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妖魔山編
1850.新たな概念への疑問
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「今から数百年前の話だ。お前のように里から妖魔召士達が山に調査を行いにやってきた。これまでも幾度となく妖魔召士は山の調査を頻繁に行いにきていたが、その日にやってきた妖魔召士は人外と思える程の強さだった。山に居るそれなりに強い奴らでさえ、あっさりとやられてしまう程に」
どうやらその妖魔召士とやらが、シギンの先祖の『卜部官兵衛』なのだろう。
「その人間共に山の多くの妖魔達が敗れてしまい、遂に『翼族』『鬼人族』『妖狐』『鵺』といった主だった種族達が立ち上がり、その力を結集して倒そうと企てた。そしてその指揮を執るのが、当然妖魔神であった『神斗』と『悟獄丸』だった」
今煌阿が挙げた種族達の中に『三大妖魔』とされていた筈の『天狗族』の名が出ずに代わりに『翼族』という名が出てきた事に疑問を覚えたシギンだった。
「だが、その指示通りに向かったその先に、 『神斗』も『悟獄丸』も『王琳』の姿さえ見せなかったのだ!」
怒号と共に洞穴の中に煌阿の殺意が満ちていく。
「直ぐに俺は仲間だと思っていた神斗達に謀られたのだと気付いた。やられていく同胞共を何とか助けようとしたが、真鵺が強引に俺の手を取り、何とかその場は生き延びる事が出来た。そしてその逃げる最中に山の陰からこちらを見張るように『翼族』の連中が俺達を窺っていやがった……」
そこまで一息に話し終えると、やがて大きく息を吸いこんだ。
「奴らは最初から俺らを捨て駒にしようと企んでいやがったのだ。俺達が人間共に勝てば重畳、相打ちでも翼族共は手に余る厄介な『呪い』を用いる俺や、真鵺が死ねば十分だと考えていたのだろうな」
「最後に現れたその翼族とやら達は、お前らがどうなったかを確認する為に神斗達に遣わされて見張っていたのか?」
「そんなところだろうよ。わざわざ戦場に姿を見せて俺達を助けようともせず、最後まで見張りに徹していやがったんだ。あれを見て間違っても助けに来ていたとは言わせねぇよ」
シギンは今の話に違和感を感じていた。しかし彼はここで口を挟まず、ひとまずは結末までどうなったかを聞こうと耳を傾け続けるのだった。
「同胞の多くがやられてしまった俺達だが、そのまま全滅するわけにはいかぬ為に『鵺』の命運を真鵺に預けた後に、俺と同胞数人で『卜部』達の相手を行った。どうせそれすらも『神斗』やあの場に現れなかった『鬼人族』や他の種族の目論み通りだったのかもしれないが、同胞が全滅するのに比べれば、あの場では手の平の上で踊らされていると分かっていても仕方がなかった」
あくまで今の話だけでは色々とシギンは納得がいかずに、同情心なども湧いてこなかった。
(神斗と何度か会話を行ったが、今の話に出てきたような目論みを行うような奴には見えぬ。その神斗の同胞である『翼族』の連中や、他の種族の入れ知恵だったのだろうか? まぁ、どちらにせよ最後に『翼族』が姿を見せて助けようとすらしなかったという話が本当であれば、確かに貧乏くじを引かされて多くの仲間の犠牲と共に、自身もまた長い期間を洞穴に閉じ込められた以上、納得が行かずに復讐心を抱くのも無理はない。無理はないが……)
「煌阿よ、その時にお前が卜部官兵衛と戦い、その末に封印をされたという事は理解出来たが、お前が卜部官兵衛と戦う前までは居たというその『翼族』は、俺達の生きる時代にはすでに居ないのだ。この事を踏まえてお前自身は翼族達はどうなったと思うのだ?」
「これからそれを調べようと思っていたところだが、今は我が同胞が敵を討ってくれたと思う事にする。まぁ、ひとまずは裏切者を全て炙り出して皆殺しにするところからだな。当時に直接関係がなかったとしても『妖狐』や、他の者共もただでは済ますつもりはない。その後はこの妖魔山を神斗や悟獄丸共の代わりに俺が支配してやる」
滾ると言わんばかりに神斗の身体で『魔力』を纏いながら、煌阿は邪悪な笑みを浮かべ始めるのだった。
(結局は、私怨目的で神斗を狙っていたという話であったか。しかし鵺という種族に『煌阿』程の存在が居たことには驚きであった。鵺全体の持つ『呪い』の強さもとんでもないのだろうが、そんな種族の力などよりも、この男の『魔』の理解度の方が面倒極まりない。全く俺の先祖も面倒な化け物を生み出してしまったものだな。まぁ『空間魔法』をコイツに覚えさせてしまったという点では、俺も先祖の事は強く言えぬが、戦えば戦う程に強くなるか……。俺よりも『魔』の理解度は上なのは間違いないのだろうが、俺もこの煌阿や卜部官兵衛の居る『魔』の領域に辿り着く事が出来れば、俺も他者の『魔』の力に対して、同じような事が出来るようになっていたのだろうか……?)
煌阿の話を聞き終えたシギンは、再び新たな『魔』に関する疑問を生み出してしまい、すでにその両の目は煌阿を視界にしっかり捉えてはいるものの、もう認知をするという意味では目に入らなくなっているのだった。
どうやらその妖魔召士とやらが、シギンの先祖の『卜部官兵衛』なのだろう。
「その人間共に山の多くの妖魔達が敗れてしまい、遂に『翼族』『鬼人族』『妖狐』『鵺』といった主だった種族達が立ち上がり、その力を結集して倒そうと企てた。そしてその指揮を執るのが、当然妖魔神であった『神斗』と『悟獄丸』だった」
今煌阿が挙げた種族達の中に『三大妖魔』とされていた筈の『天狗族』の名が出ずに代わりに『翼族』という名が出てきた事に疑問を覚えたシギンだった。
「だが、その指示通りに向かったその先に、 『神斗』も『悟獄丸』も『王琳』の姿さえ見せなかったのだ!」
怒号と共に洞穴の中に煌阿の殺意が満ちていく。
「直ぐに俺は仲間だと思っていた神斗達に謀られたのだと気付いた。やられていく同胞共を何とか助けようとしたが、真鵺が強引に俺の手を取り、何とかその場は生き延びる事が出来た。そしてその逃げる最中に山の陰からこちらを見張るように『翼族』の連中が俺達を窺っていやがった……」
そこまで一息に話し終えると、やがて大きく息を吸いこんだ。
「奴らは最初から俺らを捨て駒にしようと企んでいやがったのだ。俺達が人間共に勝てば重畳、相打ちでも翼族共は手に余る厄介な『呪い』を用いる俺や、真鵺が死ねば十分だと考えていたのだろうな」
「最後に現れたその翼族とやら達は、お前らがどうなったかを確認する為に神斗達に遣わされて見張っていたのか?」
「そんなところだろうよ。わざわざ戦場に姿を見せて俺達を助けようともせず、最後まで見張りに徹していやがったんだ。あれを見て間違っても助けに来ていたとは言わせねぇよ」
シギンは今の話に違和感を感じていた。しかし彼はここで口を挟まず、ひとまずは結末までどうなったかを聞こうと耳を傾け続けるのだった。
「同胞の多くがやられてしまった俺達だが、そのまま全滅するわけにはいかぬ為に『鵺』の命運を真鵺に預けた後に、俺と同胞数人で『卜部』達の相手を行った。どうせそれすらも『神斗』やあの場に現れなかった『鬼人族』や他の種族の目論み通りだったのかもしれないが、同胞が全滅するのに比べれば、あの場では手の平の上で踊らされていると分かっていても仕方がなかった」
あくまで今の話だけでは色々とシギンは納得がいかずに、同情心なども湧いてこなかった。
(神斗と何度か会話を行ったが、今の話に出てきたような目論みを行うような奴には見えぬ。その神斗の同胞である『翼族』の連中や、他の種族の入れ知恵だったのだろうか? まぁ、どちらにせよ最後に『翼族』が姿を見せて助けようとすらしなかったという話が本当であれば、確かに貧乏くじを引かされて多くの仲間の犠牲と共に、自身もまた長い期間を洞穴に閉じ込められた以上、納得が行かずに復讐心を抱くのも無理はない。無理はないが……)
「煌阿よ、その時にお前が卜部官兵衛と戦い、その末に封印をされたという事は理解出来たが、お前が卜部官兵衛と戦う前までは居たというその『翼族』は、俺達の生きる時代にはすでに居ないのだ。この事を踏まえてお前自身は翼族達はどうなったと思うのだ?」
「これからそれを調べようと思っていたところだが、今は我が同胞が敵を討ってくれたと思う事にする。まぁ、ひとまずは裏切者を全て炙り出して皆殺しにするところからだな。当時に直接関係がなかったとしても『妖狐』や、他の者共もただでは済ますつもりはない。その後はこの妖魔山を神斗や悟獄丸共の代わりに俺が支配してやる」
滾ると言わんばかりに神斗の身体で『魔力』を纏いながら、煌阿は邪悪な笑みを浮かべ始めるのだった。
(結局は、私怨目的で神斗を狙っていたという話であったか。しかし鵺という種族に『煌阿』程の存在が居たことには驚きであった。鵺全体の持つ『呪い』の強さもとんでもないのだろうが、そんな種族の力などよりも、この男の『魔』の理解度の方が面倒極まりない。全く俺の先祖も面倒な化け物を生み出してしまったものだな。まぁ『空間魔法』をコイツに覚えさせてしまったという点では、俺も先祖の事は強く言えぬが、戦えば戦う程に強くなるか……。俺よりも『魔』の理解度は上なのは間違いないのだろうが、俺もこの煌阿や卜部官兵衛の居る『魔』の領域に辿り着く事が出来れば、俺も他者の『魔』の力に対して、同じような事が出来るようになっていたのだろうか……?)
煌阿の話を聞き終えたシギンは、再び新たな『魔』に関する疑問を生み出してしまい、すでにその両の目は煌阿を視界にしっかり捉えてはいるものの、もう認知をするという意味では目に入らなくなっているのだった。
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