1,904 / 1,915
妖魔山編
1887.絶望的な状況
しおりを挟む
「先程までの勢いはどうしたのだ。ほれ、纏めてかかってきても構わんぞ?」
煌阿は自信を漲らせながら、厭味な笑みを浮かべてミスズ達に向けてそう告げるのだった。
スオウ、キョウカ、ヒノエの組長達は、視線を煌阿に向けたまま、ジリジリとゆっくりとした足取りでミスズの方へと集まっていく。
どうやら妖魔退魔師の幹部達もこのままでは煌阿に歯が立たぬとみて、この戦闘の最中に作戦を練り直そうと考えたようである。
確かに副総長のミスズや、組長格の面々も個々の力は大変優れているのだが、流石にランク『10』の中でも最上位と呼べる程の煌阿が相手では分が悪い。
現在意識を失って地面に横たわっている妖狐達の中の七耶咫でさえ、副総長のミスズやスオウ達が協力してやっと対等に渡り合えるかという程の実力差だというのに、この煌阿という相手はその七耶咫をたった数発で意識を失わせてみせたのである。
更にいえば妖魔召士達の『僧全』という『魔』の技法を用いて弱体化を図った上で、片腕を失った状態でこれだけの強さを有しているのである。
流石に作戦もなしに個々が挑んでどうにかなる範疇にはないと、スオウ達は判断した様子であった。
煌阿はミスズの元にゆっくりと集まっていくスオウ達を見て、更に笑みを深めていく。
(どうやら王琳や空の上に居る『魔神』とやらも、あの化け物の相手に手一杯でこちらには手を出せぬようだ。流石にあの化け物を見た時は終わったと思ったが、これならば俺は十分に生き延びられるだろう。あの人間共を一掃した後、再び『空間』を経由してこの山から去り、ほとぼりが冷めるを待ってから再びこの山の妖魔共を支配すればよい。今の俺は『卜部』とその血筋の人間の『力』すら自在に操れる状況にある。もう神斗も悟獄丸も翼族共も居ないのだ。この場さえどうにか出来れば、後はどうにでもなる……!)
ちらりと空を見上げた煌阿は、今も幻覚に囚われて何かと戦い続けているであろうソフィを見て、自分を取り囲んでいる人間達を一網打尽にした後に、空間内へと身を隠そうと考え始めるのだった。
…………
やがて示し合わせたかの如く、スオウ、キョウカ、ヒノエの組長達がミスズの元に集うのだった。
「副総長、どうやらもう混乱に乗じて一気に奴をやっちまうって策は駄目みたいだ」
「ええ……、ヒノエ組長。先程彼女が奴に返り討ちにされたところをみて、これはもう手に負える相手ではないと判断しています」
ヒノエの言葉にそう返しながら、ミスズは眼鏡をあげる癖が出かけたが、自分が眼鏡をかけていない事に気付いて、自分が思っている程に冷静ではないのだと自覚し直した様子だった。
「それでどうするの? 総長やあの王琳って妖狐もこちらに何度か視線を向けてはいる様子が見受けられるけど、どうやらソフィさんの方を気にしているみたいでこちらの加勢までは期待できなさそうだけれど」
「向こうもこちら以上に切迫している状況が続いているものね……」
今度はキョウカの言葉に、先程の総長達の行動を思い返して溜息を吐くミスズであった。
「それなんですけど、副総長。ソフィ殿がおかしくなったのは、どうやらあの妖魔のようですし、何とか少しの間だけでもシゲン総長にこちらの加勢を……」
「それは駄目です、スオウ組長」
「や、やはり難しいでしょうか……?」
「今のソフィ殿はとても正常な状態にあるとは言えません。いつまたあの天狗達を葬ったような恐ろしい『力』を私達に向けられるか分からない状況にあるのです。スオウ組長も先程の出来事は覚えておいででしょう? 何かあった時に何とか出来るのは、あの場に居る総長やヌー殿、それに王琳殿達だけなのです」
ミスズは冷静に現在の置かれている状況を省みて、ソフィ殿の居る場所からシゲン総長達を離させるわけにはいかないとスオウに告げるのだった。
「しっかし、このままじゃどうにもなりませんよ? チビ助の言う通り、ソフィ殿がおかしくなっちまったのは、あの妖魔神って奴のせいで間違いないだろうし、アイツさえ倒せればソフィ殿も元通りになるかもしれねぇ。ここはいちかばちか、無理にでもシゲン総長に加勢を頼むのも一つの手ではないですかね?」
スオウはヒノエがいつもの軽口で自分の事をチビ助と呼んでいるのではないという事は、真剣な表情と声色から直ぐに判断がついた為に、訂正を促すような言葉を掛けずにコクリと彼女に同意するように頷いて、ミスズの方に再び視線を向けるのだった。
――しかしそこへ件の妖魔から声が掛けられるのだった。
「オイ、いつまでぺちゃくちゃ内緒話をしているつもりだ? 向かってこないつもりなら、こっちからお前らを皆殺しにしてやる」
そう言って悩んでいたミスズ達に向けて、煌阿は殺意を孕んだ視線を向けてくるのだった。
「仕方ありませ……っ!?」
ミスズがもう猶予がないと判断して、総長に助力を申し出ますと告げようとした瞬間、恐ろしい重圧に空を見上げ始めるのだった。
そしてその行動はミスズだけではなく、殺意の視線を向けていた煌阿や、大魔王ヌーにシゲンに王琳達も同様に空を見上げていた。
――全員の視線の先は、当然に大魔王ソフィであった。
…………
煌阿は自信を漲らせながら、厭味な笑みを浮かべてミスズ達に向けてそう告げるのだった。
スオウ、キョウカ、ヒノエの組長達は、視線を煌阿に向けたまま、ジリジリとゆっくりとした足取りでミスズの方へと集まっていく。
どうやら妖魔退魔師の幹部達もこのままでは煌阿に歯が立たぬとみて、この戦闘の最中に作戦を練り直そうと考えたようである。
確かに副総長のミスズや、組長格の面々も個々の力は大変優れているのだが、流石にランク『10』の中でも最上位と呼べる程の煌阿が相手では分が悪い。
現在意識を失って地面に横たわっている妖狐達の中の七耶咫でさえ、副総長のミスズやスオウ達が協力してやっと対等に渡り合えるかという程の実力差だというのに、この煌阿という相手はその七耶咫をたった数発で意識を失わせてみせたのである。
更にいえば妖魔召士達の『僧全』という『魔』の技法を用いて弱体化を図った上で、片腕を失った状態でこれだけの強さを有しているのである。
流石に作戦もなしに個々が挑んでどうにかなる範疇にはないと、スオウ達は判断した様子であった。
煌阿はミスズの元にゆっくりと集まっていくスオウ達を見て、更に笑みを深めていく。
(どうやら王琳や空の上に居る『魔神』とやらも、あの化け物の相手に手一杯でこちらには手を出せぬようだ。流石にあの化け物を見た時は終わったと思ったが、これならば俺は十分に生き延びられるだろう。あの人間共を一掃した後、再び『空間』を経由してこの山から去り、ほとぼりが冷めるを待ってから再びこの山の妖魔共を支配すればよい。今の俺は『卜部』とその血筋の人間の『力』すら自在に操れる状況にある。もう神斗も悟獄丸も翼族共も居ないのだ。この場さえどうにか出来れば、後はどうにでもなる……!)
ちらりと空を見上げた煌阿は、今も幻覚に囚われて何かと戦い続けているであろうソフィを見て、自分を取り囲んでいる人間達を一網打尽にした後に、空間内へと身を隠そうと考え始めるのだった。
…………
やがて示し合わせたかの如く、スオウ、キョウカ、ヒノエの組長達がミスズの元に集うのだった。
「副総長、どうやらもう混乱に乗じて一気に奴をやっちまうって策は駄目みたいだ」
「ええ……、ヒノエ組長。先程彼女が奴に返り討ちにされたところをみて、これはもう手に負える相手ではないと判断しています」
ヒノエの言葉にそう返しながら、ミスズは眼鏡をあげる癖が出かけたが、自分が眼鏡をかけていない事に気付いて、自分が思っている程に冷静ではないのだと自覚し直した様子だった。
「それでどうするの? 総長やあの王琳って妖狐もこちらに何度か視線を向けてはいる様子が見受けられるけど、どうやらソフィさんの方を気にしているみたいでこちらの加勢までは期待できなさそうだけれど」
「向こうもこちら以上に切迫している状況が続いているものね……」
今度はキョウカの言葉に、先程の総長達の行動を思い返して溜息を吐くミスズであった。
「それなんですけど、副総長。ソフィ殿がおかしくなったのは、どうやらあの妖魔のようですし、何とか少しの間だけでもシゲン総長にこちらの加勢を……」
「それは駄目です、スオウ組長」
「や、やはり難しいでしょうか……?」
「今のソフィ殿はとても正常な状態にあるとは言えません。いつまたあの天狗達を葬ったような恐ろしい『力』を私達に向けられるか分からない状況にあるのです。スオウ組長も先程の出来事は覚えておいででしょう? 何かあった時に何とか出来るのは、あの場に居る総長やヌー殿、それに王琳殿達だけなのです」
ミスズは冷静に現在の置かれている状況を省みて、ソフィ殿の居る場所からシゲン総長達を離させるわけにはいかないとスオウに告げるのだった。
「しっかし、このままじゃどうにもなりませんよ? チビ助の言う通り、ソフィ殿がおかしくなっちまったのは、あの妖魔神って奴のせいで間違いないだろうし、アイツさえ倒せればソフィ殿も元通りになるかもしれねぇ。ここはいちかばちか、無理にでもシゲン総長に加勢を頼むのも一つの手ではないですかね?」
スオウはヒノエがいつもの軽口で自分の事をチビ助と呼んでいるのではないという事は、真剣な表情と声色から直ぐに判断がついた為に、訂正を促すような言葉を掛けずにコクリと彼女に同意するように頷いて、ミスズの方に再び視線を向けるのだった。
――しかしそこへ件の妖魔から声が掛けられるのだった。
「オイ、いつまでぺちゃくちゃ内緒話をしているつもりだ? 向かってこないつもりなら、こっちからお前らを皆殺しにしてやる」
そう言って悩んでいたミスズ達に向けて、煌阿は殺意を孕んだ視線を向けてくるのだった。
「仕方ありませ……っ!?」
ミスズがもう猶予がないと判断して、総長に助力を申し出ますと告げようとした瞬間、恐ろしい重圧に空を見上げ始めるのだった。
そしてその行動はミスズだけではなく、殺意の視線を向けていた煌阿や、大魔王ヌーにシゲンに王琳達も同様に空を見上げていた。
――全員の視線の先は、当然に大魔王ソフィであった。
…………
10
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる