1,890 / 1,985
妖魔山編
1873.いつかのような両組織の共闘と、妖魔山の妖魔達
しおりを挟む
王琳やヌー達が『次元の狭間』の中へと『概念跳躍』を用いて消え去った後『神斗』の姿をした『煌阿』の命令を受けた妖魔達が動き出した。
まず『本鵺』が大きく息を吸いこんだかと思えば、鵺特有の『呪詛』を場に齎し始める。
ひゅう、ひゅうという息を吸いこむ音と『呪い』の言葉が交互に囁かれ始めるが、徐々に吸い込む音と声が同時に合わさるかのように周囲に伝播していく。どうやらその吸い込み音が『呪詛』を相手に伝える上で重要な因子となるのだろう。
シゲンやミスズのような妖魔退魔師達は、 『本鵺』の『呪い』が始まると同時にその場から離れて『本鵺』の正面を避けるように迂回し始める。
逆にその場から動かずに正面を維持し続けたのが、妖魔召士の『ゲンロク』と『エイジ』達であった。どうやら彼らは『本鵺』の呪詛に対して、捉術といった『魔』の技法を用いて直接封じようという判断なのだろう。
エイジが二本の指を口元に持っていきながら、こちらも『本鵺』の呪いと見紛うように詠唱を始めると、その背後からゲンロクが高速で手印を結び始めていく。
やがて『本鵺』の影から禍々しい紫色の煙のようなものが噴出し始めたかと思うと、徐々に空気に混ざりあうように溶けていき、闇となってエイジ達を覆い隠し始めていくのだった。
「エイジ、こちらの準備は整ったぞ! いつでも発動可能じゃ!」
「こちらもだ! ゲンロク、直ぐに小生に合わせよ!」
互いに掛け合いを行い、息を合わせるように『捉術』を重ねていく。
エイジの前に『結界』が張られたかと思えば、彼そのものを覆い隠そうとしていた煙をその『結界』がはねのけてみせる。
続いて詠唱を終えたエイジが、ゲンロクの張った『結界』の内側からその『結界』ごと貫くように『魔』の技法である『捉術』を展開する。
――僧全捉術、『雲散絶疫掌』。
ゲンロクの作った『結界』の内側から放たれたエイジの『捉術』によって、迫りくる『本鵺』の『呪詛』の類であろう紫色の煙を晴らしていく。
それを見た『本鵺』は訝しそうに眉を寄せると、直ぐにその場から離れていく。
しかし離れながらもまた攻撃を行おうとしているのか、ひゅうひゅうという音がエイジ達の耳に届いてくる。
「ゲンロク! 奴は下がりながら追撃を準備しているようだが、小生の正面からは動いておらぬ!」
「応、ワシに後は任せるがよいわぁっ!」
ゲンロクの言葉を聴いたエイジは前を向いたまま、ゲンロクの次なる一手の邪魔にならぬように真横へと勢いよく飛んで移動する。
次の瞬間、エイジの『捉術』によって雲散して場に『魔力』だけが残った、本鵺の一度目に放った『呪詛』そのものに対して準備していた『捉術』をゲンロクは放った。
――僧全捉術、『返魔鏡面掌』。
紫色をしていた煙がエイジによってただの砂塵に変えられた直後、場に残った本鵺の『魔力』を消え去らぬように固定させるかの如く、青い光を伴ったゲンロクの『捉術』が放たれた。
そして本鵺の『魔力』そのものが、ゲンロクの捉術によって持ち主の元に帰っていくかのように勢い良く戻って行く。
しかしゲンロクによって跳ね返された本鵺の『魔力』は、その持ち主であった本鵺を消し去ろうとするかの如く、威力と勢いを持っていた。
どうやら本鵺の『呪詛』を目的として使われた『魔力』が、ゲンロクの『捉術』によって完全にその本鵺を消し去る『魔力圧』へと変貌を遂げたようであった。
しかし今度は本鵺が、ひゅう、ひゅうという音と共に再びその跳ね返された『魔力圧』を相殺するかの如く、新たな『呪詛』で迎え撃つのだった。
再び噴出された紫色の煙が『魔力圧』を包み込むと、音もなくしかし勢いは殺された『魔力圧』が、今度こそ完全に跳ね返される事もなく雲散してやがては消滅していった。
だが、再び砂塵と化したその煙が晴れていく最中、移動を行い本鵺の間合いに入り込んでいた妖魔退魔師の『スオウ』が、一刀のもとに斬り伏せようと得物をその場で振り切ってみせる。
確実に本鵺を殺ったと考えたスオウだが、その手応えは予想していたものとは異なっていた。
「残念だったな、チビの人間」
『狼人』本来の姿に戻った事で全身が体毛に包まれている『悪虚』が、そのスオウの腕を丸太のような太い腕で掴んでみせると、鵺の身体へと戻った事でスオウの衝撃波から身をかわす事に成功した『本鵺』が、何事もなくそのスオウの間合いから離れていく。
そしてその場に残ったスオウと悪虚の更に背後から、二人の妖魔退魔師が現れ始める。
「残念なのは――」
「お前の方だぁっ!!」
スオウの腕を掴んでいる悪虚の腕を妖魔退魔師のキョウカが切り落とすと同時、真横から更に妖魔退魔師のヒノエの太刀が『狼人』の固い皮膚ごと胴体を豆腐のように真っ二つに切断して見せた。
「かっ――!」
悪虚の恨みがこもった視線を真っ向から受け止めつつヒノエは、返す刀を悪虚の首に向けて放つ。
そしてその恐ろしい程までのヒノエの腕力によって、首はあっさりと胴体から刎ね飛ばされるのだった。
「スオウ組長! 今すぐにそこから離れなさい!!」
間髪入れずに離れた場所からミスズの声が場に響き渡る――。
その声にはっとしたスオウは、後ろを確認すらせずにミスズに言われた通りに前方に向けて回転受け身を取るのだった。
その直後――。
悪虚に気を取られていたスオウを背後から狙っていた『本鵺』目掛けて、瑠璃色のオーラを纏ったミスズが『霞の構え』から一直線に刺突してみせるのだった。
……
……
……
まず『本鵺』が大きく息を吸いこんだかと思えば、鵺特有の『呪詛』を場に齎し始める。
ひゅう、ひゅうという息を吸いこむ音と『呪い』の言葉が交互に囁かれ始めるが、徐々に吸い込む音と声が同時に合わさるかのように周囲に伝播していく。どうやらその吸い込み音が『呪詛』を相手に伝える上で重要な因子となるのだろう。
シゲンやミスズのような妖魔退魔師達は、 『本鵺』の『呪い』が始まると同時にその場から離れて『本鵺』の正面を避けるように迂回し始める。
逆にその場から動かずに正面を維持し続けたのが、妖魔召士の『ゲンロク』と『エイジ』達であった。どうやら彼らは『本鵺』の呪詛に対して、捉術といった『魔』の技法を用いて直接封じようという判断なのだろう。
エイジが二本の指を口元に持っていきながら、こちらも『本鵺』の呪いと見紛うように詠唱を始めると、その背後からゲンロクが高速で手印を結び始めていく。
やがて『本鵺』の影から禍々しい紫色の煙のようなものが噴出し始めたかと思うと、徐々に空気に混ざりあうように溶けていき、闇となってエイジ達を覆い隠し始めていくのだった。
「エイジ、こちらの準備は整ったぞ! いつでも発動可能じゃ!」
「こちらもだ! ゲンロク、直ぐに小生に合わせよ!」
互いに掛け合いを行い、息を合わせるように『捉術』を重ねていく。
エイジの前に『結界』が張られたかと思えば、彼そのものを覆い隠そうとしていた煙をその『結界』がはねのけてみせる。
続いて詠唱を終えたエイジが、ゲンロクの張った『結界』の内側からその『結界』ごと貫くように『魔』の技法である『捉術』を展開する。
――僧全捉術、『雲散絶疫掌』。
ゲンロクの作った『結界』の内側から放たれたエイジの『捉術』によって、迫りくる『本鵺』の『呪詛』の類であろう紫色の煙を晴らしていく。
それを見た『本鵺』は訝しそうに眉を寄せると、直ぐにその場から離れていく。
しかし離れながらもまた攻撃を行おうとしているのか、ひゅうひゅうという音がエイジ達の耳に届いてくる。
「ゲンロク! 奴は下がりながら追撃を準備しているようだが、小生の正面からは動いておらぬ!」
「応、ワシに後は任せるがよいわぁっ!」
ゲンロクの言葉を聴いたエイジは前を向いたまま、ゲンロクの次なる一手の邪魔にならぬように真横へと勢いよく飛んで移動する。
次の瞬間、エイジの『捉術』によって雲散して場に『魔力』だけが残った、本鵺の一度目に放った『呪詛』そのものに対して準備していた『捉術』をゲンロクは放った。
――僧全捉術、『返魔鏡面掌』。
紫色をしていた煙がエイジによってただの砂塵に変えられた直後、場に残った本鵺の『魔力』を消え去らぬように固定させるかの如く、青い光を伴ったゲンロクの『捉術』が放たれた。
そして本鵺の『魔力』そのものが、ゲンロクの捉術によって持ち主の元に帰っていくかのように勢い良く戻って行く。
しかしゲンロクによって跳ね返された本鵺の『魔力』は、その持ち主であった本鵺を消し去ろうとするかの如く、威力と勢いを持っていた。
どうやら本鵺の『呪詛』を目的として使われた『魔力』が、ゲンロクの『捉術』によって完全にその本鵺を消し去る『魔力圧』へと変貌を遂げたようであった。
しかし今度は本鵺が、ひゅう、ひゅうという音と共に再びその跳ね返された『魔力圧』を相殺するかの如く、新たな『呪詛』で迎え撃つのだった。
再び噴出された紫色の煙が『魔力圧』を包み込むと、音もなくしかし勢いは殺された『魔力圧』が、今度こそ完全に跳ね返される事もなく雲散してやがては消滅していった。
だが、再び砂塵と化したその煙が晴れていく最中、移動を行い本鵺の間合いに入り込んでいた妖魔退魔師の『スオウ』が、一刀のもとに斬り伏せようと得物をその場で振り切ってみせる。
確実に本鵺を殺ったと考えたスオウだが、その手応えは予想していたものとは異なっていた。
「残念だったな、チビの人間」
『狼人』本来の姿に戻った事で全身が体毛に包まれている『悪虚』が、そのスオウの腕を丸太のような太い腕で掴んでみせると、鵺の身体へと戻った事でスオウの衝撃波から身をかわす事に成功した『本鵺』が、何事もなくそのスオウの間合いから離れていく。
そしてその場に残ったスオウと悪虚の更に背後から、二人の妖魔退魔師が現れ始める。
「残念なのは――」
「お前の方だぁっ!!」
スオウの腕を掴んでいる悪虚の腕を妖魔退魔師のキョウカが切り落とすと同時、真横から更に妖魔退魔師のヒノエの太刀が『狼人』の固い皮膚ごと胴体を豆腐のように真っ二つに切断して見せた。
「かっ――!」
悪虚の恨みがこもった視線を真っ向から受け止めつつヒノエは、返す刀を悪虚の首に向けて放つ。
そしてその恐ろしい程までのヒノエの腕力によって、首はあっさりと胴体から刎ね飛ばされるのだった。
「スオウ組長! 今すぐにそこから離れなさい!!」
間髪入れずに離れた場所からミスズの声が場に響き渡る――。
その声にはっとしたスオウは、後ろを確認すらせずにミスズに言われた通りに前方に向けて回転受け身を取るのだった。
その直後――。
悪虚に気を取られていたスオウを背後から狙っていた『本鵺』目掛けて、瑠璃色のオーラを纏ったミスズが『霞の構え』から一直線に刺突してみせるのだった。
……
……
……
10
お気に入りに追加
440
あなたにおすすめの小説

スライムばかり食べてた俺は、今日から少し優雅な冒険者生活を始めます。
いけお
ファンタジー
人違いで異世界に飛ばされてしまった佐藤 始(さとう はじめ)は、女神システィナからとりあえず悪い物を食べて死ななければ大丈夫だろうと【丈夫な胃袋】と【共通言語】を与えられ放り出されてしまう。
出身地不明で一銭も持たずに現れた彼を怪しんだ村の住人達は簡単な仕事の紹介すら断る有様で餓死が目の前に迫った時、始は空腹のあまり右手で掴んだ物を思わず口に入れてしまった。
「何だこれ?結構美味いぞ」
知らずに食べていた物は何とスライム、弱って死ぬ寸前だった始を捕食しようと集まっていたのだった。食べられると分かった瞬間スライム達がごちそうに早代わり、始のスライムを食べる生活が始まった。
それから数年後、農作物を荒らすスライムを食べて退治してくれる始をいつの間にか村人達は受け入れていた。しかし、この頃になると始は普通のスライムだけの食生活に飽きてしまい誰も口にしない様な物まで陰でこっそり食べていた・・・。数え切れない程のスライムを胃袋に収めてきたそんなある日の事、彼は食べたスライム達からとんでもない能力を幾つも手に入れていた事に気が付いた。
始はこの力を活かす為に町に移住すると、悪徳領主や商人達が不当に得た金品を奪う冒険者生活を始めるのだった・・・。
仕事中の空いている時間に物語を考えているので、更新は不定期です。また、感想や質問にも出来る限り答えるつもりでいますが回答出来ない場合も有ります。多少の強引な設定や進行も有るかもしれませんが、そこは笑って許してください。
この作品は 小説家になろう ツギクル でも投稿しております。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』
ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。
誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる