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妖魔山編
1885.迫る世界の崩壊と、それを阻止する名のある者達
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「さぁ、見事に受けきってみせるがよい……!」
ゆらりと腕を前に出して手を翳した大魔王ソフィは、厳かにそう告げた。
次の瞬間、待機状態にあった世界に死を届ける事が可能な殲滅魔法が、一斉に地上へと放たれるのだった。
ソフィが『殲滅魔法』を放ったところを見た王琳は、そちらの方ではなく、この場に満ち満ちていた『魔力吸収の地』に視線を向けると、自身の体を本来の妖狐の姿へと変えながら『透過』を放ち始めた。
ソフィによって無意識の内に展開されていた『魔力吸収の地』と、大妖狐『王琳』の『魔』の概念技法がバチバチと音を立てながら互いの『魔』の効力が拮抗し続けていたが、そこで王琳が蟀谷に青筋を立てながら『本気』で『魔力』を費やした瞬間に、一瞬でその均衡が崩れて『魔力吸収の地』が消失してしまうのだった。
「ミスズ、スオウ、ヒノエ、キョウカ! 今だ!!」
シゲンは妖魔退魔師幹部達にそう告げると、その命令を待っていたミスズ達が一斉に煌阿に向かって得物に手をあてながら飛び掛かっていく。
そして号令を下した直後、シゲンは『金色』と『鉄紺』の『青』を併用させて身に纏いながら、音速で空から迫りくるソフィの『絶殲』に向けて思いきり刀を振り切ってみせる。
「――」(あの人間は、一体何をしようと……?)
魔神は人間の視力では確実に見通す事が出来ないであろう空の上、世界の崩壊を防ぐために『結界』を維持しながら静かに人間がやろうとしている事に意識を向けた。
そしてその魔神の眼は、次の瞬間に信じられないものを視界に捉えるのだった。
何とシゲンの放った衝撃波によって、ソフィの地上へ迫ってきていた『絶殲』の軌道を無理やりに変えながら、空の上へと押し返していくのだった。
――二つ、三つ、四つ、五つ。
際限がないかの如く、妖魔退魔師総長のシゲンから放たれる剣技によって、次々とソフィの『殲滅魔法』の軌道を変えていく。
「ふふっ、あの『魔』の技法に対して、消滅させるでも相殺させるでもなく、見事に発火の邪魔をせずに向きだけを変えるか。何と器用な真似が出来る者よ」
こちらも『金色』と『青』を纏わせた大妖狐の王琳が、ソフィの『絶殲』に対して『魔力圧』と『透過』を用いながら、見事に相殺させた後にそう独り言ちた。
どうやら王琳はシゲンのように『絶殲』の起爆をさせずに跳ね返すような器用な真似は出来ぬと判断した上で、自身の『魔』の技法である『魔力干渉』の領域の『透過』と、自身の『魔力』を重ねながら精密に相殺を促せて見せたようである。
その精密さはまるで、稀代の妖魔召士である『シギン』と見紛う程の卓越された『魔力コントロール』が齎されているのだった。
こんな真似は強引に打ち消す事を意識する『大魔王』や、空の上から一度は防ぎきってみせた『魔神』にも再現が不可能な『魔力コントロール』からの『透過』技法であった。
何よりソフィの現在の解放領域の『魔法』に対して、その全てを対象とするのではなく、あくまで衝撃を引き起こすとみられる威力を持つ場所となる『魔力』の源に対して寸分違わずの『干渉』で消失させてみせたのである。
「――」(やはり超越者達のやる事は、いつの世も常軌を逸しているようだ)
力の魔神はいつソフィの『絶殲』が地上で爆発してもいいように『結界』を全力で展開させながら、静かに口角を上げて嬉しそうに言葉を漏らすのだった。
しかし全方位といえる程に放たれているソフィの『絶殲』は、当然にシゲンや王琳だけで手に負えるだけの数にはなく、大魔王ヌーやテア達の元にも迫って来ていた。
…………
「はっ! 奴らに何とか出来て、この俺様に出来ねぇわけが……、――ねぇだろうがぁっ!!」
鋭利な歯をガチっと鳴らしながら、大魔王ヌーもまた『金色』と鮮やかな『青』と柘榴色の『紅』の三色を見事に併用させて膨大な『魔力』を頭上から迫って来ている多くの『絶殲』に向けて『スタック』を展開する。
――魔神域『時』魔法、『多次元防壁』。
現在の『三色併用』のオーラによって、基本値から大きく増幅されたヌーの『魔力値』から、根こそぎその『魔力』を用いられて七つの地点に展開された『スタック』が煌々と光が輝いたかと思えば、その『スタック』があった場所の空間に亀裂が入り、大きな穴が出現する。
そしてもう間近まで迫って来ていた『絶殲』が、そのヌーの作り出した『穴』の中へと吸い込まれるように入っていく。
本来の神域領域の『次元防壁』であれば、このまま別の次元の彼方へと相手の『魔』の技法を追いやるだけなのだが、ここからヌーの編み出したこの『多次元防壁』という新魔法の本領が発揮される――。
――何と、別の場所に設置された『スタック』ポイントから同様に大きな穴が出現したかと思えば、その穴から先程の『絶殲』が出現して、他の場所へと着弾しようと迫ってきていた『絶殲』に向かって直撃して相殺されたのだ。
それも一つや二つではなく、用意された七つ全ての『スタックポイント』が同様の働きを見せて、残されていた空の上から放たれていた『絶殲』全てが、大魔王ヌーの『多次元防壁』によって全て互いに同じ出力同士の『絶殲』が相殺し合って大爆発を巻き起こすのだった。
当然、相殺されたからといってそこで終わりではないが、互いの爆発の衝撃の瞬間に、その場所に『結界』が展開されて見事に縮小された殲滅規模の『絶殲』を防いでみせた。
――どうやらこの『結界』も力の魔神のもので間違いないだろう。
天上界に君臨する守りの要である『力の魔神』が、今の自身の最大の力で『固有結界』を展開して、神経を注いでこの場を注視している以上は、易々と外に衝撃を来す真似をさせる事はない。
「ハッ――、どんな……、もんだよ、クソ、やろう……!」
「――」(ヌー! すげぇよ、流石は私のヌーだ!)
…………
「――」(流石は私の可愛いテアと契約をしているだけはあるわね。貴方の働きを認めましょう、魔族『ヌー』)
『多次元防壁』によって『絶殲』と『絶殲』の相殺によって生じた余波を見事に『結界』で防いだ力の魔神は、大魔王ヌーの新と呼べる『時魔法』の効力と、テアの契約者に相応しい者の働きを認めたのだった。
そして地上へ降り注いだ数多の大魔王ソフィの『絶殲』は、こうして彼らの働きによって全ての被弾を防ぎ、ひとまずの世界の崩壊と、今後に展開される予定があったであろう天上界からの『統一執行』を未然に防いだ形となった。
……
……
……
ゆらりと腕を前に出して手を翳した大魔王ソフィは、厳かにそう告げた。
次の瞬間、待機状態にあった世界に死を届ける事が可能な殲滅魔法が、一斉に地上へと放たれるのだった。
ソフィが『殲滅魔法』を放ったところを見た王琳は、そちらの方ではなく、この場に満ち満ちていた『魔力吸収の地』に視線を向けると、自身の体を本来の妖狐の姿へと変えながら『透過』を放ち始めた。
ソフィによって無意識の内に展開されていた『魔力吸収の地』と、大妖狐『王琳』の『魔』の概念技法がバチバチと音を立てながら互いの『魔』の効力が拮抗し続けていたが、そこで王琳が蟀谷に青筋を立てながら『本気』で『魔力』を費やした瞬間に、一瞬でその均衡が崩れて『魔力吸収の地』が消失してしまうのだった。
「ミスズ、スオウ、ヒノエ、キョウカ! 今だ!!」
シゲンは妖魔退魔師幹部達にそう告げると、その命令を待っていたミスズ達が一斉に煌阿に向かって得物に手をあてながら飛び掛かっていく。
そして号令を下した直後、シゲンは『金色』と『鉄紺』の『青』を併用させて身に纏いながら、音速で空から迫りくるソフィの『絶殲』に向けて思いきり刀を振り切ってみせる。
「――」(あの人間は、一体何をしようと……?)
魔神は人間の視力では確実に見通す事が出来ないであろう空の上、世界の崩壊を防ぐために『結界』を維持しながら静かに人間がやろうとしている事に意識を向けた。
そしてその魔神の眼は、次の瞬間に信じられないものを視界に捉えるのだった。
何とシゲンの放った衝撃波によって、ソフィの地上へ迫ってきていた『絶殲』の軌道を無理やりに変えながら、空の上へと押し返していくのだった。
――二つ、三つ、四つ、五つ。
際限がないかの如く、妖魔退魔師総長のシゲンから放たれる剣技によって、次々とソフィの『殲滅魔法』の軌道を変えていく。
「ふふっ、あの『魔』の技法に対して、消滅させるでも相殺させるでもなく、見事に発火の邪魔をせずに向きだけを変えるか。何と器用な真似が出来る者よ」
こちらも『金色』と『青』を纏わせた大妖狐の王琳が、ソフィの『絶殲』に対して『魔力圧』と『透過』を用いながら、見事に相殺させた後にそう独り言ちた。
どうやら王琳はシゲンのように『絶殲』の起爆をさせずに跳ね返すような器用な真似は出来ぬと判断した上で、自身の『魔』の技法である『魔力干渉』の領域の『透過』と、自身の『魔力』を重ねながら精密に相殺を促せて見せたようである。
その精密さはまるで、稀代の妖魔召士である『シギン』と見紛う程の卓越された『魔力コントロール』が齎されているのだった。
こんな真似は強引に打ち消す事を意識する『大魔王』や、空の上から一度は防ぎきってみせた『魔神』にも再現が不可能な『魔力コントロール』からの『透過』技法であった。
何よりソフィの現在の解放領域の『魔法』に対して、その全てを対象とするのではなく、あくまで衝撃を引き起こすとみられる威力を持つ場所となる『魔力』の源に対して寸分違わずの『干渉』で消失させてみせたのである。
「――」(やはり超越者達のやる事は、いつの世も常軌を逸しているようだ)
力の魔神はいつソフィの『絶殲』が地上で爆発してもいいように『結界』を全力で展開させながら、静かに口角を上げて嬉しそうに言葉を漏らすのだった。
しかし全方位といえる程に放たれているソフィの『絶殲』は、当然にシゲンや王琳だけで手に負えるだけの数にはなく、大魔王ヌーやテア達の元にも迫って来ていた。
…………
「はっ! 奴らに何とか出来て、この俺様に出来ねぇわけが……、――ねぇだろうがぁっ!!」
鋭利な歯をガチっと鳴らしながら、大魔王ヌーもまた『金色』と鮮やかな『青』と柘榴色の『紅』の三色を見事に併用させて膨大な『魔力』を頭上から迫って来ている多くの『絶殲』に向けて『スタック』を展開する。
――魔神域『時』魔法、『多次元防壁』。
現在の『三色併用』のオーラによって、基本値から大きく増幅されたヌーの『魔力値』から、根こそぎその『魔力』を用いられて七つの地点に展開された『スタック』が煌々と光が輝いたかと思えば、その『スタック』があった場所の空間に亀裂が入り、大きな穴が出現する。
そしてもう間近まで迫って来ていた『絶殲』が、そのヌーの作り出した『穴』の中へと吸い込まれるように入っていく。
本来の神域領域の『次元防壁』であれば、このまま別の次元の彼方へと相手の『魔』の技法を追いやるだけなのだが、ここからヌーの編み出したこの『多次元防壁』という新魔法の本領が発揮される――。
――何と、別の場所に設置された『スタック』ポイントから同様に大きな穴が出現したかと思えば、その穴から先程の『絶殲』が出現して、他の場所へと着弾しようと迫ってきていた『絶殲』に向かって直撃して相殺されたのだ。
それも一つや二つではなく、用意された七つ全ての『スタックポイント』が同様の働きを見せて、残されていた空の上から放たれていた『絶殲』全てが、大魔王ヌーの『多次元防壁』によって全て互いに同じ出力同士の『絶殲』が相殺し合って大爆発を巻き起こすのだった。
当然、相殺されたからといってそこで終わりではないが、互いの爆発の衝撃の瞬間に、その場所に『結界』が展開されて見事に縮小された殲滅規模の『絶殲』を防いでみせた。
――どうやらこの『結界』も力の魔神のもので間違いないだろう。
天上界に君臨する守りの要である『力の魔神』が、今の自身の最大の力で『固有結界』を展開して、神経を注いでこの場を注視している以上は、易々と外に衝撃を来す真似をさせる事はない。
「ハッ――、どんな……、もんだよ、クソ、やろう……!」
「――」(ヌー! すげぇよ、流石は私のヌーだ!)
…………
「――」(流石は私の可愛いテアと契約をしているだけはあるわね。貴方の働きを認めましょう、魔族『ヌー』)
『多次元防壁』によって『絶殲』と『絶殲』の相殺によって生じた余波を見事に『結界』で防いだ力の魔神は、大魔王ヌーの新と呼べる『時魔法』の効力と、テアの契約者に相応しい者の働きを認めたのだった。
そして地上へ降り注いだ数多の大魔王ソフィの『絶殲』は、こうして彼らの働きによって全ての被弾を防ぎ、ひとまずの世界の崩壊と、今後に展開される予定があったであろう天上界からの『統一執行』を未然に防いだ形となった。
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