2 / 32
とりあえず 馬房からの脱出
魔法も力も使えなくとも、人間だったら知恵がある
しおりを挟む
ドラグーン王国にどうして来てしまったのかと、俺は自分の浅はかさに頭を抱えながらも現状打開を考えた。
いや、俺は浅はかでも無いだろう。
魔王と人間のカップルに拾われた人間の子供だと固く信じて育った所で、魔王が愛した人間の右腕と魔王の右腕を煮詰め、魔王の力によって合成された生き物だと告白されたのだ。
「ちょっと待て!レグルス!お前には右腕あるじゃないか!魔王はわかるけど、人間の腕はトカゲの尻尾みたいに生えてこない!」
俺の本当の父と言い張る魔王は、彼が果てしなく愛する愛人(レグルス)の肩を抱き、ものすっごい笑顔で俺に終了の言葉を与えた。
「レグルスだって俺への愛で頑張って生えるんだよ!」
「意味わかんねぇよ!」
俺はそれで両親(人間オス×魔王オスカップル?)の城を飛び出た。
ええと、出ていくときには、とりあえず、傷つきやすいレグルスには適当な事を言った。
真っ赤な髪に黒い瞳を持つレグルスは、いつでも十代前半の少年のようで、とっても弱々しく可愛らしく見えるからだ。
そんなレグルスを傷つけたと、魔王を怒らせて俺が単なる右腕二本に戻されても悲しいじゃないか。
「お父さんたちの告白でね、俺も生えないはずの腕が生えるぐらいに、心から愛せる人を探してきたくなっちゃったの。」
レグルスは恥ずかしそうに、だが、天使のような笑顔をして輝かせて、俺に言っておいでと俺の背中を押してくれたのである。
「俺達の事は心配しなくていいよ。また、新婚の頃みたいになるだけさ。」
子は鎹とは言うが、意外と俺はラブの邪魔だったらしいな、父さんずよ!
「鎖、どうする?愛する人よ?」
俺は俺の現実逃避したいだけの物思いを、図々しくも破って来た男を見返した。
まあ、いいか。
思い出に関しても、俺は思い出した事から逃避したくてここにいるのだから!
さて、俺が見つめ俺に見つめられて嬉しそうに俺を見返す男。
ユージンは青紫というとても美しい瞳をしている。
王子である彼の整った顔立ちをこの瞳がさらに際立たせてもいるが、この宝玉のような瞳を彼がしているのは、伝説通りに王族にドラゴンの血が混じっているからかもしれない。
が、俺は親父と同じ変態野郎と彼を見ているので、奴の目は魔族特有の青紫であるのだとも考えている。
顔だけいい男は俺に見つめられていると嬉しそうに微笑んだ。
俺はユージンの顔をピシャリと叩くと、馬房に何か角のある硬いものはないかと捜し始めた。
「何を探しているの?」
「角のあるもの。石ぐらいの強度が必要。」
「じゃあ、ここ?」
ハハハ、この建物の土台は石だったな。
俺は石の土台と木の柱の丁度境目、ほんの少し石部分が飛び出ている所に鎖のリングを引っかけた。
「何をする?」
「鎖を切る。」
そのリングを支点にして鎖をぐりぐりまわすだけなのだが、しばらくまわしていると鎖はカチンと音を立てて切れた。
「すごいな。俺のはまだ切れない。」
「勇者様の底力って奴だよ。貸せ。」
本当は魔王様の遺伝による馬鹿力というやつだが、地面を裂ける魔王様と違って俺は牛並み程度の力しかない。
がちん。
「さすが勇者様だ。勇者ヴォラクよ。俺は君を守り忠誠で貫くと誓おう。」
「欲望が駄々洩れだぞ。お前に貫かれてたまるか。」
いや、俺は浅はかでも無いだろう。
魔王と人間のカップルに拾われた人間の子供だと固く信じて育った所で、魔王が愛した人間の右腕と魔王の右腕を煮詰め、魔王の力によって合成された生き物だと告白されたのだ。
「ちょっと待て!レグルス!お前には右腕あるじゃないか!魔王はわかるけど、人間の腕はトカゲの尻尾みたいに生えてこない!」
俺の本当の父と言い張る魔王は、彼が果てしなく愛する愛人(レグルス)の肩を抱き、ものすっごい笑顔で俺に終了の言葉を与えた。
「レグルスだって俺への愛で頑張って生えるんだよ!」
「意味わかんねぇよ!」
俺はそれで両親(人間オス×魔王オスカップル?)の城を飛び出た。
ええと、出ていくときには、とりあえず、傷つきやすいレグルスには適当な事を言った。
真っ赤な髪に黒い瞳を持つレグルスは、いつでも十代前半の少年のようで、とっても弱々しく可愛らしく見えるからだ。
そんなレグルスを傷つけたと、魔王を怒らせて俺が単なる右腕二本に戻されても悲しいじゃないか。
「お父さんたちの告白でね、俺も生えないはずの腕が生えるぐらいに、心から愛せる人を探してきたくなっちゃったの。」
レグルスは恥ずかしそうに、だが、天使のような笑顔をして輝かせて、俺に言っておいでと俺の背中を押してくれたのである。
「俺達の事は心配しなくていいよ。また、新婚の頃みたいになるだけさ。」
子は鎹とは言うが、意外と俺はラブの邪魔だったらしいな、父さんずよ!
「鎖、どうする?愛する人よ?」
俺は俺の現実逃避したいだけの物思いを、図々しくも破って来た男を見返した。
まあ、いいか。
思い出に関しても、俺は思い出した事から逃避したくてここにいるのだから!
さて、俺が見つめ俺に見つめられて嬉しそうに俺を見返す男。
ユージンは青紫というとても美しい瞳をしている。
王子である彼の整った顔立ちをこの瞳がさらに際立たせてもいるが、この宝玉のような瞳を彼がしているのは、伝説通りに王族にドラゴンの血が混じっているからかもしれない。
が、俺は親父と同じ変態野郎と彼を見ているので、奴の目は魔族特有の青紫であるのだとも考えている。
顔だけいい男は俺に見つめられていると嬉しそうに微笑んだ。
俺はユージンの顔をピシャリと叩くと、馬房に何か角のある硬いものはないかと捜し始めた。
「何を探しているの?」
「角のあるもの。石ぐらいの強度が必要。」
「じゃあ、ここ?」
ハハハ、この建物の土台は石だったな。
俺は石の土台と木の柱の丁度境目、ほんの少し石部分が飛び出ている所に鎖のリングを引っかけた。
「何をする?」
「鎖を切る。」
そのリングを支点にして鎖をぐりぐりまわすだけなのだが、しばらくまわしていると鎖はカチンと音を立てて切れた。
「すごいな。俺のはまだ切れない。」
「勇者様の底力って奴だよ。貸せ。」
本当は魔王様の遺伝による馬鹿力というやつだが、地面を裂ける魔王様と違って俺は牛並み程度の力しかない。
がちん。
「さすが勇者様だ。勇者ヴォラクよ。俺は君を守り忠誠で貫くと誓おう。」
「欲望が駄々洩れだぞ。お前に貫かれてたまるか。」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
捨て猫はエリート騎士に溺愛される
135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。
目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。
お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。
京也は総受け。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる