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妖魔山編
1861.本質を見抜く大魔王ヌー
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思いも寄らぬ訪問者達が現れた事で予想外に話し込んでしまったソフィ達だが、結果的に少し前までのエヴィの行方にサカダイの町を襲撃した一味の妖魔召士達、それに妖魔退魔師組織を利用しようとして妖魔山に入り込んだイダラマ達を目の届く範囲に置く事が出来た為に、事態が好転したと考える事も出来たのだった。
もちろんコウエンの最期を知る事となり、ゲンロク達を思えば決して諸手を挙げて喜べるわけではないが、それでも山であった出来事をしっかりと情報として得られたことは、彼らにとってもとても大きいと言えるのだった。
「それでは当初の予定通り、我々はこのまま山の調査を兼ねながらソフィ殿の仲間を救い出すべく、禁止区域へと向かう事にする。当然その間はイダラマ殿達にリクト殿達も同行させる事となるが、決して貴方がたには逃げだそうとはしないでもらいたい。例えばだが、もしイダラマ殿が目を覚ました後にでもよからぬ事を考えて行動を起こした場合、我々も現状の予定にはない行動を取らざるを得なくなる」
そう言ってシゲンは、ウガマやリクト達に視線を向けるのだった。
「も、もちろんじゃ。決してそのような真似をせぬと、約束する……!」
「わ、我々もしないと約束します……!!」
コウエンの同志達や、ウガマもシゲンの言葉に素直に首を縦に振るのだった。
直接処遇を口にしたわけではないシゲンだったが、 『予定にはない行動を取る』という彼の言葉は、存外に彼らには効果絶大だったようで想像以上の怯みを見せていた。
「ではミスズよ、玉稿殿に事情を説明して出発の準備を始めるぞ」
「はっ! では玉稿殿を呼んで参ります!」
そう言ってミスズはシゲンに恭しく礼をすると、そのまま玉稿を呼びに部屋を出て行くのだった。
ひとまず今後の方針も決まり、抱えていた問題の大掛かりな部分も解決した事で、緩やかな空気が部屋に流れ始めた頃にヌーがソフィに話しかけてくるのだった。
「山の至るところから同じ野郎の『魔力』を感じるが、お前も気づいているか?」
「うむ。要所、要所のこの『魔力』の乱れを省みるに、こやつは戦闘中で間違いないだろうな。だが、詳しく探ろうとすれば『魔力』の残滓を完全に消し去ってしまう。この『魔力』の持ち主は相当の『魔力コントロール』を身につけておる。この『魔力』の奔流から推測するに、まず間違いなく『時魔法』も併用しておるだろうな」
「ああ……。さっきの話が現実味を帯びてきやがったな。この『魔力』の持ち主の野郎は、何らかの『時魔法』を司る『理』を持っていやがる。それもフルーフやミラの野郎のような精巧な技量と遜色のない程の『魔』の技法を有していやがる。あのタッパのありやがる木偶の坊が口にしていた妖魔召士かもしれねぇな」
「うむ……。そうだな」
ヌーの口にしたタッパのある木偶の坊とは、ここまでイダラマを背負ってきた『ウガマ』の事で間違いないだろう。
ソフィはよくもまぁ次から次と、自分勝手にあだ名をつけられるモノだと、感心するようにヌーを見ながら頷くのだった。
「この世界は確かにアレルバレルや、リラリオの世界よりも強き者が多いと思えたが、この山はそんな者達より少し桁が違っている。我達であっても侮れない者達が、この場所でひしめき合っているようだな」
(ちっ! よく言うぜ……)
そう口にするソフィだったが、ヌーはその言葉に素直に頷く事はしなかった。
もちろん言葉の意味としては正しく、これがソフィ以外の者が口にした言葉であればヌーも素直に同意していただろう。
しかしこの大魔王ソフィはあくまで客観的に他者が思うだろうと考えて口にしているだけに過ぎず、大魔王ソフィという化け物にしてみれば、この猛者揃いのノックスの世界も『アレルバレル』や『リラリオ』の世界と大差はないと考えているに違いないと大魔王ヌーは考えていた。
あの天狗の頭領と呼ばれていた『帝楽智』という女天狗は、大魔王ヌーの目から見ても今の『三色併用』に至った自分と遜色のない強さをしていたし、その『帝楽智』よりは多少は劣るが、副司令官の立場であったであろう『華親』も大魔王フルーフや、大魔王シスよりも単純な強さであれば上であっただろう。
それにあの場に居た他の『天従十二将』と呼ばれていた天狗達も、煌聖の教団の幹部クラスをあしらう程の力量だった筈であり、そんな者達を大魔王ソフィは一挙に纏めて相手をして、少しの苦戦もするどころか手傷一つ負わずに、天狗全員を相手にあっさりと血祭りにあげてその魂すら残さずに絶滅させてみせた。
――明らかに大魔王ソフィは、そんな天狗族全員を相手にして『余裕』を感じていた。
実際にはこのソフィという大魔王は、この『ノックス』の世界であってもすでに、物足りなさを感じ始めているのだろうと大魔王ヌーは考えているのであった。
……
……
……
もちろんコウエンの最期を知る事となり、ゲンロク達を思えば決して諸手を挙げて喜べるわけではないが、それでも山であった出来事をしっかりと情報として得られたことは、彼らにとってもとても大きいと言えるのだった。
「それでは当初の予定通り、我々はこのまま山の調査を兼ねながらソフィ殿の仲間を救い出すべく、禁止区域へと向かう事にする。当然その間はイダラマ殿達にリクト殿達も同行させる事となるが、決して貴方がたには逃げだそうとはしないでもらいたい。例えばだが、もしイダラマ殿が目を覚ました後にでもよからぬ事を考えて行動を起こした場合、我々も現状の予定にはない行動を取らざるを得なくなる」
そう言ってシゲンは、ウガマやリクト達に視線を向けるのだった。
「も、もちろんじゃ。決してそのような真似をせぬと、約束する……!」
「わ、我々もしないと約束します……!!」
コウエンの同志達や、ウガマもシゲンの言葉に素直に首を縦に振るのだった。
直接処遇を口にしたわけではないシゲンだったが、 『予定にはない行動を取る』という彼の言葉は、存外に彼らには効果絶大だったようで想像以上の怯みを見せていた。
「ではミスズよ、玉稿殿に事情を説明して出発の準備を始めるぞ」
「はっ! では玉稿殿を呼んで参ります!」
そう言ってミスズはシゲンに恭しく礼をすると、そのまま玉稿を呼びに部屋を出て行くのだった。
ひとまず今後の方針も決まり、抱えていた問題の大掛かりな部分も解決した事で、緩やかな空気が部屋に流れ始めた頃にヌーがソフィに話しかけてくるのだった。
「山の至るところから同じ野郎の『魔力』を感じるが、お前も気づいているか?」
「うむ。要所、要所のこの『魔力』の乱れを省みるに、こやつは戦闘中で間違いないだろうな。だが、詳しく探ろうとすれば『魔力』の残滓を完全に消し去ってしまう。この『魔力』の持ち主は相当の『魔力コントロール』を身につけておる。この『魔力』の奔流から推測するに、まず間違いなく『時魔法』も併用しておるだろうな」
「ああ……。さっきの話が現実味を帯びてきやがったな。この『魔力』の持ち主の野郎は、何らかの『時魔法』を司る『理』を持っていやがる。それもフルーフやミラの野郎のような精巧な技量と遜色のない程の『魔』の技法を有していやがる。あのタッパのありやがる木偶の坊が口にしていた妖魔召士かもしれねぇな」
「うむ……。そうだな」
ヌーの口にしたタッパのある木偶の坊とは、ここまでイダラマを背負ってきた『ウガマ』の事で間違いないだろう。
ソフィはよくもまぁ次から次と、自分勝手にあだ名をつけられるモノだと、感心するようにヌーを見ながら頷くのだった。
「この世界は確かにアレルバレルや、リラリオの世界よりも強き者が多いと思えたが、この山はそんな者達より少し桁が違っている。我達であっても侮れない者達が、この場所でひしめき合っているようだな」
(ちっ! よく言うぜ……)
そう口にするソフィだったが、ヌーはその言葉に素直に頷く事はしなかった。
もちろん言葉の意味としては正しく、これがソフィ以外の者が口にした言葉であればヌーも素直に同意していただろう。
しかしこの大魔王ソフィはあくまで客観的に他者が思うだろうと考えて口にしているだけに過ぎず、大魔王ソフィという化け物にしてみれば、この猛者揃いのノックスの世界も『アレルバレル』や『リラリオ』の世界と大差はないと考えているに違いないと大魔王ヌーは考えていた。
あの天狗の頭領と呼ばれていた『帝楽智』という女天狗は、大魔王ヌーの目から見ても今の『三色併用』に至った自分と遜色のない強さをしていたし、その『帝楽智』よりは多少は劣るが、副司令官の立場であったであろう『華親』も大魔王フルーフや、大魔王シスよりも単純な強さであれば上であっただろう。
それにあの場に居た他の『天従十二将』と呼ばれていた天狗達も、煌聖の教団の幹部クラスをあしらう程の力量だった筈であり、そんな者達を大魔王ソフィは一挙に纏めて相手をして、少しの苦戦もするどころか手傷一つ負わずに、天狗全員を相手にあっさりと血祭りにあげてその魂すら残さずに絶滅させてみせた。
――明らかに大魔王ソフィは、そんな天狗族全員を相手にして『余裕』を感じていた。
実際にはこのソフィという大魔王は、この『ノックス』の世界であってもすでに、物足りなさを感じ始めているのだろうと大魔王ヌーは考えているのであった。
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