1,870 / 1,915
妖魔山編
1853.煌阿の特異の秘
しおりを挟む
シギンとの会話を終えて洞穴を出た煌阿は、そのまま森を出ると違う洞穴へと『空間魔法』を用いて移動を開始するのだった。
…………
今の煌阿は自身の『魔力』の高さも相まって、人間の妖魔召士である『卜部官兵衛』と『シギン』という世代での最強と呼ばれた妖魔召士との直接の戦闘を行った事で、更に『魔』の理解者としての経験を得る事が出来ていた。
特にその得たモノの大きさで一番と呼べるものが、今も移動に利用している『空間魔法』を自在に操る事が出来るようになった事だろう。
単に移動だけではなく、戦闘面においても相手を一方的に『結界』の中へと閉じ込める事も可能であり、これは人間の妖魔召士達や、神斗のような『魔』の理解者達の使う『結界』より遥かに効率よく使う事が出来る。
――そして何よりもこの『空間魔法』を利用するのに必要な『理』の存在が非常に大きい。
主に『空間』そのものを利用した『結界』を作り出す事に重点を置きがちだが、この『理』から生み出される事象で一番影響の大きいものは、その『結界』の根本となる『効力時間』を術者の任意に変える事にあるともいえるだろう。
この『理』をこのノックスの世界で扱えた者は、これまでの歴史でたった三名。
その原初の存在が人間である『卜部官兵衛』。
そしてその『卜部官兵衛』の直接の血筋である『シギン』。
その両名と直接手を合わせる事で『理』の理解者となった『煌阿』。
この三名だけが『空間魔法』やそれに準じた『結界』に、距離を応用した『移動術』、そして『魔』の技法や式札といった呪符の『魔』の効力の時間を任意に持たせる『時間術』を操る事が出来ているわけだが、この三名の中でもそれを完璧に扱えた人物はやはり原初の『卜部官兵衛』ただ一人であろう。
シギンはこの『理』から生み出された『空間魔法』に関しては『移動術』に特化しているが、同じ『理』から生み出された卜部官兵衛の『空間魔法』の『結界』に関して直接の解除が行える程の理解はまだ出来ておらず、また『理』そのものを利用した『時間術』に関してもそういったモノがあるという認識しか持っておらず、自在に操るまでには理解が及んでいない。
そして直接的に『理』を生み出したわけではなく、卜部官兵衛とシギンという両人間と直接戦った経験から、自身の『金色の体現者』としての『特異』を利用して、この『空間魔法』そのものから『理』を会得に至った煌阿が、前者二人の一番優れていたといっていい技法の『移動術』と『時間術』を我が物とすることになってしまった。
いわば煌阿の『特異』が反則的なまでに強力すぎた事によって得た結果なのだが、シギンにとってみれば自分を幼少の頃から悩ませてきていた『魔』の疑問に対して、他者から強引に解を奪われたように感じられるだろう。
何よりその奪われた張本人である『シギン』が、まだ『卜部官兵衛』の『時間術』に関しての理解が及んでいないというのに、もう煌阿は中途半端な理解のままで、その領域に至らしめてしまっているのである。
もちろん長い目で見れば、中途半端な理解度の煌阿よりも筋道通りにしっかりと一つ、一つ理解を終えていく者の方が『魔』に厚みを増す事も可能かもしれないが、煌阿以外のこの『理』を会得しているシギンは人間である為に、その完璧な状態に辿り着く前に寿命を迎えてしまう。
煌阿の相手の『魔』を奪うと呼べるこの『特異』は、純粋にその奪った相手の『魔』の技法の八割程でしかない。しかしそれでも会得そのものが非常に困難な筈の『空間魔法』を八割程とはいえ、使いこなす事を可能とするのならば、理解が出来ていない者に比べれば十分過ぎる程である。
つまりは即戦力となる強い部分だけを上手く取得出来ていて、元々の『魔力』そのものが高い煌阿が他二人よりも秀でているといえてしまうのだった。
…………
「さて、耶王美を閉じ込めている『結界』への干渉を施す『封印式札』もそろそろ破っておくか」
煌阿はそう言うとシギンの居る洞穴からそれなりに遠い、別の洞穴の中に吊るしてあった『封印式札』に何やら『魔力』を用いると、何と次の瞬間にはその札を自らの手で破り捨ててしまうのだった。
「これでいい……。当面はこの山の妖魔共を手懐けるのに忙しいからな。まぁ、ここまでせずともあの女が卜部の『結界』を打ち破れるとも思えぬが、念には念をだ」
そう言って乗っ取った神斗の顔をした煌阿は、誰も居ない洞穴でニヤリと笑みを浮かべるのだった。
…………
今の煌阿は自身の『魔力』の高さも相まって、人間の妖魔召士である『卜部官兵衛』と『シギン』という世代での最強と呼ばれた妖魔召士との直接の戦闘を行った事で、更に『魔』の理解者としての経験を得る事が出来ていた。
特にその得たモノの大きさで一番と呼べるものが、今も移動に利用している『空間魔法』を自在に操る事が出来るようになった事だろう。
単に移動だけではなく、戦闘面においても相手を一方的に『結界』の中へと閉じ込める事も可能であり、これは人間の妖魔召士達や、神斗のような『魔』の理解者達の使う『結界』より遥かに効率よく使う事が出来る。
――そして何よりもこの『空間魔法』を利用するのに必要な『理』の存在が非常に大きい。
主に『空間』そのものを利用した『結界』を作り出す事に重点を置きがちだが、この『理』から生み出される事象で一番影響の大きいものは、その『結界』の根本となる『効力時間』を術者の任意に変える事にあるともいえるだろう。
この『理』をこのノックスの世界で扱えた者は、これまでの歴史でたった三名。
その原初の存在が人間である『卜部官兵衛』。
そしてその『卜部官兵衛』の直接の血筋である『シギン』。
その両名と直接手を合わせる事で『理』の理解者となった『煌阿』。
この三名だけが『空間魔法』やそれに準じた『結界』に、距離を応用した『移動術』、そして『魔』の技法や式札といった呪符の『魔』の効力の時間を任意に持たせる『時間術』を操る事が出来ているわけだが、この三名の中でもそれを完璧に扱えた人物はやはり原初の『卜部官兵衛』ただ一人であろう。
シギンはこの『理』から生み出された『空間魔法』に関しては『移動術』に特化しているが、同じ『理』から生み出された卜部官兵衛の『空間魔法』の『結界』に関して直接の解除が行える程の理解はまだ出来ておらず、また『理』そのものを利用した『時間術』に関してもそういったモノがあるという認識しか持っておらず、自在に操るまでには理解が及んでいない。
そして直接的に『理』を生み出したわけではなく、卜部官兵衛とシギンという両人間と直接戦った経験から、自身の『金色の体現者』としての『特異』を利用して、この『空間魔法』そのものから『理』を会得に至った煌阿が、前者二人の一番優れていたといっていい技法の『移動術』と『時間術』を我が物とすることになってしまった。
いわば煌阿の『特異』が反則的なまでに強力すぎた事によって得た結果なのだが、シギンにとってみれば自分を幼少の頃から悩ませてきていた『魔』の疑問に対して、他者から強引に解を奪われたように感じられるだろう。
何よりその奪われた張本人である『シギン』が、まだ『卜部官兵衛』の『時間術』に関しての理解が及んでいないというのに、もう煌阿は中途半端な理解のままで、その領域に至らしめてしまっているのである。
もちろん長い目で見れば、中途半端な理解度の煌阿よりも筋道通りにしっかりと一つ、一つ理解を終えていく者の方が『魔』に厚みを増す事も可能かもしれないが、煌阿以外のこの『理』を会得しているシギンは人間である為に、その完璧な状態に辿り着く前に寿命を迎えてしまう。
煌阿の相手の『魔』を奪うと呼べるこの『特異』は、純粋にその奪った相手の『魔』の技法の八割程でしかない。しかしそれでも会得そのものが非常に困難な筈の『空間魔法』を八割程とはいえ、使いこなす事を可能とするのならば、理解が出来ていない者に比べれば十分過ぎる程である。
つまりは即戦力となる強い部分だけを上手く取得出来ていて、元々の『魔力』そのものが高い煌阿が他二人よりも秀でているといえてしまうのだった。
…………
「さて、耶王美を閉じ込めている『結界』への干渉を施す『封印式札』もそろそろ破っておくか」
煌阿はそう言うとシギンの居る洞穴からそれなりに遠い、別の洞穴の中に吊るしてあった『封印式札』に何やら『魔力』を用いると、何と次の瞬間にはその札を自らの手で破り捨ててしまうのだった。
「これでいい……。当面はこの山の妖魔共を手懐けるのに忙しいからな。まぁ、ここまでせずともあの女が卜部の『結界』を打ち破れるとも思えぬが、念には念をだ」
そう言って乗っ取った神斗の顔をした煌阿は、誰も居ない洞穴でニヤリと笑みを浮かべるのだった。
0
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる