1,883 / 1,906
妖魔山編
1866.煌阿が見たことのない魔の技法
しおりを挟む
「もう大丈夫だよ、ありがとう」
ようやく落ち着きを取り戻したエヴィは、彼女に礼を口にして自ら彼女の胸の内から離れるのだった。
「ソフィっていうお前の主と私の主である王琳様は、きっと近しい感情を抱いて生きている。きっとよく話し合えば私とアンタみたいに直ぐに打ち解けられると思う……。そこで何だが、もしここから無事に出られたらお前も私の主と会ってみてくれないか?」
普段の耶王美であれば、妖狐以外の者を主に会わせようとは決してしないだろう。しかしどうしても耶王美は、自分と同じ考え方を持つエヴィを主に会わせてみたくなったようである。
「ああ、いいよ。というか僕も耶王美をソフィ様に会わせたいなって考えていたところだったんだ」
そう言って笑みを浮かべるエヴィに満ち足りていくような、どこか気が安らいでいく感覚を覚える耶王美だった。
「ふふっ、やはり私達はとても相性が良い。お前と出会えてとても嬉しいよ」
耶王美が屈託のない笑顔を見せながらそう言うと、エヴィもにこりと笑うのだった。
そしてそんな二人が笑みを浮かべあっているところに、突如として二人の近くの場所にある空間に亀裂が入り始めたかと思うと、そこから神斗の見た目をした煌阿が出現を始めるのだった。
朗らかな気持ちを抱いていた二人は、直ぐにその存在に気付いて同時に振り返るのだった。
「ふんっ、相当参っているだろうと様子を見に来てみれば、随分と余裕そうじゃないか、耶王美」
「またお前か……。急に現れて僕たちの話の邪魔をしないでよ、殺すよ?」
どうやら見た目が神斗のままであった為、山の頂の上空での事を思い出したであろうエヴィは、先程まで耶王美に向けていた表情とはまるっきり違う、まさに言葉通りの殺意に満ちた目で睨むのだった。
「また……? ああ、どうやらお前は神斗の知り合いのようだな。だが、残念だが中身が違う」
「エヴィ、気をつけろ。こいつは神斗殿の見た目をしているが、奴の言う通りに神斗殿を乗っ取り、私たちを閉じ込めた張本人だ」
その耶王美の言葉を聞いたエヴィは、小さく舌打ちをするのだった。
「初めましてエヴィ。そういうわけだから、分かったらそのまま死ね」
そう言って煌阿は右手を前に出しながら、エヴィに向けて『魔力波』を放つのだった。
『理』が通った『魔法』と呼べるようなモノでさえない、単なる『魔力』を放出しただけの煌阿だが、その『魔力波』の殺傷能力はまともに食らえば致死を免れないと思わせるだけの威力を誇っていた。
「エヴィ!」
直ぐ近くに居た耶王美が、エヴィの盾になろうと煌阿の『魔力波』の方へと一歩前へ出た瞬間、エヴィはその耶王美の方を掴むと強引に下がらせながら詠唱を開始する。
――神域『時』魔法、『次元防壁』。
「な、に……!?」
煌阿の放った『魔力波』が、エヴィの用いた『透過』ではない『魔』の技法によって、そのまま掻き消されていくところをみて驚きの声をあげるのだった。
エヴィの放った『次元防壁』の『時魔法』は、当然にこの世界には存在していない。
同じ『時魔法』に分類されるとしても『卜部官兵衛』や『シギン』の生み出した『理』から生み出された『時魔法』ではない為に、煌阿が驚くのも無理はなかった。
(卜部やその血筋が使っている『空間魔法』とは明らかに異なっている効力だ。俺の『魔力』に『透過』で干渉して打ち消したというわけでもなく、あの卜部の血筋のように何らかの『結界』を作用させたというわけでもない。あの距離で何の『スタック』も用意せずに無詠唱で俺の攻撃を凌いで見せた以上、無視をする事は出来ぬが、このタイミングではどうするべきか……?)
煌阿は自分の攻撃が、如何に相手にとっての脅威となるのかを自覚している。
卜部やシギンのような『魔』の理解者達でさえ、煌阿の攻撃を捌くにはそれなりに『スタック』やあらゆる防衛の手立てを用意しなければいけない程なのである。
そうだというのに人間の少年にしか見えない若者が、彼が殺すつもりで放った『魔力波』を食らって平然としている以上、シギンに続く更なる脅威が現れたのだと判断しても何もおかしい事ではない。
(札はすでに消してしまっているのだ。今この『結界』を解いてしまえば、隣で俺と同様に驚きつつも戦闘準備態勢に入っている耶王美を閉じ込めるには、また別の手間がかかってしまうだろう。それに今は妖魔共の報告を待っている状態だ。やはりここは下手に卜部の血筋に続くような存在と、耶王美を同時に相手どる余裕はないだろうな……)
どれだけ不透明な強さを持っていようが、あの『結界』からは逃れられない様子の両者を見て、ひとまずは閉じ込めておけば問題はないだろうと煌阿は判断した様子であった。
ようやく落ち着きを取り戻したエヴィは、彼女に礼を口にして自ら彼女の胸の内から離れるのだった。
「ソフィっていうお前の主と私の主である王琳様は、きっと近しい感情を抱いて生きている。きっとよく話し合えば私とアンタみたいに直ぐに打ち解けられると思う……。そこで何だが、もしここから無事に出られたらお前も私の主と会ってみてくれないか?」
普段の耶王美であれば、妖狐以外の者を主に会わせようとは決してしないだろう。しかしどうしても耶王美は、自分と同じ考え方を持つエヴィを主に会わせてみたくなったようである。
「ああ、いいよ。というか僕も耶王美をソフィ様に会わせたいなって考えていたところだったんだ」
そう言って笑みを浮かべるエヴィに満ち足りていくような、どこか気が安らいでいく感覚を覚える耶王美だった。
「ふふっ、やはり私達はとても相性が良い。お前と出会えてとても嬉しいよ」
耶王美が屈託のない笑顔を見せながらそう言うと、エヴィもにこりと笑うのだった。
そしてそんな二人が笑みを浮かべあっているところに、突如として二人の近くの場所にある空間に亀裂が入り始めたかと思うと、そこから神斗の見た目をした煌阿が出現を始めるのだった。
朗らかな気持ちを抱いていた二人は、直ぐにその存在に気付いて同時に振り返るのだった。
「ふんっ、相当参っているだろうと様子を見に来てみれば、随分と余裕そうじゃないか、耶王美」
「またお前か……。急に現れて僕たちの話の邪魔をしないでよ、殺すよ?」
どうやら見た目が神斗のままであった為、山の頂の上空での事を思い出したであろうエヴィは、先程まで耶王美に向けていた表情とはまるっきり違う、まさに言葉通りの殺意に満ちた目で睨むのだった。
「また……? ああ、どうやらお前は神斗の知り合いのようだな。だが、残念だが中身が違う」
「エヴィ、気をつけろ。こいつは神斗殿の見た目をしているが、奴の言う通りに神斗殿を乗っ取り、私たちを閉じ込めた張本人だ」
その耶王美の言葉を聞いたエヴィは、小さく舌打ちをするのだった。
「初めましてエヴィ。そういうわけだから、分かったらそのまま死ね」
そう言って煌阿は右手を前に出しながら、エヴィに向けて『魔力波』を放つのだった。
『理』が通った『魔法』と呼べるようなモノでさえない、単なる『魔力』を放出しただけの煌阿だが、その『魔力波』の殺傷能力はまともに食らえば致死を免れないと思わせるだけの威力を誇っていた。
「エヴィ!」
直ぐ近くに居た耶王美が、エヴィの盾になろうと煌阿の『魔力波』の方へと一歩前へ出た瞬間、エヴィはその耶王美の方を掴むと強引に下がらせながら詠唱を開始する。
――神域『時』魔法、『次元防壁』。
「な、に……!?」
煌阿の放った『魔力波』が、エヴィの用いた『透過』ではない『魔』の技法によって、そのまま掻き消されていくところをみて驚きの声をあげるのだった。
エヴィの放った『次元防壁』の『時魔法』は、当然にこの世界には存在していない。
同じ『時魔法』に分類されるとしても『卜部官兵衛』や『シギン』の生み出した『理』から生み出された『時魔法』ではない為に、煌阿が驚くのも無理はなかった。
(卜部やその血筋が使っている『空間魔法』とは明らかに異なっている効力だ。俺の『魔力』に『透過』で干渉して打ち消したというわけでもなく、あの卜部の血筋のように何らかの『結界』を作用させたというわけでもない。あの距離で何の『スタック』も用意せずに無詠唱で俺の攻撃を凌いで見せた以上、無視をする事は出来ぬが、このタイミングではどうするべきか……?)
煌阿は自分の攻撃が、如何に相手にとっての脅威となるのかを自覚している。
卜部やシギンのような『魔』の理解者達でさえ、煌阿の攻撃を捌くにはそれなりに『スタック』やあらゆる防衛の手立てを用意しなければいけない程なのである。
そうだというのに人間の少年にしか見えない若者が、彼が殺すつもりで放った『魔力波』を食らって平然としている以上、シギンに続く更なる脅威が現れたのだと判断しても何もおかしい事ではない。
(札はすでに消してしまっているのだ。今この『結界』を解いてしまえば、隣で俺と同様に驚きつつも戦闘準備態勢に入っている耶王美を閉じ込めるには、また別の手間がかかってしまうだろう。それに今は妖魔共の報告を待っている状態だ。やはりここは下手に卜部の血筋に続くような存在と、耶王美を同時に相手どる余裕はないだろうな……)
どれだけ不透明な強さを持っていようが、あの『結界』からは逃れられない様子の両者を見て、ひとまずは閉じ込めておけば問題はないだろうと煌阿は判断した様子であった。
10
お気に入りに追加
421
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる