最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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妖魔山編

1880.大魔王ソフィと、天上界の魔神の力

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「――」(、私の判断で『結界』を展開させてもらう)

 何度かソフィに声を掛けた魔神だが、どうやら想像以上に『呪法』による幻覚作用が強く、ソフィから返事が戻ってくることがなかった為に、彼女は独自の判断でこの下界で『力』を使う事を決めたのであった。

「な、何だこいつは……?」

 先程までソフィの圧倒的な力の前に呆然と立ち尽くしていた煌阿だが、急にこの場に現れた『白いオーラ』に包まれた規格外の存在の出現に、我を取り戻した様子で言葉を発するのだった。

「あれは天上界の神々だ。ソフィの……いや、そこに居る黒羽が使役していた」

 テアとヌーを無事に『次元の狭間』の穴から逃した後、ゆっくりと煌阿達の元まで戻ってきた王琳がそう告げた。

「神だと……? 馬鹿な事を言うな! そんな存在がこんな場所に居る筈が……!」

「現実を受け入れろ。お前が作り出したこの空間であのように『力』を行使しようと、何らかの『魔』の技法の準備段階に入っている魔神を見て、お前も内心では理解しているのだろう?」

「ええいっ! 少し黙っていろ『王琳』、ようやく俺は外に出られたのだ! 俺は俺を裏切った連中を皆殺しにした後に、この山を完全に掌握しなければならぬ! 天上界の神だか、魔神だか知らぬが、俺の野望を邪魔するのならば全員排除してやる!!」

「そうか……。

 自身の野望を口にした煌阿に、王琳はそう言葉を吐き捨てて距離を取るように後ずさった。

 どうやらソフィにも煌阿にも加勢するつもりはないらしく、あくまで王琳は『傍観者』として、この場で観察を行おうとする様子であった。

 そんな王琳を無視した煌阿は、まずはこの場に乱入してきた『魔神』に照準を合わせたようで、撃退しようとばかりに『魔』の技法の行使を始めた。

 ――魔神域『時』魔法、『間隙幽閉かんげきゆうへい』。

 耶王美やエヴィ達を今も閉じ込めて苦しめている『結界』を力の魔神に向けて放った煌阿だが、その視線の先に居る魔神は微動だにせずに、この後に起こるであろう出来事を確信して煌阿を眺めていた。

(何だ……? 何故何も抵抗しようとはせずに……、ぐっ!?)

 魔神の様子を観察していた煌阿は、そんな思案中に唐突に自身の『魔力』がごっそりと失う感覚に苛まれるのだった。

「――」(愚かな……。今この場はソフィの『魔法』の影響に満ちている。先に創り出していたこの『空間』自体はまだ保っていられている様子だが、新たに『魔力』を用いようとすれば強制的に解除されるのは当たり前の事だ)

(※今回はソフィの『魔法』によって、強制的に煌阿の『間隙幽閉』を解除されたが、そもそも『魔神』に『時魔法タイム・マジック』は通用しない)

 急に胸辺りを押さえながら苦しみ始めた煌阿に、嘲弄しながら現状を説明する魔神だった。

 しかし当然に神格を有する魔神の言葉が煌阿には通じない為、何が起きたのかを理解せぬままに魔神を睨みつけていた。

「――」(しかしそれは今の私にも言える事ね。どうやらソフィは非常に強力な幻覚症状に囚われているようだけど、この空間に満ちている『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』が、私の干渉さえも遠ざけてしまう。ひとまずは――)

 魔神が困ったような表情を浮かべた後、ソフィの頬に優しく口付けを行うと、突如としてこの『次元の狭間』から姿を消した。

「むっ!」

 王琳は突如として姿を消した魔神に気付き、一瞬だけ『魔力感知』で居場所を追おうとしたが、直ぐにその考えを取りやめた。

 ――大魔王ソフィの強さがこれまでに比べて、明らかに一段階上がったからである。

 つまり大魔王ソフィの自身の出せるであろうと考える『限界』のまでが開放されたのである――。

「クックック……ッ! さぁ、これからが本番だ……!」

 いったい幻覚の中でのは、

 遂にこの空間全体に亀裂が入り、まるで硝子が割れる寸前のようにパキパキと音を立てていき、ソフィの笑い声と共に一気に『次元の狭間』という名の空間の道が崩壊を始めた。

 真っ暗闇であった『次元の狭間』の空間が失われて、再びソフィ達の居る場所に妖魔山の景色が戻り、その場に居たシゲンやエイジ達といった者達は、唐突に現れたソフィ達に驚く表情を見せるのだった。

 ――しかしこの場には、一足先に『次元の狭間』から出てきていた『力の魔神』の姿はなかった。

 何故ならその魔神は、コウヒョウの町やこの辺り一帯の森どころか、サカダイにケイノトの町がに移動を行っていたからである。

「――」(もう現在のソフィが展開している『力』では、いつ執行者が現れてもおかしくない状況にある。少しでも天上界の決定を遅らせる為に、この私が全力で『結界』を展開し、この世界そのものの保護を行うしかない……!)

 力の魔神は普段のような余裕ある表情をしておらず、まるでこれから死地へと臨む戦士のような顔であった。

 それもその筈、今の大魔王ソフィが展開している『絶殲アナイ・アレイト』が今すぐにでも放たれてしまえば、余波だけでこの世界に存在する大陸の大半が海の底へと沈んでしまうだろう。

 もし『シギン』がこの場に居れば、彼の『結界』規模であれば局所的にソフィの『力』の一部を防ぐ事は可能だろうが、それでも余波で世界に対して起きる影響までは止められない。

 大魔王ソフィの『絶殲アナイ・アレイト』を防ぐには、もう『力の魔神』が全力を出して止めるしかない。

「――」(願わくばこの私が止められる間に、ソフィの意識が正常に戻りますように……!)

 力の魔神がそう願い『魔力』が一際大きくなった時、この世界全体が無機質な白い空間に覆われた。

 それはつまり『力の魔神』の『固有結界』が、ノックスの世界全域に展開された証拠であった。

 これより大魔王ソフィの『力』から世界を守る為、に居る『力の魔神』が
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