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妖魔山編
1834.ちぐはぐな印象
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「王琳様、何かが近づいてきます」
「ああ……、気付いているさ」
ソフィ達の事を考えていた王琳だったが、七耶咫の声に直ぐに意識を戻して返事をすると気配を感じる方向に視線を向けた。
どうやら何者かが『結界』を張りながら近づいてきているのは間違いない。しかしこの至近距離だというのに、気配以外の情報が全く入ってこない事に王琳は眉をひそめた。
(足音が聞こえない事にはそこまで驚きはないが、移動を行いながら張れる『結界』でこの俺が『魔力』を探れぬ程となれば、少なくとも神斗殿や、それに準ずる程の『魔力』の持ち主なのは間違いない筈だ。それにも拘らず、この『結界』を張って近づいてくる連中自体は大したことはない。七耶咫でも気配を探れる程度の相手でこれだけの『結界』を張れるとは思えぬのだがな……)
王琳は接近してくる何者かが人間なのか妖魔すら判断がついていない。確かに隠蔽を目的とする『結界』なのだから、相手に探らせない効力が発揮されているのは当然ではあるのだが、この王琳を相手に隠し通せる程となれば、最低でも妖魔ランクは『10』はなければおかしい筈なのである。
それも悟獄丸のように強くはあるがあまり『魔』に秀でていない者が張るような『結界』であれば、王琳であれば直ぐに『魔力』からある程度の種族だというところまで探る事が可能なのだ。
そうだというのに近づいてくる者達の種族どころか、どれくらいの力量を持っているかの判別すらつかない。それなのに気配をだだ漏れにする程度の力量しか持っていないと、あまりにちぐはぐさを感じる王琳だった。
「ちっ、仕方ないな」
気配をこれでもかと感じさせる程度のお粗末な相手であろうとも、これだけの『結界』を張っている相手が近づいてくる以上は無視も出来ない。そう感じた王琳は普段以上に警戒心を高めた。
その警戒心の表れかこの場で『青』と『金色』の『二色の併用』を纏い始めた王琳は、傍に居る七耶咫が愕然とするほどの『魔力』だった。
そして遂にその存在達が王琳の前に姿を見せ始めるのだった。
「ま、待ってくれ! 俺達にはあんたらと争うつもりはない! ここに居る俺達と同じ人間達に用があるだけなんだ。さっきまであんたらもその人間達と一緒に居ただろう!?」
(人間だと……? 確かにこうして目の前で直接声を掛けてきているにも拘らず、未だにこやつらの『魔力』を一向に探れぬ。一体どういう仕組みの『結界』を張っているというのだ……?)
これがまだ目の前の『結界』を張っている連中が、妖魔召士だというのであれば目に見えぬ『魔力』を上手く隠しているのだろうと思えるが、目の前に居るのは明らかに『魔』の概念の理解者とは程遠いといえる剣士に、妖魔召士にすら届き得ていない半人前の退魔士という印象でしかない人間なのである。
そうだというのに張っている『結界』が信じられぬ程に上等なものだというのだから、王琳は混乱しそうになるのを何とか堪えるのだった。
何も言い返してこない妖狐達に不安を覚えたのか、人間達は慌てた様子で更に言葉で捲し立てる。
「ほ、ほら! 覚えていないか!? アンタは山頂に向かおうとしていた俺達を通してくれたじゃないか!」
その言葉と背に担いでいるイダラマの顔を見て、ようやく王琳はこの者達が何なのかを理解した様子だった。
「ああ……。お主らは神斗殿達の元へ向かわせた時の連中か」
ようやく合点がいったとばかりの様子を見せた妖狐に、ウガマや退魔士達は一様にほっとしたような表情を浮かべるのだった。
「それで? いったい何の用なのだ?」
「あ、ああ……! 俺達は中に居る妖魔召士達に用があってここにきたんだが、あんたらがここで何やら見張っている様子だったから、こ、声を掛けたんだ」
確かに何の事情も知らなければ、誰であってもこんな恐ろしい妖狐が二体も見張るようにして立っている場所を素通りして中へ入ろうとは思わないだろう。
ようやく自分達に何かをしようとして近づいてきたのではないと理解した王琳は、戦闘態勢となる『二色の併用』を解いて小さく溜息を吐くのだった。
「別に俺達は見張っているつもりはなかった。集落の中へ入りたいというのであれば勝手に入るがいい。あそこでこちらを警戒して見張っている鬼人族の連中が通せばの話だがな」
その言葉にほっと胸を撫で下ろすウガマ達だった。
「そ、それじゃ、前を通させてもらうぞ」
通っていいと言われたウガマ達だが、この妖狐の気が変わればいつでも自分達を殺す事が可能なのだと理解しているウガマ達は、戦々恐々としながらそう口にするのだった。
「おい、少し待て」
おっかなびっくりと前を通り過ぎようとしたウガマ達に、再び王琳から声が掛かる。
「な、何だ!?」
王琳の突然の呼び止める声に、慌てた様子でウガマ達は立ち止まって振り返る。
見ていて面白い程に同じ動作を取る連中に苦笑いを浮かべた王琳だが、やはり納得が出来ない事を直接ウガマ達に尋ねる事にしたようだった。
「お前らが今も当たり前のように張っているその『結界』は、誰が用いたモノなのだ?」
……
……
……
「ああ……、気付いているさ」
ソフィ達の事を考えていた王琳だったが、七耶咫の声に直ぐに意識を戻して返事をすると気配を感じる方向に視線を向けた。
どうやら何者かが『結界』を張りながら近づいてきているのは間違いない。しかしこの至近距離だというのに、気配以外の情報が全く入ってこない事に王琳は眉をひそめた。
(足音が聞こえない事にはそこまで驚きはないが、移動を行いながら張れる『結界』でこの俺が『魔力』を探れぬ程となれば、少なくとも神斗殿や、それに準ずる程の『魔力』の持ち主なのは間違いない筈だ。それにも拘らず、この『結界』を張って近づいてくる連中自体は大したことはない。七耶咫でも気配を探れる程度の相手でこれだけの『結界』を張れるとは思えぬのだがな……)
王琳は接近してくる何者かが人間なのか妖魔すら判断がついていない。確かに隠蔽を目的とする『結界』なのだから、相手に探らせない効力が発揮されているのは当然ではあるのだが、この王琳を相手に隠し通せる程となれば、最低でも妖魔ランクは『10』はなければおかしい筈なのである。
それも悟獄丸のように強くはあるがあまり『魔』に秀でていない者が張るような『結界』であれば、王琳であれば直ぐに『魔力』からある程度の種族だというところまで探る事が可能なのだ。
そうだというのに近づいてくる者達の種族どころか、どれくらいの力量を持っているかの判別すらつかない。それなのに気配をだだ漏れにする程度の力量しか持っていないと、あまりにちぐはぐさを感じる王琳だった。
「ちっ、仕方ないな」
気配をこれでもかと感じさせる程度のお粗末な相手であろうとも、これだけの『結界』を張っている相手が近づいてくる以上は無視も出来ない。そう感じた王琳は普段以上に警戒心を高めた。
その警戒心の表れかこの場で『青』と『金色』の『二色の併用』を纏い始めた王琳は、傍に居る七耶咫が愕然とするほどの『魔力』だった。
そして遂にその存在達が王琳の前に姿を見せ始めるのだった。
「ま、待ってくれ! 俺達にはあんたらと争うつもりはない! ここに居る俺達と同じ人間達に用があるだけなんだ。さっきまであんたらもその人間達と一緒に居ただろう!?」
(人間だと……? 確かにこうして目の前で直接声を掛けてきているにも拘らず、未だにこやつらの『魔力』を一向に探れぬ。一体どういう仕組みの『結界』を張っているというのだ……?)
これがまだ目の前の『結界』を張っている連中が、妖魔召士だというのであれば目に見えぬ『魔力』を上手く隠しているのだろうと思えるが、目の前に居るのは明らかに『魔』の概念の理解者とは程遠いといえる剣士に、妖魔召士にすら届き得ていない半人前の退魔士という印象でしかない人間なのである。
そうだというのに張っている『結界』が信じられぬ程に上等なものだというのだから、王琳は混乱しそうになるのを何とか堪えるのだった。
何も言い返してこない妖狐達に不安を覚えたのか、人間達は慌てた様子で更に言葉で捲し立てる。
「ほ、ほら! 覚えていないか!? アンタは山頂に向かおうとしていた俺達を通してくれたじゃないか!」
その言葉と背に担いでいるイダラマの顔を見て、ようやく王琳はこの者達が何なのかを理解した様子だった。
「ああ……。お主らは神斗殿達の元へ向かわせた時の連中か」
ようやく合点がいったとばかりの様子を見せた妖狐に、ウガマや退魔士達は一様にほっとしたような表情を浮かべるのだった。
「それで? いったい何の用なのだ?」
「あ、ああ……! 俺達は中に居る妖魔召士達に用があってここにきたんだが、あんたらがここで何やら見張っている様子だったから、こ、声を掛けたんだ」
確かに何の事情も知らなければ、誰であってもこんな恐ろしい妖狐が二体も見張るようにして立っている場所を素通りして中へ入ろうとは思わないだろう。
ようやく自分達に何かをしようとして近づいてきたのではないと理解した王琳は、戦闘態勢となる『二色の併用』を解いて小さく溜息を吐くのだった。
「別に俺達は見張っているつもりはなかった。集落の中へ入りたいというのであれば勝手に入るがいい。あそこでこちらを警戒して見張っている鬼人族の連中が通せばの話だがな」
その言葉にほっと胸を撫で下ろすウガマ達だった。
「そ、それじゃ、前を通させてもらうぞ」
通っていいと言われたウガマ達だが、この妖狐の気が変わればいつでも自分達を殺す事が可能なのだと理解しているウガマ達は、戦々恐々としながらそう口にするのだった。
「おい、少し待て」
おっかなびっくりと前を通り過ぎようとしたウガマ達に、再び王琳から声が掛かる。
「な、何だ!?」
王琳の突然の呼び止める声に、慌てた様子でウガマ達は立ち止まって振り返る。
見ていて面白い程に同じ動作を取る連中に苦笑いを浮かべた王琳だが、やはり納得が出来ない事を直接ウガマ達に尋ねる事にしたようだった。
「お前らが今も当たり前のように張っているその『結界』は、誰が用いたモノなのだ?」
……
……
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