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妖魔山編
1786.入り乱れる戦闘の行方
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突然にシギンの『空間魔法』によって洞穴の中から外へと連れ出される事となった『神斗』は、驚きながらも先の戦闘で一度シギンの扱う『透過』技法を見ていた為に、何とかその『魔』の範疇によって空間を移動させられたのだと察する事が出来たが、それでもこうして自分が認識出来ていない事をあっさりとやられたことに納得は出来ていなかった。
(どうやらこの人間の呟きの意味を考えると、洞穴から俺達の移動を行ったのはこの妖魔召士のようだが、その移動の際に『煌阿』が何かを行って無理やりに道筋を変えてしまい、それで目的の場所ではなくこの場所に辿り着いたっていう事か。どちらにせよこの人間も『煌阿』の奴も『魔』の概念の到達度は今の俺より上ってのは間違いないみたいだね。まさか寿命の短い人間だけではなく、あの洞穴に閉じ込められていたって言ってた『煌阿』よりも劣っているなんて、認めたくないけど……)
これでも神斗は煌阿が封印されてから数えても、決して少なくはない年月を『魔』の研鑽に費やし続けてきた。それはもちろん『透過』技法に念頭においた研鑽ではあるが、それでも『透過』が『魔』の技法の中心だと彼は考えていて、この『透過』技法さえ学んでいれば、他の技法にも応用がきく筈だと考えていた為に、それらの年月を掛けて誰よりも『魔』の理解者になっていると自負していた為に、あっさりと自分よりも先に到達した寿命の短い筈の人間と、この数百年は何もせずにいたことで停滞していた筈の『煌阿』が、自分の出来ない事をやってのけた事で、自分は一体どれだけセンスがないのだろうかと、情けなさと溢れ出る悔しい思いを抱えたのであった。
「成程。お前はどうやら卜部本人ではないようだが、お前の家系に卜部の血が流れているのだな? そう考えればお前が奴の『魔力』と似ている事や、今のような任意に場所を移動できる術が使えるのにも合点がいく」
どうやら煌阿はシギンの『魔力』と扱った『空間魔法』が、彼の知る人間と瓜二つだった事から、勝手に系譜や出自などの決めつけを行って勝手に納得を果たしたようであった。
しかしシギンは正解を示すでもなく、かといって否定を行うわけでもなく、無言で『煌阿』の本当の力量を図ろうと考え始めるのだった。
それはつまり、彼が使っていた『空間魔法』に対して、圧倒的な優位性が見込めなくなったからに他ならない。
何かあれば『空間魔法』を頼りにその場を離れたり、相手の元へ一瞬に近づこうと考えていたが、このように同じ『空間』に移動する行為に干渉される可能性がある以上は、ある程度相手の力量を理解していなければ、その優位性に頼って安易に使用すること事こそが何よりも危険だと認識を改めた為であった。
(神斗はコイツの事を『煌阿』と呼んでいたか? どうやらこの『煌阿』とかいう奴は神斗とは見知った間柄のようだが、先程のやり取りを見るに仲間というわけでもないようだ。むしろ神斗を殺そうと手を出していたところをみるに仲違いをしているのは間違いないだろう。ではこのまま傍観しておけば、再び奴は神斗に手を出そうとするだろうし、神斗の奴もあっさりとやられる程に弱いわけではないだろうから抵抗するだろう。俺はそれを利用して『煌阿』とかいう奴がどれほどのモノなのかを観察を行えばよい)
妖魔召士シギンはこの妖魔山や世界の為に、この『煌阿』という世界の脅威となるであろう『妖魔』を討伐しようと本気で乗り出すのであった。
――しかしこの後、そのシギンの考えをあっさりと覆す言葉が煌阿から放たれるのだった。
「今となっては翼族も神斗も気に入らぬが、何よりあれだけの期間あんな洞穴に縛りつけた『卜部』と、その『卜部』の血を引き継ぐ者だけは途絶えさせねばならぬ。二度と同じ過ちを繰り返させるわけにはいかぬからな。ひとまずお前を優先的に殺してやろう」
そう言うと殿鬼の身体を乗っ取った『煌阿』は、その鬼人の身体で『二色の併用』を行い始めると同時、可視化が出来る程の凄まじい『魔力』を纏わせ始めるのだった。
(どうやらこの人間の呟きの意味を考えると、洞穴から俺達の移動を行ったのはこの妖魔召士のようだが、その移動の際に『煌阿』が何かを行って無理やりに道筋を変えてしまい、それで目的の場所ではなくこの場所に辿り着いたっていう事か。どちらにせよこの人間も『煌阿』の奴も『魔』の概念の到達度は今の俺より上ってのは間違いないみたいだね。まさか寿命の短い人間だけではなく、あの洞穴に閉じ込められていたって言ってた『煌阿』よりも劣っているなんて、認めたくないけど……)
これでも神斗は煌阿が封印されてから数えても、決して少なくはない年月を『魔』の研鑽に費やし続けてきた。それはもちろん『透過』技法に念頭においた研鑽ではあるが、それでも『透過』が『魔』の技法の中心だと彼は考えていて、この『透過』技法さえ学んでいれば、他の技法にも応用がきく筈だと考えていた為に、それらの年月を掛けて誰よりも『魔』の理解者になっていると自負していた為に、あっさりと自分よりも先に到達した寿命の短い筈の人間と、この数百年は何もせずにいたことで停滞していた筈の『煌阿』が、自分の出来ない事をやってのけた事で、自分は一体どれだけセンスがないのだろうかと、情けなさと溢れ出る悔しい思いを抱えたのであった。
「成程。お前はどうやら卜部本人ではないようだが、お前の家系に卜部の血が流れているのだな? そう考えればお前が奴の『魔力』と似ている事や、今のような任意に場所を移動できる術が使えるのにも合点がいく」
どうやら煌阿はシギンの『魔力』と扱った『空間魔法』が、彼の知る人間と瓜二つだった事から、勝手に系譜や出自などの決めつけを行って勝手に納得を果たしたようであった。
しかしシギンは正解を示すでもなく、かといって否定を行うわけでもなく、無言で『煌阿』の本当の力量を図ろうと考え始めるのだった。
それはつまり、彼が使っていた『空間魔法』に対して、圧倒的な優位性が見込めなくなったからに他ならない。
何かあれば『空間魔法』を頼りにその場を離れたり、相手の元へ一瞬に近づこうと考えていたが、このように同じ『空間』に移動する行為に干渉される可能性がある以上は、ある程度相手の力量を理解していなければ、その優位性に頼って安易に使用すること事こそが何よりも危険だと認識を改めた為であった。
(神斗はコイツの事を『煌阿』と呼んでいたか? どうやらこの『煌阿』とかいう奴は神斗とは見知った間柄のようだが、先程のやり取りを見るに仲間というわけでもないようだ。むしろ神斗を殺そうと手を出していたところをみるに仲違いをしているのは間違いないだろう。ではこのまま傍観しておけば、再び奴は神斗に手を出そうとするだろうし、神斗の奴もあっさりとやられる程に弱いわけではないだろうから抵抗するだろう。俺はそれを利用して『煌阿』とかいう奴がどれほどのモノなのかを観察を行えばよい)
妖魔召士シギンはこの妖魔山や世界の為に、この『煌阿』という世界の脅威となるであろう『妖魔』を討伐しようと本気で乗り出すのであった。
――しかしこの後、そのシギンの考えをあっさりと覆す言葉が煌阿から放たれるのだった。
「今となっては翼族も神斗も気に入らぬが、何よりあれだけの期間あんな洞穴に縛りつけた『卜部』と、その『卜部』の血を引き継ぐ者だけは途絶えさせねばならぬ。二度と同じ過ちを繰り返させるわけにはいかぬからな。ひとまずお前を優先的に殺してやろう」
そう言うと殿鬼の身体を乗っ取った『煌阿』は、その鬼人の身体で『二色の併用』を行い始めると同時、可視化が出来る程の凄まじい『魔力』を纏わせ始めるのだった。
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