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妖魔山編
1844.先手必勝
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――この瞬間を以て、大魔王ソフィは『神斗』という妖魔神への認識を明確にした。
もし、この後に彼の配下である『九大魔王』の『エヴィ』が見つかり、その身に何か起きていたり、先程の話にあったような『魔』の技法を用いる事が出来なくなっているような事にでもなっていれば、大魔王ソフィは再び天狗族を相手にしていた時と変わらぬ『暴威』を妖魔神相手に振るう事になるだろう。
今回の妖魔山での調査は、妖魔退魔師組織と妖魔召士組織の共同的な『禁止区域』の調査という名目ではあったが、もはやその名目とはかけ離れた出来事が増え続けており、このまま妖魔神が両者共居なくなるような事があれば、もはや調査という名目や枠組みで収まる範疇ではなくなるだろう。
そしてすでに妖魔退魔師総長のシゲンは、その事も十分に計算に入れ始めている。
彼は天狗族がソフィ達によって絶滅させられた時に、すでに今回の調査のあらましの着地点を修正し終えていた。
その事を周知させるようにミスズにも伝えていたシゲンだが、聡い彼女の事であろうから、すでに今シゲンが考えている内容までも追従するように把握しているかもしれない。
この調査の決定権を持つ者は、元々の管理権を有していた『妖魔召士』組織の長達であったゲンロクでもエイジでもなく、妖魔退魔師組織の総長シゲンで間違いない。しかし間違いはないが、シゲンはすでにソフィという存在を妖魔山に於けるキーパーソンに据えようとしていたのであった。
先程のソフィの発言を考慮し、彼が妖魔神の『神斗』を相手にするというのであれば、シゲンはそれを全面的にサポートする腹積もりであり、副総長や組長格達をフォローに回すつもりである。
――何故なら妖魔神の神斗を敵に回すという事は、妖魔達の起源と呼べるこの妖魔山に生息する者達を敵に回すという事と同義であり、そうなればこの山の調査にようやくかこつけるに至った『妖魔召士』組織側への取り決めの確約を『やむなく』という理由から正当性に基づいた上で反故に出来るからである。
自分達の組織に何の非もなく、目的通りに事が進むというのだから、シゲンにとってはソフィが神斗と戦う事に何の不満もない。
――むしろ彼にとっては、この上なく好都合なのである。
「それではソフィ殿、我々は全面的に貴方の仲間を探す事に尽力しよう。その『妖魔神』なる『神斗』という妖魔が関わってくるという事は、今回の山の調査を行う上で、こちらとしても非常に貴重な情報を得る機会となる」
その言葉にエイジやゲンロクだけではなく、仲間である筈の副総長のミスズを含めた組長達も一様に驚きの声をあげるのだった。
「こちらの都合ばかり優先してもらって本当によいのだろうか、シゲン殿……」
「先程も口にした通り、これは今後の安寧を考えれば、必要な調査だといえる。そこに何が待っているのかはまだ分からぬが、この妖魔山の『禁止区域』を調べる上で、この山の支配を行っている妖魔神の存在を知る事は決して間違いではない」
「すまぬ……」
どうやらソフィはエヴィを心配する自分を慮って、あえてシゲンがそういう風に話を合わせてくれたのだろうと解釈して、申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にするのだった。
「ゲンロク殿にエイジ殿、少しばかりここに来る前に取り決めた内容と異なるが、当初からエヴィ殿を捜索するというのは決まっていた事だ。禁止区域の調査の延長線上という事で、こちら側の案の決定を認めてもらいたいのだが、如何だろうか?」
先手必勝とは、まさにこの事だろう。
すでにソフィを慮るような言葉を口にして人情が交じった提案を口にされてしまえば、今更否定する事などとてもではないが出来ない。
そもそもエイジやゲンロクも私情では、とてもソフィの事を気に入っているのだ。
そこにこのような提案をされて、断る事など出来るだろうか?
否、出来るわけがない。
当然に妖魔召士側もこの提案を呑まざるを得なくなり、再びソフィの私情が優先された。
――こうして目論見通り、自然な流れでシゲンの最大の目的を通す事が決まるのであった。
もし、この後に彼の配下である『九大魔王』の『エヴィ』が見つかり、その身に何か起きていたり、先程の話にあったような『魔』の技法を用いる事が出来なくなっているような事にでもなっていれば、大魔王ソフィは再び天狗族を相手にしていた時と変わらぬ『暴威』を妖魔神相手に振るう事になるだろう。
今回の妖魔山での調査は、妖魔退魔師組織と妖魔召士組織の共同的な『禁止区域』の調査という名目ではあったが、もはやその名目とはかけ離れた出来事が増え続けており、このまま妖魔神が両者共居なくなるような事があれば、もはや調査という名目や枠組みで収まる範疇ではなくなるだろう。
そしてすでに妖魔退魔師総長のシゲンは、その事も十分に計算に入れ始めている。
彼は天狗族がソフィ達によって絶滅させられた時に、すでに今回の調査のあらましの着地点を修正し終えていた。
その事を周知させるようにミスズにも伝えていたシゲンだが、聡い彼女の事であろうから、すでに今シゲンが考えている内容までも追従するように把握しているかもしれない。
この調査の決定権を持つ者は、元々の管理権を有していた『妖魔召士』組織の長達であったゲンロクでもエイジでもなく、妖魔退魔師組織の総長シゲンで間違いない。しかし間違いはないが、シゲンはすでにソフィという存在を妖魔山に於けるキーパーソンに据えようとしていたのであった。
先程のソフィの発言を考慮し、彼が妖魔神の『神斗』を相手にするというのであれば、シゲンはそれを全面的にサポートする腹積もりであり、副総長や組長格達をフォローに回すつもりである。
――何故なら妖魔神の神斗を敵に回すという事は、妖魔達の起源と呼べるこの妖魔山に生息する者達を敵に回すという事と同義であり、そうなればこの山の調査にようやくかこつけるに至った『妖魔召士』組織側への取り決めの確約を『やむなく』という理由から正当性に基づいた上で反故に出来るからである。
自分達の組織に何の非もなく、目的通りに事が進むというのだから、シゲンにとってはソフィが神斗と戦う事に何の不満もない。
――むしろ彼にとっては、この上なく好都合なのである。
「それではソフィ殿、我々は全面的に貴方の仲間を探す事に尽力しよう。その『妖魔神』なる『神斗』という妖魔が関わってくるという事は、今回の山の調査を行う上で、こちらとしても非常に貴重な情報を得る機会となる」
その言葉にエイジやゲンロクだけではなく、仲間である筈の副総長のミスズを含めた組長達も一様に驚きの声をあげるのだった。
「こちらの都合ばかり優先してもらって本当によいのだろうか、シゲン殿……」
「先程も口にした通り、これは今後の安寧を考えれば、必要な調査だといえる。そこに何が待っているのかはまだ分からぬが、この妖魔山の『禁止区域』を調べる上で、この山の支配を行っている妖魔神の存在を知る事は決して間違いではない」
「すまぬ……」
どうやらソフィはエヴィを心配する自分を慮って、あえてシゲンがそういう風に話を合わせてくれたのだろうと解釈して、申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にするのだった。
「ゲンロク殿にエイジ殿、少しばかりここに来る前に取り決めた内容と異なるが、当初からエヴィ殿を捜索するというのは決まっていた事だ。禁止区域の調査の延長線上という事で、こちら側の案の決定を認めてもらいたいのだが、如何だろうか?」
先手必勝とは、まさにこの事だろう。
すでにソフィを慮るような言葉を口にして人情が交じった提案を口にされてしまえば、今更否定する事などとてもではないが出来ない。
そもそもエイジやゲンロクも私情では、とてもソフィの事を気に入っているのだ。
そこにこのような提案をされて、断る事など出来るだろうか?
否、出来るわけがない。
当然に妖魔召士側もこの提案を呑まざるを得なくなり、再びソフィの私情が優先された。
――こうして目論見通り、自然な流れでシゲンの最大の目的を通す事が決まるのであった。
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