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妖魔山編
1812.神斗から見たワンランク上の魔の理解者同士の戦闘
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そして悔しそうにシギン達を見つめていた神斗だが、その視線の先に居る『シギン』の唐突な魔力の高まりに更に愕然とせざるを得なくなった。
今のシギンの『戦力値』と『魔力値』は悟獄丸を葬った時と同一のものとなっているが、神斗にしてみればあの『七耶咫』に精神を残留させている状態のシギンの『戦力値』と『魔力値』のイメージが強く、実際にその『七耶咫』から本来の姿となったシギンとは、あくまで『透過』のやり取りとその延長線上であった為に直接戦ったとはいえない。
だからこそ神斗は、愕然としながらも何処か納得するような気持ちを持ち始めたのだった。
(ああ、確かにこれ程までに私と差があったのであれば、それは確かに余裕を持って相対する事が出来たわけだね。これは『魔』の理解度が私より高いという話の前に、そもそもが私より『戦力値』と『魔力値』が比べ物にならない程に上だったわけだ。まさか寿命の短い人間がこんな馬鹿げた強さをしているなんて、一体誰が信じようか……?)
――神斗が思考の最中に出した寿命の短い人間の強さという言葉だが、それはそのままの意味で言っているのではない。
『魔』の概念とは、如何なる『魔』の適正に優れている者であっても、その膨大な知識量を自分のものにするまでには相当の年月を費やす事になる。
最早、種族間の少しばかりの寿命差など気にすらならない程に、この概念は極めるまでに時間が掛かるものなのだが、それを寿命が僅か百にも満たぬ種族である筈の人間が、数千年と生きている『神斗』という妖魔神を遥かに凌駕する領域にまで『魔』の概念の研究を進み終えていたのである。
もちろん、これは神斗に『魔』の適正がなかったというわけではない。
否、むしろ神斗もまた適正が他の者よりあった程であるが、そんな神斗の適正など今のシギンの居る『魔』の概念領域から比べれば、何も適正がないものと変わらない程であった。
つまり神斗はシギンという寿命の短い筈の『人間』が、その限られた寿命の中でもこれだけの概念領域に辿り着く事を証明してみせたのだという真実に『馬鹿げている強さ』だと、思考の最中に言葉で表したのだった。
もう神斗でさえも疑いようがなく、妖魔召士シギンという人間は『魔』の適正がある天才である。
そしてそんな天才の『魔力値』の変化がようやく止まり、彼の周囲を覆う二色の『オーラ』が光り輝くのを神斗が見ていると、ふいにそのシギンの身体がぼやけていった。
――「『散、空動狭閑』」。
シギンが静かにそう呟くと同時、何と神斗の視線の先に居たシギンが忽然と姿を消した。
「!?」
シギンが居た空間からシギンだけが、最初からその場に居なかったかのように、本当に音もなく消え失せたのであった。
(ど、何処へ行った!?)
数千年間という長い年月に渡り、神斗もまた『魔』に傾倒し続けてきた者としての卓越した『感知』能力を持ってはいる筈だったが、そんな神斗でさえもシギンがその視界から消え去った後は、魔力を感知出来ずに何処へ行ったのか把握出来なかった。
しかしその消えた筈のシギンの在りかは、煌阿が振り下ろした拳の先から聞こえてきた、一際大きな戦闘音で判明するのだった。
何とあの距離を一瞬で移動し終えた事にも驚いた神斗だが、それよりもそんなシギンの移動にいち早く気づいて、直ぐに対応に成功した煌阿に対する驚きの方が更に大きかった。
そしてそれからの互いの攻防は、驚愕の色を表情に浮かべていた神斗を更に戸惑わせる――。
拳を止められたシギンだが、彼自身がその右拳を止められたと認識する前にはもう、左足に『青』を纏いながら煌阿の右足のふくらはぎ付近を目掛けて蹴りを繰り出す。
一見、単なる外傷を目的とした蹴りだが、それを仕掛けたのは『妖魔召士』のシギンである。
その蹴りにどんな『魔』の技法が内包されているか分からない為、当然に受ける事を拒否するように、煌阿はシギンの拳を払うと同時、後ろへと距離を取る為に回避行動を取った。
回避に成功したと判断した煌阿は、今度は俺の番だとばかりに両手に『魔力』を込めようとしたが、その『魔力』を纏う前に、煌阿の顎が跳ね上げられた後、遅れて痛みが襲ってくるのだった。
(な、何……!?)
何が起きたのか分からず、顎の痛みを無視するように顔を下に向けるが、そこには右拳を天に突き上げるような姿勢のシギンの姿を視界に捉えるのだった。
「ぐっ……!!」
そしてこのままではまずいと本能で考えた煌阿が、慌ててその場から離れようとしたのだが、今度は足に異変を感じたかと思えば、想像を絶するような痛みが煌阿を襲う。
何と先程に回避した時と同様に、シギンは再び煌阿の右足のふくらはぎを『青』で強化された足で思いきり蹴り飛ばしたようである。
シギンの蹴りは『青』のオーラで強化されており、たった一発の蹴りで煌阿の足は内出血を引き起こして、そのままバランスを崩して倒れそうになる。
そして煌阿が乗っ取った『殿鬼』の身体がシギンの目線より下になったと同時に、シギンはその煌阿の顔を掴むと続けて『捉術』を繰り出した。
――捉術、『移止境界』。
次の瞬間、床にそのまま倒れ込みそうになった煌阿の身体が、先程のシギンのように忽然とその場から消えるのだった。
――「『散、空動狭閑』」。
そしてその呟きと共に再び、シギンの姿も消えさってしまう。
「ど、何処へ行ったんだ!?」
慌てて神斗は消えた両者の居場所を探ろうと『魔力感知』を行うが、どうやらシギンが『阻害』を目的とした『結界』を自分と煌阿に対しても展開しているようで、神斗は両者の『魔力』を追えなくなり、そして視界からも完全に消え去った為に、居場所を完全に見失うのだった。
「こ、これが、あれほどの『魔』領域に到達している者が行う戦闘という事なのか……!」
誰も居なくなった妖魔山の片隅で、静かにそう独り言ちる妖魔神の神斗だった。
今のシギンの『戦力値』と『魔力値』は悟獄丸を葬った時と同一のものとなっているが、神斗にしてみればあの『七耶咫』に精神を残留させている状態のシギンの『戦力値』と『魔力値』のイメージが強く、実際にその『七耶咫』から本来の姿となったシギンとは、あくまで『透過』のやり取りとその延長線上であった為に直接戦ったとはいえない。
だからこそ神斗は、愕然としながらも何処か納得するような気持ちを持ち始めたのだった。
(ああ、確かにこれ程までに私と差があったのであれば、それは確かに余裕を持って相対する事が出来たわけだね。これは『魔』の理解度が私より高いという話の前に、そもそもが私より『戦力値』と『魔力値』が比べ物にならない程に上だったわけだ。まさか寿命の短い人間がこんな馬鹿げた強さをしているなんて、一体誰が信じようか……?)
――神斗が思考の最中に出した寿命の短い人間の強さという言葉だが、それはそのままの意味で言っているのではない。
『魔』の概念とは、如何なる『魔』の適正に優れている者であっても、その膨大な知識量を自分のものにするまでには相当の年月を費やす事になる。
最早、種族間の少しばかりの寿命差など気にすらならない程に、この概念は極めるまでに時間が掛かるものなのだが、それを寿命が僅か百にも満たぬ種族である筈の人間が、数千年と生きている『神斗』という妖魔神を遥かに凌駕する領域にまで『魔』の概念の研究を進み終えていたのである。
もちろん、これは神斗に『魔』の適正がなかったというわけではない。
否、むしろ神斗もまた適正が他の者よりあった程であるが、そんな神斗の適正など今のシギンの居る『魔』の概念領域から比べれば、何も適正がないものと変わらない程であった。
つまり神斗はシギンという寿命の短い筈の『人間』が、その限られた寿命の中でもこれだけの概念領域に辿り着く事を証明してみせたのだという真実に『馬鹿げている強さ』だと、思考の最中に言葉で表したのだった。
もう神斗でさえも疑いようがなく、妖魔召士シギンという人間は『魔』の適正がある天才である。
そしてそんな天才の『魔力値』の変化がようやく止まり、彼の周囲を覆う二色の『オーラ』が光り輝くのを神斗が見ていると、ふいにそのシギンの身体がぼやけていった。
――「『散、空動狭閑』」。
シギンが静かにそう呟くと同時、何と神斗の視線の先に居たシギンが忽然と姿を消した。
「!?」
シギンが居た空間からシギンだけが、最初からその場に居なかったかのように、本当に音もなく消え失せたのであった。
(ど、何処へ行った!?)
数千年間という長い年月に渡り、神斗もまた『魔』に傾倒し続けてきた者としての卓越した『感知』能力を持ってはいる筈だったが、そんな神斗でさえもシギンがその視界から消え去った後は、魔力を感知出来ずに何処へ行ったのか把握出来なかった。
しかしその消えた筈のシギンの在りかは、煌阿が振り下ろした拳の先から聞こえてきた、一際大きな戦闘音で判明するのだった。
何とあの距離を一瞬で移動し終えた事にも驚いた神斗だが、それよりもそんなシギンの移動にいち早く気づいて、直ぐに対応に成功した煌阿に対する驚きの方が更に大きかった。
そしてそれからの互いの攻防は、驚愕の色を表情に浮かべていた神斗を更に戸惑わせる――。
拳を止められたシギンだが、彼自身がその右拳を止められたと認識する前にはもう、左足に『青』を纏いながら煌阿の右足のふくらはぎ付近を目掛けて蹴りを繰り出す。
一見、単なる外傷を目的とした蹴りだが、それを仕掛けたのは『妖魔召士』のシギンである。
その蹴りにどんな『魔』の技法が内包されているか分からない為、当然に受ける事を拒否するように、煌阿はシギンの拳を払うと同時、後ろへと距離を取る為に回避行動を取った。
回避に成功したと判断した煌阿は、今度は俺の番だとばかりに両手に『魔力』を込めようとしたが、その『魔力』を纏う前に、煌阿の顎が跳ね上げられた後、遅れて痛みが襲ってくるのだった。
(な、何……!?)
何が起きたのか分からず、顎の痛みを無視するように顔を下に向けるが、そこには右拳を天に突き上げるような姿勢のシギンの姿を視界に捉えるのだった。
「ぐっ……!!」
そしてこのままではまずいと本能で考えた煌阿が、慌ててその場から離れようとしたのだが、今度は足に異変を感じたかと思えば、想像を絶するような痛みが煌阿を襲う。
何と先程に回避した時と同様に、シギンは再び煌阿の右足のふくらはぎを『青』で強化された足で思いきり蹴り飛ばしたようである。
シギンの蹴りは『青』のオーラで強化されており、たった一発の蹴りで煌阿の足は内出血を引き起こして、そのままバランスを崩して倒れそうになる。
そして煌阿が乗っ取った『殿鬼』の身体がシギンの目線より下になったと同時に、シギンはその煌阿の顔を掴むと続けて『捉術』を繰り出した。
――捉術、『移止境界』。
次の瞬間、床にそのまま倒れ込みそうになった煌阿の身体が、先程のシギンのように忽然とその場から消えるのだった。
――「『散、空動狭閑』」。
そしてその呟きと共に再び、シギンの姿も消えさってしまう。
「ど、何処へ行ったんだ!?」
慌てて神斗は消えた両者の居場所を探ろうと『魔力感知』を行うが、どうやらシギンが『阻害』を目的とした『結界』を自分と煌阿に対しても展開しているようで、神斗は両者の『魔力』を追えなくなり、そして視界からも完全に消え去った為に、居場所を完全に見失うのだった。
「こ、これが、あれほどの『魔』領域に到達している者が行う戦闘という事なのか……!」
誰も居なくなった妖魔山の片隅で、静かにそう独り言ちる妖魔神の神斗だった。
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