目覚めたら全裸な俺は全裸な王子と一緒にゴブリンに強襲された砦を逃亡するクエストを与えられた!

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とりあえず 馬房からの脱出

厩舎には出口が無い?

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 俺は汚された感と喪失感を抱えた敗残兵そのままだった。
 だが、まだ叫ぶ余力はあったので、敵を呼ばない程度の小声で叫んだ。

「アルデバランなど使うから服も剣も手に入らなかったあああ。このばかああああああああああああ。」

 ユージンはフフッと笑うと、俺の両腕の二の腕の辺りをぎゅっとつかんだ。

「君はそのままで美しいよ。」

「お前は出し切ったもんな。俺の素股に出し切ったもんな。ああ、いい表情だよ!すげえ、やりきった表情だよ!」

 話しの通じない相手と会話する方が馬鹿なのだ。
 俺は奴を振り切ると、まだぷらぷらだが、とにかく厩舎を出る出口かパンツを探すべく馬房を出た。

「ええと。最初に出た馬房の窓があっち側で、そこから町が見えたから、と。」

 自分が思う出口の方へ歩いたのだが、そこには出口など無く、それからぐるりと厩舎内を歩いて(洞窟で右手を壁に付けながら歩くみたいにまでして!)みたが、新たなオークに六体こんにちわできた以外何もなかった。

「畜生!どうしてゴブリンオークは基本全裸なんだ!」

「慣れれば気楽だからじゃないか?」

「俺は人間でいたいから、人間捨てた奴は俺から一メートル離れてくれ。」

「手を繋いでこの困難を乗り切ろうよ?」

「お前が作った困難な気がするけどな!」

 ユージンが伸ばしてきた手を振り払うと、今までニコニコ顔だった男は急に不機嫌な顔を作って見せた。

「じゃあ、バディ解消だね。君は出口のない厩舎で一生彷徨っていればいいよ。」

「ちょっと待て、その言い方。すっげえ誘い受けだが、お前は厩舎以外に行ける道を知っているって言い方だよな。」

 ユージンは、ああ畜生、俺よりもかなり背の高い奴は、俺を優越感を滲ませたムカつく目で見下ろして来た。
 そして、解りやすく口角を上げて、に・や・り、だ。
 ああ、ムカつく!

「ねえ、ヴォラク。俺は君を騙してどうこうするつもりは無いよ。俺は君に何て言われても耐えて来たけどね、信じて貰えないのは、やっぱ、辛いよ?」

「愁傷に何さらっと御託並べてんだ。ついさっき騙して素股しやがったじゃねえか!耐えてきたのはこっちだよ!いいから、道が分かってんなら行くぞ!」

 俺は結局ユージンに右手を差し出しており、彼は嬉しそうに俺が差し出した手に奴の左手の指を絡めた。

「人間が逃げないようにと考えれば、外への出口なんか作んないのは定石でしょう。飼育者側の棟に通じている道を行けばいい。」

 その棟に行く扉こそ見あたらないとユージンを睨むと、奴は新たな魔法を唱え始めた。
 光の波紋。
 足元に光の輪っかが出来たと思うと、その円が外へとすごいスピードでぐんと拡がって行くのだ。
 俺も一緒になって目を瞑り、光の波紋が厩舎中に広がっていくのを魔法眼(まほうがん)で追い、そして、歪む場所を見つけた。

 俺が瞼を開けたのとユージンの瞼が開いたのは同時だった。

 俺達は同時に微笑むと、光の輪が歪んだ場所、扉が会ってその先があると分かる場所へと走り出していた。
 プラプラさせながらだから、人には見られたくない姿であるだろうけども。
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