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妖魔山編
1868.ソフィと行動を共にする妖狐達
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イバキや動忍鬼達と最後の挨拶を交わした後、門の外に出たソフィ達は、集落近くの森の中で待っていた妖狐の『王琳』達と合流を果たした。
「待たせてすまなかったな」
「いや、構わない。それでどうすればいい? 山の調査を行いたいという事だったが、この山を本当の意味で管理している妖魔神の居るところへ案内すればいいのか?」
「うむ。どうやらこの者達が言うには、その妖魔神の神斗という者が居る場所に我の仲間がいるようなのだ。お主にとっては裏切りをさせてしまう事になるやもしれぬが、構わぬだろうか」
この山の管理を行っているという事は、つまりは妖魔達のボスの立場に居るという事で間違いないだろう。そんな場所に、この山に生息する王琳という妖魔に案内させる事にソフィは、少しばかり心苦しく感じて王琳に確認をとるのだった。
「ふふ、そんな心配は要らぬよ。確かに妖魔神である神斗殿には色々と世話になってはいるが、俺は別に神斗殿に忠誠を誓っているわけじゃない。まぁ単なる仲間というわけでもないが……。別に俺が神斗殿の元へお前らを案内したところで神斗殿も怒りはしないだろうよ」
そう話す王琳の口振りをみるに、どうやら単なる主従関係ではなさそうではあるが、本心だという事も同時に伝わってくるソフィであった。
「そうか、ならばお主に案内を頼みたい」
「ああ、だが分かっているな? この俺に案内までさせる以上は、全力で俺と戦ってもらうぞ? 少しでも約束を違えたその時は命を覚悟してもらう」
「クックック、分かっている。だが、そこまで言いきった以上は死んでも文句を言うなよ?」
ソフィが挑発めいてそう口にすると、王琳は嬉しそうに笑みを浮かべながら首を縦に振るのだった。
(ねね、六阿狐! 王琳様と喋っているあのイケメン誰だろ?)
(今までアンタと一緒に居たんだから私に分かる筈ないでしょ? でも王琳様があんな風に笑っているところをみるのは久しぶりかも)
(だよね! やれやれって感じの愛想笑いじゃなくて、本当に嬉しそうにしていらっしゃるもの! つまり王琳様はあの人に本気で興味持っているっ……、っていうか待って、やばい本当にかっこよくない……?)
(うんうん、後でこっそり二人で近づいて話し掛けちゃおうよ!)
こそこそと自分達の主が親し気に会話するところを聞いていた妖狐の『五立楡』と『六阿狐』は、相手の人間に見えるソフィの事を気に入った様子で話し始める。そして隣に立っていた七耶咫が、二人の会話を聞いて深く溜息を吐くのだった。
その声は妖魔召士やウガマといった人間達には聞こえてはいない様子だったが、当然に魔族であるヌーやソフィ本人には聞こえていたのだが、こちらも反応を示さずに聞こえないフリを続けていた。
「ふふっ、では案内するからついてきてくれ」
どうやら王琳にも自分の部下達の声が聴こえていたのだろう。意味ありげな笑みと視線をソフィに向けながらそう告げるのだった。
……
……
……
それから鬼人族の縄張りを抜けたソフィ達は、山の頂を目指して再び天狗族たちの縄張りのある中腹付近に到達するのだった。
しかしそこで直ぐに、王琳や他の妖狐達が耳を動かしながら反応を示すのだった。
「王琳様」
「ああ、分かっている……が、すこし様子がおかしいようだな」
「ええ、私共であればともかく、王琳様がこの場に居るにも拘らず、これみよがしに気配を出しながら近づいてくる者がいるというのは珍しいです」
「王琳様、七耶咫様、それもこの規模の数だと……。明らかに我々に敵意を向けてきていると思われます」
「妾達だけに向けるならいざ知らず、王琳様に対して敵意を向けるなど何て不敬な……!!」
最初に気配に気付いた七耶咫が王琳に声を掛けると、直ぐに五立楡や六阿狐もその気配に気づいた後、向けられた敵意に対して、威嚇するように『青』のオーラを纏わせ始めるのだった。
「隠れている者共、今すぐに出てこい。三秒待って出てこなければ貴様らの首を刎ね飛ばすぞ」
眼光を鋭くさせながら王琳がそう告げると、直ぐに茂みの中からガサガサと音を立てながら、複数の妖魔達がこの場に姿を見せ始めるのだった。
「待たせてすまなかったな」
「いや、構わない。それでどうすればいい? 山の調査を行いたいという事だったが、この山を本当の意味で管理している妖魔神の居るところへ案内すればいいのか?」
「うむ。どうやらこの者達が言うには、その妖魔神の神斗という者が居る場所に我の仲間がいるようなのだ。お主にとっては裏切りをさせてしまう事になるやもしれぬが、構わぬだろうか」
この山の管理を行っているという事は、つまりは妖魔達のボスの立場に居るという事で間違いないだろう。そんな場所に、この山に生息する王琳という妖魔に案内させる事にソフィは、少しばかり心苦しく感じて王琳に確認をとるのだった。
「ふふ、そんな心配は要らぬよ。確かに妖魔神である神斗殿には色々と世話になってはいるが、俺は別に神斗殿に忠誠を誓っているわけじゃない。まぁ単なる仲間というわけでもないが……。別に俺が神斗殿の元へお前らを案内したところで神斗殿も怒りはしないだろうよ」
そう話す王琳の口振りをみるに、どうやら単なる主従関係ではなさそうではあるが、本心だという事も同時に伝わってくるソフィであった。
「そうか、ならばお主に案内を頼みたい」
「ああ、だが分かっているな? この俺に案内までさせる以上は、全力で俺と戦ってもらうぞ? 少しでも約束を違えたその時は命を覚悟してもらう」
「クックック、分かっている。だが、そこまで言いきった以上は死んでも文句を言うなよ?」
ソフィが挑発めいてそう口にすると、王琳は嬉しそうに笑みを浮かべながら首を縦に振るのだった。
(ねね、六阿狐! 王琳様と喋っているあのイケメン誰だろ?)
(今までアンタと一緒に居たんだから私に分かる筈ないでしょ? でも王琳様があんな風に笑っているところをみるのは久しぶりかも)
(だよね! やれやれって感じの愛想笑いじゃなくて、本当に嬉しそうにしていらっしゃるもの! つまり王琳様はあの人に本気で興味持っているっ……、っていうか待って、やばい本当にかっこよくない……?)
(うんうん、後でこっそり二人で近づいて話し掛けちゃおうよ!)
こそこそと自分達の主が親し気に会話するところを聞いていた妖狐の『五立楡』と『六阿狐』は、相手の人間に見えるソフィの事を気に入った様子で話し始める。そして隣に立っていた七耶咫が、二人の会話を聞いて深く溜息を吐くのだった。
その声は妖魔召士やウガマといった人間達には聞こえてはいない様子だったが、当然に魔族であるヌーやソフィ本人には聞こえていたのだが、こちらも反応を示さずに聞こえないフリを続けていた。
「ふふっ、では案内するからついてきてくれ」
どうやら王琳にも自分の部下達の声が聴こえていたのだろう。意味ありげな笑みと視線をソフィに向けながらそう告げるのだった。
……
……
……
それから鬼人族の縄張りを抜けたソフィ達は、山の頂を目指して再び天狗族たちの縄張りのある中腹付近に到達するのだった。
しかしそこで直ぐに、王琳や他の妖狐達が耳を動かしながら反応を示すのだった。
「王琳様」
「ああ、分かっている……が、すこし様子がおかしいようだな」
「ええ、私共であればともかく、王琳様がこの場に居るにも拘らず、これみよがしに気配を出しながら近づいてくる者がいるというのは珍しいです」
「王琳様、七耶咫様、それもこの規模の数だと……。明らかに我々に敵意を向けてきていると思われます」
「妾達だけに向けるならいざ知らず、王琳様に対して敵意を向けるなど何て不敬な……!!」
最初に気配に気付いた七耶咫が王琳に声を掛けると、直ぐに五立楡や六阿狐もその気配に気づいた後、向けられた敵意に対して、威嚇するように『青』のオーラを纏わせ始めるのだった。
「隠れている者共、今すぐに出てこい。三秒待って出てこなければ貴様らの首を刎ね飛ばすぞ」
眼光を鋭くさせながら王琳がそう告げると、直ぐに茂みの中からガサガサと音を立てながら、複数の妖魔達がこの場に姿を見せ始めるのだった。
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