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屋根裏の個室でのひと時

キスは甘いから危険

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 おかしい。
 最初はユージンが楽になるのならぐらいの、友人としての義務感、そう、自分からしたいわけでは無くて、しなきゃって思ったからだけのものだった。
 でも、俺がキスをしても、ユージンは具合が悪いせいか、いつものようなキスを俺に返してこなかった。
 ただ、俺の唇に翻弄されたようにして、うっとりとした表情だけを浮かべた。

 いつもは俺こそが翻弄されているというのに!

 俺が負けず嫌いなのがいけないのか、彼を虜にしているのが自分だと確信した途端に、俺は悪戯心ばかりが芽生えたのだ。
 いつもされているようにして、ユージンの唇を俺が貪る。
 唇に舌を這わせ、吸い、舐める。
 はあ、と熱い吐息が出たそこに舌を潜入させ、彼の歯茎や上あごを舐める。

「はああ。」

 ああ、この吐息は俺自身のモノだ。
 俺は自分の身体こそ、それも下半身のモノが持ち上がって行く感覚にぞわっとしていた。
 そのぞわっが嫌悪感のぞわっではないから、尚更に俺は自分自身に脅えた。
 脅えたからこそ、俺は攻撃に力を込めた。

 俺は耳を齧られて頭の中が真っ赤になるが、ユージンはどうなってしまうのだろうか?

 ユージンの耳たぶは冷たくて柔らかかった。
 こんなに体が熱くなっているというのに。

「ああ。」

 ユージンは喜びにしか聞こえない吐息を上げた。
 だが、俺をぎゅうと抱きしめると、俺の悪戯を封じ込めるようにして俺を胸に抱き寄せてしまった。

「ユージン。俺のキスは嫌だった?」

「最高だった。でも俺は何もできない。そして、寒くてくらくらしているんだ。ごめん、少しだけ抱かせて。少しだけ抱いて眠らせて。」

 俺はユージンの身体に腕をまわし、俺の体温が少しでも彼を温めればいいと思いながら、彼を抱く腕に力を込めた。

 彼が死んでしまったらどうしよう?
 俺は病気なんてわからないのに!

 俺は普通の生き物のように睡眠は必要だし食べるし出すし成長するけれど、魔王に製造されたホムンクルスでしかないのだ。
 つまり、俺は人間と同じ外見でも人間とは全く違う。
 魔物みたいに病気になったりしないものなのだ。

 ユージンの身体は熱い、でも、俺の身体は普通の平熱だ。
 ユージンの身体ぐらいに温かくなったら、ユージンは温まるかな?
 でも、どうやって体を温める?

 俺はさっきまでのユージンにされていた行為、尻の穴をまさぐられていたそのことを思い出していた。
 いつもと違う感覚に、俺の身体は熱くとろけそうにならなかったか?

「ねえ、ユージン。俺の尻を弄れるか?俺の体温が上がれば、お前のいい毛布になると思うんだけど、どうかな?」

 俺の腕の中でユージンは吹き出し、俺の耳に、今度ね、と囁いた。

「今度って!今お前が具合が悪いんだろ!」

「具合が悪いから今度ね。俺は万全な状態で君を責めまくりたい。そして、たった今素晴らしい言質を取った。俺は一時間寝て回復する。回復したら君の尻の穴を弄ぶ。じゃあ、お休み。」

 え?

 俺の腕の中でユージンはすやすやと眠りだした。
 眠った彼の背中は輝きだし、彼の背に掘られていた王家の紋章が、王族の彼にだけ利く治癒魔法陣だったと今更に気が付いた。

「お前、変な事をせずにさっさと寝ていれば良かったんじゃねえか!」

 だが、安らかに眠るユージンの寝顔を見つめているうちに、彼は熟睡したら俺が彼の腕から消えると思い込んでいたのでは、と思い立った。

「お前って重たい奴だな。」

 けれど、今の俺は彼を放ってはどこにも行けなくなっていると、まんまに絆されてしまっていると、俺に対しては臆病この上ない男を抱き締めた。
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