美亜、お前なんだぞ?
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