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妖魔山編
1820.妖魔召士シギンの本気の一撃
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煌阿がシギンの間合いへと飛び込むと同時、一番シギンの元から遠くに設置されていた『スタック』に発動羅列が浮かぶと同時に展開される。
しかし『スタック』ポイントに光が灯ったからといって、その場で煌阿の動きを止めるような効力が発揮されることもなく、そのまま強引に押し切ってくる煌阿の頭上に光が降り注ぐだけであった。
そしてそれは煌阿に対して一度放たれた事のある『魔』の技法で全体的な能力の弱体化の効力がある『蒙』であった。
賢者と呼ばれる者以上の魔法使いや魔導使いであれば、戦闘を有利に持っていく為に誰もが考える行動の一つではあるが、先程の時はこの『蒙』を利用されて『結界』を上手く抜け出されたが故に、他にも多くの手立てがあるシギンが再びこの『蒙』を選択しないだろうと普通は考えるのだろうが、あえてそれを使用する事を良しとしたシギンは、やはり冷静さを少し欠いているのではないかと普通なら思うところだろう。
だが、他でもない直接対峙する相手である煌阿は、その判断こそが『卜部』の血筋を相手にする上で危険な事だと理解していたようで、この『蒙』を使われた事に対しては何も驚く事はなかった。
そしてそのまま次の『スタック』されているポイントに差し掛かった煌阿だが、ここでようやく迫りくる煌阿の速度が目に見えて遅くなった。
二つ目の『スタック』されていた『魔力』から発動されたのは『蒙』のような『理』のある『魔法』ではなく、妖魔召士が使う捉術であり、これもまた相手の行動を妨げる効力のある『魔』の技法の『魔重転換』と呼ばれる行動阻害の捉術であった。
これは相手の身体に負荷をかける事を目的とされたものであり、その効力通りに今の煌阿はランクが『8』から『9』程の妖魔程度にまでその速度を下げられているようだった。
――しかし全体的な能力の低下に加えて、移動速度までもを下げられた煌阿だが、驚くような事は何もないとばかりに笑みさえ浮かべながら、そのままシギンの間合いにまで遂に到達する。
そして三つ目の『スタック』ポイントと、同時に四つ目の『スタック』ポイントも光を放ち効力が発動される。
三つ目の『スタック』させたポイントでシギンの周囲に多くの『輝鏡』が展開されると、同時にシギンから少し離れた場所にあった四つ目の『スタック』で『理』の意味がある発動羅列が刻まれたシギンの『空間魔法』が展開されるのだった。
煌阿の拳が先にシギンに触れたと思われたが、結局はその三つ目の『スタック』に用意された『輝鏡』がシギンを守る要となった。
そのシギンの発動させた『輝鏡』が、煌阿の恐ろしい拳からシギンを防ぎきったというわけではない。
単にその『輝鏡』の出現によって、致命傷となる程の一撃であった煌阿の拳が僅かに逸れて、シギンの額を浅く切る程度に留められたのである。
当然にもその『輝鏡』は、煌阿の一撃に耐えきれる筈もなく、そのままあっさりと割れてしまったが、同時に『輝鏡』の効力によってシギンに拳が届く前に煌阿は、殴った時に伴った『魔力』そのものを『輝鏡』に封じ込められてそのまま空間から煌阿の『魔力』ごと消失してしまった。
更にそのままシギンが用意した四つ目の『スタック』ポイントで用いた『空間魔法』によって、目の前の空間に亀裂が入ったかと思うと、再び煌阿はその亀裂の入った先にある『次元の狭間』へと強制的に誘われてしまうのだった。
あの赤い真四角の『結界』とは違い、この『次元の狭間』に放り込まれた煌阿は、直ぐに解除を行う事が出来ない様子であり、また自身の身体が鈍くなっている事を瞬時に悟る。
そしてそんな『次元の狭間』の中に詠唱者であるシギンも入ってくると、全てが狙い通りにいったとばかりに、今度こそ彼は悠々と手印を結びながら、その煌阿の命を奪う本命となる『捉術』を発動させようとし始める。
すでにシギンは今の結んでいる手印の先にある、とっておきの『捉術』の一撃が入る事を疑ってはいない。
煌阿が『次元の狭間』の内側であっても、しっかりと意識を保っていられる事や、この空間の中から抜け出す手段がある事も理解はしている。
それこそが先程の解除に用いていた真鵺の『呪い』であったり、この空間内で発動させる『時空干渉』の領域に達する『透過』である。
――だが、そのどちらも今のままでは、確実に使用する事が出来ない事をシギンは理解している。
この状況を作り出す為に、その為だけに一つ目の『スタック』ポイントで彼は、一度は利用された『蒙』を再び選んだのであった。
今度は煌阿の『魔力値』の誤魔化しは通用しない――。
すでにシギンは煌阿の『魔力』の最大値を把握済みであり、この空間を抜け出す為には、まずは『蒙』による弱体化の解除を行わなくては『時空干渉』の領域にある『透過』を使う魔力が足りないと分かっていた。
そして同時に『呪い』の方も膨大な魔力を消費しなくてはならない事も理解している――。
『蒙』を解除するだけなら問題はないが、その先の『時空干渉』領域に至る『透過』や、真鵺と同じ『呪い』を行う為には、更なる時間を必要とする。
――当然にそんな時間を与える程に、今の妖魔召士シギンは甘くはない。
それどころか一段階目となる『蒙』の解除の工程となる『魔力干渉』の領域の『透過』さえ、今のシギンの用意している『捉術』と同時となるほどの恐ろしい速度である。
シギンの『蒙』を先に解除される可能性はあるが、間違いなくこの空間を抜け出す猶予は残されてはいないだろう。
そして『蒙』の解除が先に行われたとて、煌阿の本来の耐魔力が戻る事にはなるだろうが、シギンの用意しているその『捉術』の殺傷能力であれば、即死は免れても致命傷は避けられないとすでに彼は理解している。
その為に戦いながらこれまで煌阿の観察を行い続けていたのである。
妖魔召士シギンが相当な『魔』の理解者である以上は、そこに手違いを生じさせる可能性は有り得ない。
――これまでの煌阿が相手であれば、もはや妖魔召士シギンに敗北はないと断言が出来る。
恐ろしい速度で結ばれていたシギンの手印だが、遂に最後の日輪印の形を結び終える。
そのまま準備と周到さを兼ね揃えた渾身の一撃が、シギンの両手から放たれる瞬間であった――。
……
……
……
しかし『スタック』ポイントに光が灯ったからといって、その場で煌阿の動きを止めるような効力が発揮されることもなく、そのまま強引に押し切ってくる煌阿の頭上に光が降り注ぐだけであった。
そしてそれは煌阿に対して一度放たれた事のある『魔』の技法で全体的な能力の弱体化の効力がある『蒙』であった。
賢者と呼ばれる者以上の魔法使いや魔導使いであれば、戦闘を有利に持っていく為に誰もが考える行動の一つではあるが、先程の時はこの『蒙』を利用されて『結界』を上手く抜け出されたが故に、他にも多くの手立てがあるシギンが再びこの『蒙』を選択しないだろうと普通は考えるのだろうが、あえてそれを使用する事を良しとしたシギンは、やはり冷静さを少し欠いているのではないかと普通なら思うところだろう。
だが、他でもない直接対峙する相手である煌阿は、その判断こそが『卜部』の血筋を相手にする上で危険な事だと理解していたようで、この『蒙』を使われた事に対しては何も驚く事はなかった。
そしてそのまま次の『スタック』されているポイントに差し掛かった煌阿だが、ここでようやく迫りくる煌阿の速度が目に見えて遅くなった。
二つ目の『スタック』されていた『魔力』から発動されたのは『蒙』のような『理』のある『魔法』ではなく、妖魔召士が使う捉術であり、これもまた相手の行動を妨げる効力のある『魔』の技法の『魔重転換』と呼ばれる行動阻害の捉術であった。
これは相手の身体に負荷をかける事を目的とされたものであり、その効力通りに今の煌阿はランクが『8』から『9』程の妖魔程度にまでその速度を下げられているようだった。
――しかし全体的な能力の低下に加えて、移動速度までもを下げられた煌阿だが、驚くような事は何もないとばかりに笑みさえ浮かべながら、そのままシギンの間合いにまで遂に到達する。
そして三つ目の『スタック』ポイントと、同時に四つ目の『スタック』ポイントも光を放ち効力が発動される。
三つ目の『スタック』させたポイントでシギンの周囲に多くの『輝鏡』が展開されると、同時にシギンから少し離れた場所にあった四つ目の『スタック』で『理』の意味がある発動羅列が刻まれたシギンの『空間魔法』が展開されるのだった。
煌阿の拳が先にシギンに触れたと思われたが、結局はその三つ目の『スタック』に用意された『輝鏡』がシギンを守る要となった。
そのシギンの発動させた『輝鏡』が、煌阿の恐ろしい拳からシギンを防ぎきったというわけではない。
単にその『輝鏡』の出現によって、致命傷となる程の一撃であった煌阿の拳が僅かに逸れて、シギンの額を浅く切る程度に留められたのである。
当然にもその『輝鏡』は、煌阿の一撃に耐えきれる筈もなく、そのままあっさりと割れてしまったが、同時に『輝鏡』の効力によってシギンに拳が届く前に煌阿は、殴った時に伴った『魔力』そのものを『輝鏡』に封じ込められてそのまま空間から煌阿の『魔力』ごと消失してしまった。
更にそのままシギンが用意した四つ目の『スタック』ポイントで用いた『空間魔法』によって、目の前の空間に亀裂が入ったかと思うと、再び煌阿はその亀裂の入った先にある『次元の狭間』へと強制的に誘われてしまうのだった。
あの赤い真四角の『結界』とは違い、この『次元の狭間』に放り込まれた煌阿は、直ぐに解除を行う事が出来ない様子であり、また自身の身体が鈍くなっている事を瞬時に悟る。
そしてそんな『次元の狭間』の中に詠唱者であるシギンも入ってくると、全てが狙い通りにいったとばかりに、今度こそ彼は悠々と手印を結びながら、その煌阿の命を奪う本命となる『捉術』を発動させようとし始める。
すでにシギンは今の結んでいる手印の先にある、とっておきの『捉術』の一撃が入る事を疑ってはいない。
煌阿が『次元の狭間』の内側であっても、しっかりと意識を保っていられる事や、この空間の中から抜け出す手段がある事も理解はしている。
それこそが先程の解除に用いていた真鵺の『呪い』であったり、この空間内で発動させる『時空干渉』の領域に達する『透過』である。
――だが、そのどちらも今のままでは、確実に使用する事が出来ない事をシギンは理解している。
この状況を作り出す為に、その為だけに一つ目の『スタック』ポイントで彼は、一度は利用された『蒙』を再び選んだのであった。
今度は煌阿の『魔力値』の誤魔化しは通用しない――。
すでにシギンは煌阿の『魔力』の最大値を把握済みであり、この空間を抜け出す為には、まずは『蒙』による弱体化の解除を行わなくては『時空干渉』の領域にある『透過』を使う魔力が足りないと分かっていた。
そして同時に『呪い』の方も膨大な魔力を消費しなくてはならない事も理解している――。
『蒙』を解除するだけなら問題はないが、その先の『時空干渉』領域に至る『透過』や、真鵺と同じ『呪い』を行う為には、更なる時間を必要とする。
――当然にそんな時間を与える程に、今の妖魔召士シギンは甘くはない。
それどころか一段階目となる『蒙』の解除の工程となる『魔力干渉』の領域の『透過』さえ、今のシギンの用意している『捉術』と同時となるほどの恐ろしい速度である。
シギンの『蒙』を先に解除される可能性はあるが、間違いなくこの空間を抜け出す猶予は残されてはいないだろう。
そして『蒙』の解除が先に行われたとて、煌阿の本来の耐魔力が戻る事にはなるだろうが、シギンの用意しているその『捉術』の殺傷能力であれば、即死は免れても致命傷は避けられないとすでに彼は理解している。
その為に戦いながらこれまで煌阿の観察を行い続けていたのである。
妖魔召士シギンが相当な『魔』の理解者である以上は、そこに手違いを生じさせる可能性は有り得ない。
――これまでの煌阿が相手であれば、もはや妖魔召士シギンに敗北はないと断言が出来る。
恐ろしい速度で結ばれていたシギンの手印だが、遂に最後の日輪印の形を結び終える。
そのまま準備と周到さを兼ね揃えた渾身の一撃が、シギンの両手から放たれる瞬間であった――。
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